見出し画像

【#1-6.a】 脂肪をエネルギーにってどういうこと?ケトン体ダイエットって?

脂肪を燃やしてエネルギーにってどういうことやねん!
ということで、この章では脂肪、脂質について説明していこうと思います。タンパク質、脂質、炭水化物の三大栄養素の一つです。これら三つのバランス (PFCバランス; Protein, Fat, Carboと言います。) が大切なのはお分かりかと思います。

メタボリックシンドローム(Metabolic Syndrome)、通称メタボは今や有名な生活習慣病の一つですよね。食べ過ぎ飲み過ぎによって、肥満症やそれに伴う病気を併発したり、贅沢な病気とも言えるかもしれません。特に脂質を溜め込みすぎることが原因と言われています。

ここでは、そもそも脂肪って何?ってところから丁寧に解説して、痩せるための戦略やエネルギーにして痩せるってどういうことなのかを一緒に考えながら進めていきたいと思います。

ではいきますよ!


1. 脂肪、脂質、油。。。

脂肪っていろんな言い方ありますよね。脂質とか脂、油、、、
言い方として実は厳密な定義はなくて、慣例みたいなのに従うことが多いんです。例えば、「身体の…」とくれば大体「脂肪」ですよね。

でも代謝を語るときには「脂質代謝」っていう方が一般的です。

2. 脂肪の役割って?

脂肪は1gあたり9kcalのエネルギーを持っています。これは三大栄養素の中でも最も高いカロリーです (Fig.1)。つまりエネルギーを溜めやすい。そう、脂肪はエネルギーの貯蔵に利用されます。

逆にこれを踏まえて、脂質を減らすことで効率よくダイエットすることも可能です(ローファットダイエット:おにぎりとか蕎麦とかOK、揚げ物、油を控えるダイエット)。
個人的には、日本人はお米大好き文化の方が多い印象ですので、低糖質ダイエットより、ローファットダイエットの方が向いてる人が多いんじゃないかなと思います。(個人的見解)

Fig.1 三大栄養素

3. 脂肪の種類

脂肪にはお腹周りの脂肪である中性脂肪(トリアシルグリセロールと言います)や細胞の膜を構成するリン脂質(グリセロリン脂質やスフィンゴリン脂質)がありますが、ここではより日常に近いものを、ということで中性脂肪について解説していきます。


4. 中性脂肪とは?

中性脂肪は別名トリアシルグリセロールと言います。「トリ」は「3つの..」という意味、アシルは「アシル基(ここでは酸と思ってください)」、グリセロールはグリセリンの別名です。つまり、トリアシルグリセロールは3つの酸(ここでは脂肪酸)とグリセリンという意味です。
もしかしたら、中学ぐらいの時に、脂肪は脂肪酸とグリセリンでできているって習った記憶のある方もいるかもしれませんが、それです。グリセリン1分子と脂肪酸3分子が合体して1つになったものが1つの中性脂肪です。この物質が皮下や内臓に溜まっていくんですねー。。。

ファストフード最高


5. 脂質代謝

脂肪は身体にとって重要な栄養素で、極限まで減量しているボディメイク大会出場者などは脂質を削りすぎて、皮膚トラブルに悩まされたりすると聞きます。皮膚の細胞膜自体が脂質で構成されているので、これは当然起こりうる現象です。一方で、冒頭でお話ししたメタボは、脂質の取り過ぎで起きてしまう現象です。

では、最近話題のワードも含めて、脂質がどのように代謝されるのかを見ていきましょう。
まずは、少し脂質の合成に触れ、その後どのように脂質を分解して(脂肪を分解して)エネルギーに変えるのか、に焦点を当てたいと思います。
#1-6.bでは、最近話題のオメガ3とかトランス脂肪酸とか、そんなことを解説しますね!!


合成に触れておこう

脂肪を合成(作る:分解の反対)するのは、細胞の細胞質(細胞内の核とかミトコンドリアなど以外の部分)です。ここに、脂肪を合成するための酵素が含まれており、脂肪酸とグリセリンから、脂肪を作り出します(Fig.2)。

Fig.2 脂質合成:脂肪酸とグリセリンから脂肪は作られる


脂の多い食べ物をとったときはもちろん、急激な血糖値の上昇があれば、それに反応してインスリンが急激に分泌され、脂肪の合成を促します。(ホルモンについては別の章で詳しく解説します。)

