- 運営しているクリエイター
#エッセイ
東風吹かば匂ひおこせよ梅の花(暦のはなし・3月)
暖かい日が増え、だんだんと春めいてくる3月。虫たちが土からひょっこり顔を出す啓蟄(けいちつ)から、昼夜の長さがほぼ同じになる春分(しゅんぶん)へと季節が進み、陽が長くなっていきます。
春といえば桜ですが、春のはじまりに咲く梅の花も良いものです。そう感じるようになったのは、この歌を知って以来かもしれません。
「東風吹かば匂ひおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな」
千年よりも昔、京都の北野
きっと、うまくいく(暦のはなし・2月)
まだまだ寒い日が続きますが、暦の上ではもう春のはじまり、立春(りっしゅん)です。立春に入ってからはじめて吹く南からの強い風が春一番。そして2月半ば頃を過ぎると、雪が雨に変わる雨水(うすい)へと季節が進みます。
この時期は受験シーズンでもありますね。電車で英単語帳を熱心に読んでいる高校生を見かけると、自分の受験生時代を思い出してしまいます。センター試験の当日、雪道を絶対に「すべらない」ように慎
真冬のラオスで、2人の夢が重なる(暦のはなし・1月)
新たな年のはじまりは、日々厳しくなっていく寒さとともに。小寒(しょうかん)から大寒(だいかん)へと移りゆき、手がかじかむ季節です。
3年前の1月、私は今の会社に入社しました。最初の仕事はなんと東南アジアのラオスへの出張。コーヒー事業をPRするための動画撮影のディレクションと、Webサイト制作のための取材が目的でした。
私は大学時代、東南アジア、とくにメコン川流域の国々への開発支援について
大晦日とエビの天ぷら(暦のはなし・12月)
いよいよ12月になりました。本格的な寒さが到来する大雪(たいせつ)から、柚子湯に入ることで知られる冬至(とうじ)へ。クリスマスや年末年始の準備に忙しい時期ですね。
私には毎年、大晦日にエビ天をつくるという使命が課せられています。我が家の年越しそばにはエビ天をのせると決まっているのです。
祖父母と父母、兄と私、6人分のエビ天。殻を剥き、反らないように包丁でスジを切り、油の中でハネないようにし
食べることは、生きること(暦のはなし・11月)
11月に入ってしばらくすると、二十四節気では「立冬(りっとう)」、暦の上ではとうとう冬のはじまりです。寒さにコートを羽織れば、やがて木の葉が落ちて山にうっすら雪が積もる、「小雪(しょうせつ)」へと移ろいます。
私は冬がとても苦手です。空はどんよりしているし、日が短くて1日がすぐ終わるようで気が滅入ってしまうのです。そして、ある苦い経験をしたのも冬でした。刺すような寒さは、暗い気持ちごと、記憶
私たちを繋いだものは手紙だけだったけれど(暦のはなし・10月)
草木に冷たい露がつく寒露(かんろ)から、朝晩の冷え込みが厳しくなり朝霜がおりはじめる霜降(そうこう)へ。紅葉が山から里へと降りてきます。
10月は和名だと神無月ですが、私が幼少期を過ごした島根県出雲市では神在月と呼ばれます。日本中の神様が出雲大社に集まるため「在」が使われる、というのは有名な話ですが、では神様が集まって何をしているかというと、農業や縁結びについて話し合っているのだそう。
人より得意じゃなくても、上には上がいても(暦のはなし・9月)
静かに秋が深まっていくこの頃。二十四節気では、草花に朝露がつきはじめる「白露」から、昼夜の長さが同じになる「秋分」へと移ろいます。
秋といえば、食欲の秋、読書の秋、スポーツの秋……色々ありますが、私にとって、今年は芸術の秋になりそうです。
幼い頃から絵を描くのが好きで、子どもの頃の一番の夢は画家になることでした。先生や親から「上手だね」と褒められ、中学生のときには作品が学年代表としてコンク