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「クルイサキ」#17
さくら 10
さくらは声がした方へ振り返るのにたっぷりと時間を掛けた。どんな表情をすればいいのかわからなかった。ぼさぼさな髪を少し恥ずかしく思うくらいの乙女心もあった。
意を決して振り向くと、怪訝な表情を浮かべた見知らぬ男が立っていた。さくらは拍子抜けし、緊張が一気にゆるんだ。有り得ない期待を一瞬でもしてしまった自分を恥じた。
さくらは見知らぬ男を無視し、背を向けて何事もなかったようにゆっ
「クルイサキ」#16
二章 休眠打破
さくら 9
「同じ空は一度もない」
十年前の高校の卒業式の日、空に与えられた特権を誇るかのように、言葉に力を込めて彼は断言していた。
それなのに今日の空があの日と同じように晴れ渡っていて、まるで十年前の空を用意したかのようであったから、困惑を覚えずにはいられない。
光が自由奔放に空を泳ぎ回り、空の青さを鮮明にしている。巨大な空が春の訪れを知らせようとするかのように、体をふ
「クルイサキ」#15
死神 7
二人は抱き合い、唇を触れ合わせた。
その場から逃げ出したい衝動を必死で堪え、抱擁する二人の姿を目に焼きつけた。意思を鈍らせないようにと、殺意を印象づける。
さきほど、他の人間に憑依をした。その人間は鋭利な刃物を持っており、標的を殺害するのに適していた。心がかなりぐらついていて、憑依するのに造作なかった。捨てたみすぼらしい恰好をした人間を見下ろしたとき、自分の役目が強固していく感覚
「クルイサキ」#14
さくら 7
空は青く澄んでいるというのに、さくらの心はどんよりとした雲が停滞していた。いまにも降り出しそうな雨を避けようと家路へ急ぐ心境に似ていて、織田との別れをないことにするために、彼との約束を破ろうかと真剣に悩んでいた。
彼はさくらと会っておそらく最後の別れをするつもりなのだろう。織田に別れを告げられた瞬間に、さくらはもう彼と会う資格を失ってしまう。
それならば彼とは会いたくない。決定
「クルイサキ」#13
死神(タロウ)6
さくらと織田が楽しそうに雪上を駆けまわるのを眺めていても、タロウは思い描いていた達成感は抱けず、反対に苦い感情が心に残った。青空の色を作ろうとパレットに青色と白色の絵の具を落としたのに、なぜか灰色になったかのように、気味の悪さだけが全身に流れていた。
真っ白な雪だったのに、二人の足跡が汚している。泥が混じってみるみると醜くなる。
ただ、さくらの笑顔が見たかった。そう思って
「クルイサキ」#12
さくら 6
冬休みが終わり、今年始めての登校の日だった。始業式が終わって長めの掃除を強要されたあと、織田が雑巾を片手に向かって来た。
「あけましておめでとう」彼はぎこちなく頭を下げた。
彼がパリへの留学を告げた日以来、どこか彼に気後れを感じ、なかなか自分から彼に近づくことができなかった。
年始の挨拶だけは、ちゃんとしよう。なにごとも最初が肝心だ。さくらは今年の運勢を占う一戦でも挑むように彼
「クルイサキ」#11
死神(タロウ)5
さすがにさくらは抱き締めたり、頬擦りはしてくれなかったが、身を固めたままのタロウを慎重に抱き上げ、自転車の籠に収めた。
タロウは身を硬直させたままで、さくらの方を向くことができなかった。前方を見つめたまま、彼女の顔を見る勇気が出ない。なぜ素直に彼女に向き合えないのだろう。借り物の肉体でうまく行動に移せなくなってしまったのだろうか。だが、いままでも借り物の肉体でも自在に操って
「クルイサキ」#10
さくら 5
数日間降りつづいた雨は、アスファルトをひっそりと濡らしただけで、教訓を諭すこともなく、憂鬱さを増幅させて空からいなくなった。
引力に引っ張られた長い雨の粒は、糸の切れたヨーヨーのように次々と地面に打ちつけられて、まだ取り残されている。行き場を失った雨は、身を寄せ合い所々に水溜りを形成していて、その姿は道行く人に平謝りをしているかのように見えないこともない。それでも、道を歩く人々
『2024 BBMベースボールカード1stバージョン』1BOX開封しました!
プロ野球が開幕して一ヶ月ほどが経ちました。現在セリーグは貯金しているチームが阪神タイガースのみと、これから混セになっていくのか、それとも独走状態に入っていくのか、交流戦までの戦いがまずは注目したいです。
さて、本年も『BBMベースボールカード1stバーション』が発売となりました。早速購入いたしましたので、これから開封いたします。
いざ、プレイボール!
今回の印象はやはりドラ1のルーキーカ