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珠玉集

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心の琴線が震えた記事
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木の子みのむし神社 参拝記 【感想がわりの路地裏二次創作】

祝祭期間がすぎても路地裏には賑わいが続いていた。 祝祭とはラ・フォル・シャンピニヨンのこと。(シャンピニヨンとは?) あの頃は「キ・ノ・コ!」「キ・ノ・コ!」という喝采が日に日に熱を帯び、路地裏にキノコを御神体とする神輿が毎日のように練り歩いたものだ。 そんな路地裏を活写した蒔倉みのむし氏による『なんのはなしですか。【長編小説】』。 「どうでもいい課」報告書と並行して書かれたこの壮大な物語は、路地裏への愛と木の子大将への並々ならぬリスペクトに溢れていた。 小説の完結以降も

夜明けのドンブラコ【読み聞かせ】

自分のこどもに読み聞かせをするとき、「この物語をつたえたい」だとか「教養になればいい」だとかは、あまり考えていなかった。 読み聞かせはわたしにとって、 「あなたのことが好き」 と湧き上がる想いに呼応する身体表現のひとつだったから。 声も、言葉も、だから物語をなぞってはいなかったと思う。読み聞かせをしている間は、そのふたつはたぶん、目の前にいるこどもの心を抱きしめるためだけに存在していたと思うので。 ◇ 【白4企画】 https://note.com/shiro_enpitsu/n/n81d7694af115 白鉛筆さんの企画に参加させていただきました。

墨で桃太郎(「墨で鳥」号外)

本記事は白鉛筆さんのこちらのご企画の エントリー作品……ではございません。 じゃ何なのかっていうと、何ですかね、応援のエール? 真面目にやれ。 いや無理です。だってKaoRuだよ?どなたのご企画にお邪魔しようとルール違反の常習犯を名乗って憚らない、あのKaoRu(またの名を浦島Ru太郎、オリエンタル工作員ルゥノスケ、青いRu鳥、喫茶『薫』のマスター、アグィーラ城下町の床屋ワカメ……あとまだ何かあったっけ?)だよ? そのKaoRuが、期日の8月24日(浦島現地時間ではま

薄雲はパラフィンのごと夕空に名もなき吾を包む背表紙

科学という病、非科学という狂信

 現代文明の根幹には科学礼賛の精神があります。便利な社会生活にとって科学は不可欠な学問であって、数値で表現可能なあらゆる指標が、我々人類が豊かになってきていることを示します。  科学とは不便なものです。  直感的に「だってそうでしょ」と思うようなことでも、仮説検証によって正誤を証明しなければならないからです。ヒトの思い込みは間違うことが多いものですから、厳密な基盤がなければ矛盾なき科学という世界を構築することは叶いません。  理想世界と現実世界には、誤差があります。

2024年7月読書記録 謎のアンデッド、川端、無垢なアメリカ

 今月は、青空文庫(太宰治)とそれ以外の小説に分けて投稿します。  青空文庫以外では、8冊の小説を読みました。遠藤周作の2冊は別記事で。 イーディス・ウォートン『無垢の時代』(河島弘美訳・岩波文庫)  ウォートンは20世紀前半に活躍したアメリカの女性作家です。無垢=イノセントという言葉は、アメリカという国やアメリカ文学を語る際の重要キーワードと言われます。清教徒(ピューリタン)が作った国ということもあり、一時期禁酒法が施行されていたり、妊娠中絶が大統領選挙の重要争点になっ

【物語の方程式を身に付ける】トレーニングとしての模倣のススメ(2013年2月号特集)

テーマは発見するものテーマというものはよくよく考えるとなんだかよく分かりませんし、主題、題目、コンセプト、モチーフなど似た言葉がたくさんあって混同してしまいそうですが、ここではシンプルに、 「作品を通じて伝えたかったこと」と定義づけましょう。 このテーマというものには、どうやら意識できるものとできないものがあるようで、書き終えたあと、「そうか、私はこんなことが書きたかったのか」と改めて気づくことがあります。この場合のテーマは、書く前には決して分からないものなのでしょう。

