yusuke tomotsune

産業医として茨城県を中心に活動しています。職場のメンタルヘルス関連が専門ですが、幅広く…

yusuke tomotsune

産業医として茨城県を中心に活動しています。職場のメンタルヘルス関連が専門ですが、幅広く産業保健活動に取り組んでおり、その中での雑感などを投稿していきます。 社会医学・産業衛生指導医、労働衛生コンサルタント、博士(医学)、茨城労働局地方労災局医、茨城産保センター相談員等。

最近の記事

  • 固定された記事

産業医は孤独な仕事

 常日頃、感じることですが、産業医は孤独な仕事です。その理由はいくつかありますが、一つには産業医の役割から生じる孤独感、そしてもう一つは選任されている事業場に産業医は自分一人であるケースがほとんど、ということが背景にあると考えています。  まず「産業医の役割から生じる孤独感」ですが、産業医は「労働安全衛生法に基づいて選任」され、「事業場に対して意見を述べる」が役割といったところから来ているのかな、と考えています。  前者の「労働安全衛生法に基づいて選任」ですが、近年、健康

    • 就業上の配慮に関する事業者への意見

       前回の続きです。主に、職場復帰に際して、ですが、他の場面にも適用できるかな、と考えています。  この「就業上の配慮に関する事業者への意見」ですが、あくまで「意見」だということが大前提で「意見」を踏まえて、判断するのは事業者です。このあたりは下記の記事にも記載しました。   さて、職場復帰に際しての意見なのですが、一般的には、職場復帰について「可(=就業可)」もしくは「不可(=就業不可)」といった表現になることが多いですが、この表現には違和感を感じます。というのも、復職を

      • 職場復帰における主役は誰?

         今回は職場復帰について考えてみます。私自身、職場復帰を含む、労働者の個別の健康問題への対応に仕事の多くの時間を費やしています。が、この「職場復帰」については、産業医の職務としてはっきり明記されておらず、労働安全衛生規則の14条に記載されている >四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。 に含まれるのかと考えています。  ちなみに、ストレスチェック、長時間の医師の面接指導については、 >一 健康診断及び面接指導等(法第66条の8第1項に規定する面接指

        • 職場での救急対応

           久しぶりの投稿です。タイトルは「職場での救急対応」としましたが、「体調不良者への対応」といった感じかもしれません。  職場で労働者が体調不良になった際にはどのように対応しているでしょうか。職場によっては、緊急時の対応としてマニュアルを定めているところもありますが、「緊急」とはどの程度の状況を示すのか、までは明らかになっていないことが多いでしょうし、例えば、デスクワークの労働者が具合が悪そうにしている際に、緊急対応(≒組織としての対応)が必要なのか、それとも、帰宅や医療機関

        • 固定された記事

        産業医は孤独な仕事

          メンタルヘルス対策における評価指標

           職場における健康管理活動において、メンタルヘルス対策は多くの職場で優先順位として高いのではないかと推測していますが、活動をするからには状況を評価する「指標」は重要ですよね。今回はその指標に関して考えてみました。  まず思いつく指標としては、メンタルヘルス不調による「休業者数」でしょうか。当然ながら、休業者数が多ければ、それだけメンタルヘルス不調で悩んでいる社員も多いわけですし、休業した社員の業務を周囲に割り振ることで周囲の負荷が増えますし、サポートする上司、人事労務担当、

          メンタルヘルス対策における評価指標

          メンタルヘルスの問題で困るのは誰か

           前回の「職場におけるメンタルヘルスの本筋は労務管理」の記事とも繋がりますが、その労務管理が上手くいかなかったときに困るのは誰でしょうか。この「職場におけるメンタルヘルスの本筋は労務管理」は、メンタルヘルスの問題を解決するには労務管理が重要という意味ですが、労務管理(人事管理も含まれるかも)は何のためにするかというと「法令等を遵守してビジネスを行うため」なのかな、と考えています。前半の「法令等を遵守して」はコンプライアンス的な側面、後半の「ビジネスを行うため」は、企業として社

          メンタルヘルスの問題で困るのは誰か

          職場におけるメンタルヘルスの本筋は労務管理

           私は産業医業務の中でもメンタルヘルスに力を入れていますが、産業保健は職場におけるメンタルヘルスにおいて何が出来るでしょうか。端的に言えば「話を聴いてアドバイスする」ことであり、産業保健がメンタルヘルスの問題を解決する訳ではないと考えています。なので、職場に対して「メンタルヘルスの問題ならお任せ下さい」といったコメントしたことは一度もなく「改善したいと考えていて、私に出来ることがあるなら協力します」というのが私のスタンスです。  よくある間違いとして、職場でのパフォーマンス

          職場におけるメンタルヘルスの本筋は労務管理

          産業医面談は癒しの場

           突然、スピリチュアルな感じのするタイトルですね。これまでの記事で「産業医は診断や治療はしない」といったことは述べてきました。また、例えばメンタルヘルス不調の社員との面談時にも、治療的意味合いを含んだカウンセリング的な対応をすると、上手く行かなかった際に信頼関係に影響をもたらすことがありますが、「産業医にカウンセリングしてもらっている」といったコメントはしばしば耳にします。  一方で「治療はしない」ことを心掛けながらも、医師としての性なのか、目の前の人の健康状態が改善して欲

          産業医面談は癒しの場

          寄り添いながら、アドバイスすることは難しい

           産業保健スタッフであれば、日常的に労働者からの相談に対応することになりますが、どういったスタンスで接するかって難しいですよね。産業保健スタッフ=(ほとんどが)医療職ですから、寄り添うことって大切です。当然ながら、寄り添って話を聴かないと、本人が状況や気持ちを話してくれないでしょうし、こちらのアドバイスに耳を傾けてくれないでしょうし、その後の対応に際してこちらを信用して預けてくれることもないでしょうから、適切な対応をするためにも「寄り添って話を聴く」といったスタンスは必要だと

          寄り添いながら、アドバイスすることは難しい

          産業医をするのに臨床経験はあった方がよい?