近年注目されている低GIGlycemic Index)食品は、血糖値の上昇が緩やかな食品として注目されており(ググってみて!)、血糖値が上がりにくい→インスリンの分泌が緩やか→脂肪の合成がゆっくり→太りにくい。という理屈で注目されています。

血糖値ついでに話すると、急激な血糖値の上昇があると、急激にインスリンが分泌され血糖値を一気に下げるので、低血糖状態になり、食後疲れた感じや眠気に襲われることがあります。(これを血糖値スパイクと言います。)普段食後に眠くなる方は、ゆっくり食べるなど食べ方や食品の内容を見つめ直してみましょう。

話がそれましたが、グルコースを代謝する流れで、アセチルCoAを作ったと思いますが、(#1-5参照)ここからマロニルCoAなど別の物質を経由して、脂肪酸合成酵素を使って脂肪を作り出します。脂肪の合成について詳しく知りたい方は、参考サイトを置いておくので、見てみてくださいね!
上級者向け:福岡大学さんのサイト


6. 贅肉を分解してエネルギーを取り出す

この章のメインにやっと入ります笑。まず初めに脂肪は、脂肪酸とグリセリンに分解されます(Fig.3)。合成の逆ですね。

Fig.3 脂質代謝:脂肪を分解すると脂肪酸とグリセリンになる

代謝というからには、脂肪酸とグリセリンに分けただけではお話になりません。ここからどうやってエネルギーを取り出すのかが重要です。

脂肪酸を代謝する場所は、ミトコンドリアです。やっぱりエネルギーを取り出して使うのであれば場所はミトコンドリアなんですね!(#1-4参照
脂質の代謝は以下の流れです。

STEP1. 脂肪が脂肪酸とグリセリンに分解される。
STEP2. 脂肪酸がミトコンドリアのマトリックスに運ばれる。
STEP3. β酸化が行われる。
STEP4. 代謝産物がエネルギー産生のための経路に入る。

この4つの流れに沿って説明していきますね。
Fig.4をざっくりみてから読むと話が入ってきやすいですよ。


STEP1. 脂肪が脂肪酸とグリセリンになる。


胆汁や膵液中のリパーゼによって脂肪酸とグリセリンに分解*」されます。

食べ物としての脂質は、リパーゼという消化酵素によって分解されます。リパーゼは、すい臓から分泌されるすい液の中に含まれていて、胃と腸の間にある十二指腸(指12本分の長さくらいであることが名前の由来)に分泌されます。そこでまず脂肪は脂肪酸とグリセリンに分解されます。

*読み飛ばし可:
この冒頭でお話ししたグリセリンと3つの脂肪酸ではなく、厳密には、リパーゼによってグリセリン+1脂肪酸と、バラバラ2つの脂肪酸にまでしか分解されないことがわかっていて、教科書検定の結果、記載が昔と現在では変更になっているそうです。近年では、「胆汁や膵液中のリパーゼによって、(2つの)脂肪酸とモノグリセリドに分解される」と教科書に記載があることが多いようです。
細かいことを言えば、その後細胞の膜を通過し一旦脂肪に戻り、また分解された時に3つの脂肪酸とグリセリンまで分解される。という流れです。

ですので!!

細かいことは抜いていいので、脂肪はグリセリンと脂肪酸に分解される。のがSTEP1と考えていただいて大丈夫です。(リパーゼの役割をテストで聞かれたときは厳密さが必要かもしれませんが。)


STEP2. 脂肪酸がミトコンドリアのマトリックスに運ばれる。


作り出された脂肪酸は、ミトコンドリアのマトリックス(#1-4参照)に運ばれます。

脂肪酸はアシルCoAという物質になり、マトリックス内に運ばれます。
一方、長い脂肪酸はそのままではミトコンドリア内に入れないので、カルニチンという物質がくっついて中まで運んでいきます。

以下、詳しく説明するので過去のミトコンドリアの構造を参照しながら読んでみてください。難しい方は読み飛ばしてもOKです。

読み飛ばし可:
ミトコンドリア外膜上には、アシルCoA合成酵素というのがあります。そのため、脂肪酸はここでアシルCoAという物質に変えられます。アシルCoAは外膜は通りぬけ、ミトコンドリア膜間腔に入ります。しかし、それが大きい場合(長い脂肪酸由来の場合)内膜は抜けられません。そのためここで登場するのがカルニチンです。カルニチンはアシルCoAとくっついて、アシルカルニチンというものを作ります。なんと都合のいいことに、内膜上にはアシルカルニチンを通すタンパク質が存在していますので、アシルカルニチンという状態で、長い脂肪酸はマトリックスに辿り着きます。

