大晦日とエビの天ぷら(暦のはなし・12月)

 いよいよ12月になりました。本格的な寒さが到来する大雪(たいせつ)から、柚子湯に入ることで知られる冬至(とうじ)へ。クリスマスや年末年始の準備に忙しい時期ですね。


 私には毎年、大晦日にエビ天をつくるという使命が課せられています。我が家の年越しそばにはエビ天をのせると決まっているのです。
 祖父母と父母、兄と私、6人分のエビ天。殻を剥き、反らないように包丁でスジを切り、油の中でハネないようにしっぽの中の水をしごき出し、ころもにくぐらせて油の中へ。この作業をしていると、あぁ1年が終わるなぁと思うのです。

 ちなみにまいたけの天ぷらも作るのですが、これは母の仕事。毎年つづけてけているうちに、なぜかこの役割分担に落ち着いてしまいました。

 母と並んでキッチンに立つのも、大晦日ならではです。スマホで松田聖子や中森明菜の歌を流して、2人で口ずさみながらお料理を作ります。ときどき父がのぞきに来たり、兄が紅白歌合戦の進み具合を教えに来てくれたり。

 でも、今年は帰省をしないことに決めました。祖父母は高齢だし、用心のため……。

 今まで、どんなに忙しくても年末年始だけは帰るようにしていたので、京都で迎えるお正月ははじめてです。今年は母がひとりでエビとまいたけを揚げることになると思うとなんだか寂しくもあり、申し訳なくもあり……。

 家族全員が集まる、1年の終わりの日に、テーブルの真んなかにいるもの。私たち家族の平和の象徴は、あつあつのお蕎麦のうえにのったエビ天とまいたけの天ぷらです。

来年は、いつもよりも大きなエビで、平和を祝いたいものです。

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