事後対応は次のステップにおける予防活動

 みなさん、産業保健活動していますか?私は毎日(頭の中であれこれ考えることも含めて)しています。でも、産業保健活動って一体なんでしょうか。なんとなく、働く人の健康管理で、職場で○○の取り組みをやると、みんなが健康的になって生産性も上がってハッピー!といったイメージもありますが、私が知っている産業保健活動はとても地道な活動です。

 産業保健活動の基礎は、労働基準法や労働安全衛生法などの労働関連の法律なのなか、と考えてはいますが、労働安全衛生法には

労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)と相まつて、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする

と記載されており、自分のやっている活動が「労働者の安全と健康の確保」と「快適な職場環境の形成」に結びついているか、考える必要があるのではないでしょうか。

 また「労働者の安全と健康の確保」と「快適な職場環境の形成」を具体的にどういった活動を通して進めるか、については、安全衛生管理体制の確立、職場巡視、健康診断、ストレスチェックなどが定められていますが、全てが法律、指針、ガイドラインなどで定められているわけではなく、事業場の実態や、様々な立場の方の意見を聞きながら進めていくわけで、ここに産業保健活動の醍醐味があると感じています。

 上記を基本として、ですが、私が知る産業保健活動の基本は、法律に定められた活動を事業場の実態にあわせて漏れなく遂行していく(もしくは遂行してもらう)ことと、問題が生じた際の事後措置の繰り返しだと考えています。最初に記載した「職場で○○の取り組みをやると、みんなが健康的になって生産性も上がってハッピー!」というのがいわゆるゼロ〜一次予防的な活動であり、とてもポジティブではありますが、この活動が主、という事業場は多くなく、職場における一次予防的な活動の多く、法律に定められた地道な活動が基本です。職場巡視は危険因子の早期発見(これは二次ではなく一次でいいのかな)、健康診断は実施や結果を活用した一次予防、ストレスチェックはセルフケアに役立てる、職場環境改善による一次予防、といった感じです。なので、多くの医師の予防活動は診断、治療、疾病管理といった二次予防〜三次予防が中心になりますが、産業保健活動(産業医)に求められるのは、一次予防〜三次予防の幅広い範囲になります。

 さて、タイトルにもある「事後対応は次のステップにおける予防活動」ですが、上記ので法律で定められた活動の中で、事後対応が必要になることがあります。というか、事後対応を並行してやるのが日常です。例えば、健康診断を実施すれば、HbA1c:10%超(糖尿病の管理がとても悪い状態)といった結果も珍しくはありませんし、メンタルヘルス不調への対応を求められますし、現場で怪我をした人を連れてこられたりもするわけです。この一つひとつが事後対応であり、話を聞いていると、自分の活動の至らなさや職場における気づきと対応が遅かった、など「もっと早い段階で介入できただろうな」といった気持ちになることはしばしばです。とはいえ、関係者に過去を責めるような言動をしてしまうと、産業医(もしくは産業保健スタッフ)に対する陰性感情が芽生えたり、「相談すると責められる」といった後ろ向きな気持ちが芽生えたり、で、今後の活動にネガティブな影響が生じることを経験しています。かといって、今、目の前で対応した出来事を次への活動につなげることが、同じような出来事を防ぐ、つまり予防的な活動に繋がるのではないかと考えていますし、それをしないと、言ってみれば「モグラたたき」であって、いつまでたっても産業保健活動のレベルアップは望めません。

 では、どうやって目の前で対応した出来事、つまり事後対応を、次の出来事を防ぐ、つまり予防活動につなげていくかも、私の考える産業保健活動の醍醐味の一つです。例えば、事業者、労働者の双方に働きかけるときに、ネガティブな側面をどこまで、どうやって伝えるか、つまり、脅しにならないように、とか、その事業場で実際に起こったことか、そうではなくて自分の経験や知識としてもっていることか、受け止める側の許容度はどれくらいか、などを見極めながら働きかけるという微妙なさじ加減が求められます。そして、これは、もしかしたら多くの人からは見えない(どういった考えで企画・立案しているか、職場との関わりの中でのスタンスなど)活動になっている場合もありますが、その背景を伝えるタイミングを間違ったり、伝えすぎたりすると、権威主義的になってしまう点にも注意が必要です。

 今回もまとまりのない記事になっている感もありますが、産業保健活動は教科書などには出てこない、機微な人間関係の構築やコミュニケーションが必要とされる部分や、事業場の実態や自分の経験や考え方を反映できる裁量があるのがいいところだな、と考えています。

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