結論、短い脂肪酸、長い脂肪酸いずれにせよアシルCoAという状態で、ミトコンドリアマトリクスに送られます。


STEP3. β酸化が行われる。


もしかしたら詳しい人は聞いたことがあるかもしれません。いよいよβ酸化です。β酸化(ベータさんか)はミトコンドリアのマトリクスで行われます。

細かいことを言えば、脂肪酸が持っている炭素の数が偶数or奇数で反応は若干異なるのですが、ややこしさ回避のためここでは言及しません。
酸素原子を得る反応(水素原子を失う反応)を酸化と言いますが、複数の反応を経て、最終的にアセチルCoAという物質まで分解されます。
反応スタート物質のアシルCoAと間違えないよう注意してください。別物です。


STEP4. 代謝産物がエネルギー産生のための経路に入る。


ここでいう代謝産物とはこのアセチルCoAのことです。アセチルCoAは実は#1-4のクエン酸回路で出てきた重要物質です。
つまり、脂肪を分解していくと、その最終的にできる物質は、エネルギー、つまりATPを作り出す経路のクエン酸回路に取り入れられるわけです。

このようなstepを経て、脂肪からATPを合成することができるんですね!非常に細かい反応が複数組み合わさっているので、あまり深掘りしすぎずに留めておくことにします。

Fig.4 脂肪からエネルギーを取り出す



「脂肪を燃やして」という言葉の表現ですが、あまり厳密ではありません。
ここまで読んでくださった方は、この「脂肪を燃やして」が「脂肪を分解してATPを取り出す」ことだと納得がいくかと思います。
というか、伝わってれば嬉しいです笑笑。

7. ケトン体とケトン体ダイエットとは。

ケトン体の役割


ケトン体、もしくはケトン体ダイエットというのを聞いたことがあるかもしれません。脳のエネルギーは基本的には糖ですが、この糖の代わりに使えるのがケトン体です。
脳のエネルギーになるには、脳への血液の通り道にある、血液脳関門(Blood-brain barrier, BBB)を通る必要があります。BBBは、バリア機能をもち、体によろしくないものが脳へ運ばれないようにしています。
このBBBを通れて、脳のエネルギーになれるのが、ブドウ糖(グルコース)と、このケトン体のみです。

ケトン体の作られ方

ケトン体は、脂質代謝の過程で作られます。
Fig.4で脂質からアセチルCoAを作っていますが、前述の通り、アセチルCoAはクエン酸回路で使用されます。一方で、アセチルCoAはケトン体と呼ばれる物質に変換も可能です。ではなぜ、変換する必要があるのでしょうか。
ケトン体は水溶性(水に溶ける性質)でアセチルCoAはそうでないと言われています(不溶性)。そのため、全身にエネルギーを巡らせる際には、ケトン体にして血液に溶ける状態にする必要があるのです。
*ちなみに、変換されて作られるケトン体はアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの3つがあり、最初の2つは血中で使われ、アセトンは揮発しやすく呼気に含まれやすいので、ケトン体ダイエットをしている人はこのアセトン特有の匂いがするとかしないとか言われています。(個人差あるかと思います。。)

ケトン体ダイエットとは

ケトン体ダイエットとは、脂質を代謝しやすい状態にして、ケトン体を作るモードのダイエットのことを指します。
体がこの状態に入るには、一定期間必要で、普段糖質を取る人だと基本的にはグルコース代謝のモードに入っているので、うまく脂質代謝をしてエネルギーを取り出すのには、少し時間がかかります。このモードに入った状態のことをケトーシスと言います。

まとめ

複雑だったので、簡単にまとめると、脂質代謝はこの章の流れの通りですが、作り出したアセチルCoAはクエン酸回路で使われてATP産生に利用されるか、ケトン体変換に回されて、脳のエネルギー源として利用される2択があって、実際に体内では選択しているのではなく、この両方が行われていルト考えるのが一般的です。
つまり、脂質代謝をうまく回せばアセチルCoAが作られて、ケトン体もできるので、この脂質代謝をしやすいモードにすることをケトン体ダイエットと呼ぶと考えて語弊はないと思います。


長くなったので脂質に関するお話は、次の#1-6.bへ続きます。こちらでは、最近話題のオメガ3、オメガ6とかトランス脂肪酸について、そもそもどういう意味なんだ3とか6って。というところから、トランス脂肪酸、不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸、DHA、EPAなどなどについて、ゆるりと説明します。

ではでは!!!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?