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よすけの短編小説まとめ

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書いた小説を投稿した順にまとめています。短いのから長いの。暗いものから明るいものまで。ほっと一息つけるように。
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2023年1月の記事一覧

【短編小説】明日休みの散歩道

820文字/目安1分

 あぁ、疲れた。

 久しぶりだ。こんなに遅くまで会社に残って仕事をしたのは。時計の長針が一周と少しまわれば日付が変わる。終わりそうな気配は全然しなかったけど、どうにかやり切ることができた。
 そろそろ会社から残業時間を注意されそうだけど、来週に仕事を残さなかっただけ自分をえらいとしようか。

 会社を出ると、コートをすり抜けるように冷たい空気が身体を包む。それがなんとなく

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【短編小説】君を待つ

【短編小説】君を待つ

497文字/目安1分

 ごめんね。あなたのことは確かに好きだった。でももう無理なの。だから連絡してこないで。

 君に振られた。あんなに好きだったのに。今も変わらず好きなのに。
 君とはずっと一緒にいるのだと思っていた。けんかもいっぱいしたけど、その分楽しいことも多かった。これからのことも、ずっと先のことも、二人のことをたくさん話した。
 君を傷つけてしまった。すれ違うとか、そういうことじゃない

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【短編小説】待ち合わせ

【短編小説】待ち合わせ

756文字/目安1分

 踏切の向こう側で君が待っている。

 待ち合わせは朝。少し早いけど、この時間でしか見られない景色があるから、どうしても一緒に行きたかったんだ。
 誘う時は断られないか不安だったけど、快くオッケーしてくれた。

 カンカンカンと一定の間隔で音が鳴る。

 反対側にいる君は小さく手を振っている。それがかわいらしくて、ついにやけてしまう。
 この踏切は駅のすぐ隣にある。停車して

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【短編小説】かたわら

【短編小説】かたわら

551文字/目安1分

 もし、この体が透明だったら。人の視線を気にせずにいられるだろうか。それでも誰かに見られる気になるだろうか。

 町は変わらず混んでいる。人ごみは苦手だけど、家に一人でいるのもいたたまれなくて外に出た。植木一つにしても煌びやかに飾られたこの時期は、どうにも好きになれない。輝きを増すほど、わたしの影が濃く暗くなっていく。
 その闇の中をただ歩く。
 すれ違う人。家族。男女の二

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