見出し画像

銭湯日記⑩ 路地裏に広がるマジック空間 〜昭和浴場〜

会社帰りに普段使わない丸ノ内線に乗る。ものの数分で着いた東高円寺駅は、すぐ隣には蚕糸の森公園があり、新宿から近いことも含め豊かな住環境が広がったエリアである。
丸ノ内線が開業する前は、青梅街道の上を都電杉並線が走っており、この辺りには蚕糸試験所前という電停があったらしいが、そんな面影は駅前の小さな商店街に少し見られるほどになっている。

そんな青梅街道を少し東方面、新宿方面に戻ると、北に伸びる細い暗渠道がある。これも宅地からされる前は田畑を潤す農業用水だったのだろう。
そんな道を進んでいくと、窮屈そうに一際大きな破風屋根の建物が見えてくる。これが昭和浴場である。

母屋は立派な破風屋根であるが、手前側のロビー部分は後年の増築のようである。電飾看板の下には、BEAMSとコラボした暖簾がスタイリッシュさを与える。

背後に回ると、太い円柱型の煙突が見えてくる。側面には、「マジック温泉」の文字。厳密には温泉ではなく銭湯であるが、マジックは本当に披露されるようである。

この銭湯「昭和浴場」の店主は、マジシャンのタジマジック氏。たまにマジックを披露する営業日もあるらしい。残念なことに私は氏の幻術を見る光栄に浴していないが、それら奇術以外にも魅力的な点が多い銭湯である。

金属札式の下駄箱に靴を入れロビーへ。ロビーの壁面には、タジマジック氏の写真や記事などが貼られ、テレビとソファが置かれた休憩スペースでは常連さんが思い思いの時間を過ごしている。
フロントで料金を払うと、帰り際にも使える30円割引券と次回サウナ無料券を貰えた。その上、月曜日はサービスデーらしく、景品プレゼントの柿の種までもらえる始末。サウナも「日本一安い」(掲示ポスター記載)と謳われる+100円という安価ぶり。奇術レベルのサービス精神には驚かされるばかりである。

脱衣所は、見事な折り上げ格天井。格子部分がピンク色に塗られているので、他の銭湯に比べて非常に派手である。男女湯仕切り壁側に沿って、縦型ロッカーがあるのは会社帰りの身分には助かる。
他の銭湯と比べても比較的広めな浴室は、天井が白と青に塗り分けられ他の銭湯とは少し違う趣。カランの鏡がハート型で可愛らしい。カラン、シャワーのお湯もかなり熱めである。洗面器はケロリン風だが、ケロロ軍曹が描かれた広告仕様である。
奥の壁は、タイル張りの富士山が男女湯にまたがる。夕焼けなのか、空が黄色いのが印象的。男女湯仕切り壁にも、川と山を描いたタイル絵になっているが、そんな川にダムが描かれているのが、妙にリアリズムが効いていて面白い。
浴槽は、右から座風呂(少し熱め)、寝風呂(標準)、バイブラ(少しぬるめ)、左手前に電気(ぬるめ)、天然水の水風呂となっている。ご丁寧に浴槽ごとに温度が異なるが、標準でもかなり熱く、少しぬるめでも他の銭湯の標準よりも熱く感じるレベルなので、注意が必要。

左手前には、4人定員のサウナがある。コンパクトサイズなためか、90度弱の温度計に対してかなり熱さを感じた。

帰り際には、先程の30円割引券を使って、フルーツ牛乳を買う。サウナ効果もあってか、月曜夜にも関わらず、それなりの人出で賑わう。リピートしたくなるサービス内容も功を奏した、素敵な銭湯であった。

帰り道は、少し北側を流れる桃園川の暗渠に沿って中野駅方面へと抜ける。この神田川の支流である桃園川の暗渠沿には、荻窪から中野にかけて何件かの銭湯が散見される。銭湯と暗渠の関連性を考えながら、暗渠散歩をするのも楽しい。

①昭和浴場・中野区中央・2020.7 訪問
②左:男湯、右:女湯
③妻入り
④円柱型煙突
⑤フロント型
⑥金属札型
⑦カラン22・シャワー22
⑧バイブラ、ジェットバス、電気風呂、サウナ、水風呂

それでは、良き湯時間-yujikan-を。

この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?