           先日、医学部の学生実習で、タイトルのような質問を頂きました。私の経験上は、「ないよりはあったほうがいい」ですし、かといって、ないと困るわけではないので、自分で考えて、興味関心も踏まえて決めればよいのかな、とは考えています。  個人的な経緯になりますが、私は臨床初期研修が必修化されるタイミング(正確には1年前)に国家試験に合格し、初期研修を行った大学附属病院では、前倒しで制度が始まっており、内科を1年+α(なので、内科に進むことを決めた上での他の診療科のローテーション)、外

          産業医をするのに臨床経験はあった方がよい?

          新型コロナウイルスワクチンの職域接種に思うこと

           6月に入って、新型コロナウイルスワクチンの職域接種に注目が集まっており、多くの産業保健スタッフが何らかの形で関わっているのかな、と推測しています。  新型コロナウイルスワクチンに対するスタンスは人それぞれであっていいかと考えているのですが、日本での現状としては「努力義務」であり「義務」ではありません(努力義務=実質的に義務だよね、って話もある)し、誰かに強制されて接種するものでもありません。日本、世界での感染状況、自身や家族、周囲の背景などを勘案して、各自で接種するかどう

          新型コロナウイルスワクチンの職域接種に思うこと

          事業者と産業医の関係性〜産業医意見の使い方〜

           ちょうど一年前くらいにこんなツイートをしました。専門家は意見を述べるのが役割で、その意見を踏まえて判断するのがトップ。その役割分担を間違えると、専門家がモチベーションを失ったり、攻撃の対象になったりしますし、いずれトップの求心力も低下します。 そして、直近ではこんなニュースも報道されています。  私は政府と専門家の中に入っている訳ではありませんので、詳細や実態はわかりません。なので、自分の状況(=産業医)に置き換えて考えて、ですが、まずは私は産業医と事業者の間で権力闘争

          事業者と産業医の関係性〜産業医意見の使い方〜

          事後対応は次のステップにおける予防活動

           みなさん、産業保健活動していますか?私は毎日(頭の中であれこれ考えることも含めて)しています。でも、産業保健活動って一体なんでしょうか。なんとなく、働く人の健康管理で、職場で○○の取り組みをやると、みんなが健康的になって生産性も上がってハッピー!といったイメージもありますが、私が知っている産業保健活動はとても地道な活動です。  産業保健活動の基礎は、労働基準法や労働安全衛生法などの労働関連の法律なのなか、と考えてはいますが、労働安全衛生法には 労働基準法(昭和二十二年法

          事後対応は次のステップにおける予防活動

          早期離職を防ぐ就職後の支援

          週末のテレビ(私はほとんどテレビを見ませんが)でこんなニュースを見ました。 上記は、コロナ禍で高校生の早期離職を防ぐ就職後の支援として、「ジンジブ」という会社のサービスについて取り上げていました。内容としては、就活を支援する会社が、離職を防ぐために就職後も相談窓口として支援している、といったものです。  私自身も就職後、早期に離職する人がいるのは目の当たりにしていますが、その事情(全てを把握できているわけではないですが)は千差万別だと感じています。産業医が関わるケースとし

          早期離職を防ぐ就職後の支援

          ストレスチェックについて再考する〜集団分析・職場環境改善について〜

           前回に続いて、ストレスチェックのセミナーを担当する機会があったので、今回は集団分析・職場環境改善について振り返ってみます。  4月13日(火) ストレスチェックの実施とその結果の具体的な活用例@土浦 (なお、1回目は3月2日に水戸で実施済み)   ストレスチェックの主旨は一次予防(これ重要です!)なので職場環境改善はまさしくストレスチェックの要ですが、まだまだ手探りでやっている事業場も多いと聞いています。集団分析結果は、部署に所属しており、自記式質問紙であるストレスチェ

          ストレスチェックについて再考する〜集団分析・職場環境改善について〜

          ストレスチェックについて再考する〜個別対応編〜

           労働安全衛生法によるストレスチェック制度は、2015年12月に法制化され、5年が経過しました。なので、実施が義務づけられている事業場では5回程度は実施されており、ある程度、PDCAも回って、ルーティン化している状況かと考えています。今回、茨城産業保健総合支援センターから相談員業務の一環として、ストレスチェックに関するセミナーの依頼があったこともあり、いい機会なのでこの記事では個別対応について振り返ってみました。 4月13日(火) ストレスチェックの実施とその結果の具体的な

          ストレスチェックについて再考する〜個別対応編〜