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食べることは、生きること(暦のはなし・11月)

 11月に入ってしばらくすると、二十四節気では「立冬(りっとう)」、暦の上ではとうとう冬のはじまりです。寒さにコートを羽織れば、やがて木の葉が落ちて山にうっすら雪が積もる、「小雪(しょうせつ)」へと移ろいます。

 私は冬がとても苦手です。空はどんよりしているし、日が短くて1日がすぐ終わるようで気が滅入ってしまうのです。そして、ある苦い経験をしたのも冬でした。刺すような寒さは、暗い気持ちごと、記憶を鮮明に思い起こさせます。だからでしょうか、普段よりも自分の心身に敏感になって、生きるとは何なのかいうことをよく考えます。

「やがて、いのちに変わるもの。」
 ある広告のコピーです。私はこの言葉がとても好きで、コピーを書いた、岩崎俊一さんの本を持っているくらいです。
 食べることは、生きること。そんな当たり前のことを、私たちは日々の生活の中で忘れがちになります。自分で丁寧に作ったスープも、コンビニで買ったポテトチップスも、やがて等しく自分をつくるものになる。

 私にとって冬は自分の過去と向き合う季節でもあり、だからこそ、自分を大切にする季節でもあります。あたたかいものを食べて、しっかり寝て、暗い記憶をかき消すように、好きな人たちと笑いながら過ごす。

 今年も冬がやってきます。コートをクローゼットから引っ張り出すと、冬との勝負がはじまったような気分になります。春、ホッとしながらコートを仕舞うとき、体重が増えていても、それも冬を越せた証なので、春の自分よ、喜んで受け入れてください……

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