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ブラック・ドッグ・タウンへようこそ!~最終話 黒い犬とディスコを
5・黒い犬とディスコを
さて、そこからの一週間はみんな大忙しでした。ドンちゃんは新しい住人のことを記事に書き、ワラシとキヌタは「頼まれごと」の練習に熱を入れていました。ロシーさんはというと、大好きな畑いじりもロクにできないくらい、てんてこ舞いです。
どうにかこうにか準備がととのい、お祭りの日がやってきました。
広場にはがっしりとしたやぐらが組まれ、そこから近くの街灯や屋根に向かってイル
ブラック・ドッグ・タウンへようこそ!~第四話 たましいたちがいるところ
4・たましいたちがいるところ
さて、ドンちゃんとはじめとした一行は、ちかちかまたたく星空の下を進んで、《思い出の入り江》までやってきました。白い岩崖にできた、ぽかりと広い隙間に、青い青い海が寄せて返して波になっています。銀色の月明りが波を照らして、白い泡がきらりきらりと光ります。
べたつくような、生ぬるい潮風にキヌタが鼻をひくひくさせました。塩辛くて、少し生臭いような、海のにおいです。
ブラック・ドッグ・タウンへようこそ!~第三話 引きこもりの人魚姫
3・引きこもりの人魚姫
「さて、町に住むとなると、住民登録をしてもらわなければいけませんね」
まだまだにぎやかなメインストリートを進みながら、ロシーさんが言いました。キョロキョロとあたりを見回すキヌタが迷子にならないように、その手をつないだワラシが首をひねります。
「じゅうみんとうろく?」
「そう。ワラシさんだって、町に初めてやってきたとき、書類を書いたでしょう。そうして初めてこの町の住
ブラック・ドッグ・タウンへようこそ!~第二話 同じ墓穴のむじな
2・同じ墓穴のむじな
ひっく、ひっくとしゃくりあげながら、ワラシが語ったのは次のような話でした。
ワラシは外の世界にひょっこり出て行って、人間の子どもたちと遊ぶのが大好きです。その子たちが知り合いじゃなくても大丈夫。ワラシはいつの間にか遊びに加わって、いつの間にか帰っているのです。だから子どもたちが遊び終わって、ふと人数を数えると、全員いるはずなのに、遊びの最中より誰かがひとり減っている
ブラック・ドッグ・タウンへようこそ!~1話 墓場の下で朝食を
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
皆さんは、ブラック・ドッグを知っていますか?
イギリスの伝承で、「古い道や十字路に現れる黒い犬を見たら、不吉なことが起こる」というお話。
不吉。そう、たしかに不吉。
でもブラック・ドッグの中には、ちょっとはいいやつだっているんですよ。
特に墓場にいるやつなんかは、迷子を案内するくらい、いいやつです。
名前を呼べば、ブラック・ドッグは世界中の墓場に現れ