短篇小説『3月85日』

 車のない車道はまっすぐ、傾斜5度ほどのゆるやかなくだり坂で、プラタナスのアーチを飾りながら、僕の悪い眼では永久に続いていると感じる。下へゆくのに、逆に天へのぼるように彼方のほうが光が満ちているように思う。  車がたえず往来しているときは、気づきもしなかった。  空なんか視るよりも不思議とやすらぐので、ときどき来ては交差点のど真ん中にたち、みおろす。 ……だが、いま。  その、僕のアパートから凡そ8分の近所に存在する私的な永遠の象徴に、まさかの邪魔、異物が混入する。二車線

宮沢賢治【眼にて云ふ】

夏の終わり、窓の外に目を遣ると、空が高い。 蜻蛉が、一匹、二匹、羽音を立てて、金色がかった青い空に消えていった。 だんだんと短くなる日照時間と共に、秋、それから先の冬の足音が聞こえてくる。 そんな何気ない、かけがえのない、一度切りの今日に、心を激しく揺さぶられた詩がある。 ※著作権の消滅した作品です。表題以外の表現を、現代の仮名遣いに修正しています。 ♢ 眼にて云ふ 宮沢賢治 だめでしょう とまりませんな がぶがぶ湧いているですからな ゆうべからねむらず血も出つづ

いぬの短歌集〜君がいるから〜

note創作大賞オールカテゴリ部門応募  犬との出会いは4歳。女の子の柴犬でした。 それから幾星霜( ˘꒳˘ ) ジーン 多くの犬たちとの出会いと別れがありました。 ひとよりずっとはやくに年を取り、旅立ってゆく犬。 命の儚さ、人智の小ささ、限りない愛しさを教えてくれました。 noteで犬短歌を多く詠んでいることもあり、せっかくならとここにまとめました。 犬好きな方も、猫好きな方も、動物はあんまり、、という方も、よかったらお楽しみください。 🐶いぬの短歌集〜君が

【ピリカ文庫】しゃれこうべは生意気な口をたたいて朽ちた

『こんなはずじゃなかった』 暁の頃、薄明かりのやわらかい光が東の空から徐々に上空に広がって、ビル群のガラスに映り込んでいくさまを見るのが好きだ。 明け方のスクランブル交差点は、昼間の騒々しさを忘れてしまったかのように静まりかえっている。ビールの空き缶ゴミが不意につま先に当たり、カランという音が大きく耳に鳴り響いた。 台形型の巨大ビルの大型ビジョンに映ったメッセージは、そのあとリクルート企業のCMとなった。 「こんなはずじゃなかった?」 「じゃあ、どんなはずだった?」

映画『あんのこと』を考え込む

現在上映中の『あんのこと』 実話を描いた作品は予備知識がなくても、 ネタバレを読んで映画を観ても深く心へ拡がる。 《 映画 あらすじ 》 主人公・香川杏は21歳。 違法薬物で逮捕され、刑事の多々羅に出会う。この出会いは杏の未来や居場所を作る安寧に繋がった。 多々羅は大胆な距離感がない刑事。ダルクでヨガを教えながら弱者を支援している。 ダルクには週刊誌記者・桐野もおり、杏は二人からの支援で母親からの暴力から逃れ、職も得て、夜間学校へ通う。 しかし世界中にコロナウイルス

264.乳がんと選択

2014年夏、私は乳がんで左乳房の全摘手術を受けました。8年前のことです。 私の乳がんは、浸潤性入管癌、直径5.1cm、範囲は12x9cmの広範囲に及んでおり、核異型度3、ER3+、PgR3+、Her2−、ルミナールA、Ki67は14.9%、リンパ節転移は21個中11個で、レベルⅡまでの腋窩リンパ節郭清、ステージ3c、再発リスクは8-9割と言われました。 私が選択した治療は、全摘手術、放射線、ホルモン剤で、抗がん剤はしませんでした。それでも8年経った今日も再発することなく

文学フリマ大阪へ、羽繕い中(2)「ブースが決まりました!」

文学フリマ大阪の出店ブースが決まりました! すっごくわかりやすいベストポジションを引き当てました! (私ではなく、もちろんぼんラジ編集長が) 入り口からまっすぐ直進。 つきあたりが<つるるとき子書店>さん。 その一つ手前が、<ウミネコ制作委員会>です。 ね、わかりやすいでしょう。 人流も良さそうな願ってもない場所です。 なにより心強いのは、お隣があの人気バツグンの<つるるとき子書店>さんなんです。 とき子さんとつるさんのパワーと神秘の力のおこぼれに、 どどーんと乗っかって