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なぜ、「サザエさん」は劇場版が制作されないのか?

皆さんは、海外ドラマとか見るタイプですか?
私はまぁまぁ見る方なんだが、米国の海外ドラマは
1話完結がベースだが、それとは別に幹となる大きなストーリーがあり、それがシーズンをまたいで続いていく
という形態が多い。
このてのやつは、「CSI」「ER」など長寿シリーズの王道である。
また、1話完結の形態をとらない「ゲームオブスローンズ」「ウォーキングデッド」「LOST」のような形態もあるにせよ、基本、こういう連続系は局がリスキーな企画だとして、二の足を踏みがちなんだそうだ。
というのも、あっちでは日本の「視聴率」に該当するものが「視聴者数」というシビアな形態になってて、それこそ〇〇万人という具体的な数字が出てくるわけよ。
で、そういうデータの分析をすると、「1話完結形態の方が視聴者数は安定する」という結論が出るものらしい。
何となく、その意味するところは分かるような気がする。
たとえば連続系のドラマとなると、途中のシーズン3から見始めるわけにはいかんでしょ?
最初のシーズン1から見始めないことには、ストーリーがチンプンカンプンである。
だけど1話完結系となると、シーズン3からでも割と入っていけるのよ。
そういう意味でいうと、「新規獲得」は1話完結系の方が有利である。
あと、「離反」ね。
連続系になると途中でしんどくなって落ちる人たちがどうしたって出てくるわけで、それは1話完結系であっても同じことなんだけど、その落ち込みをカバーするものこそが「新規獲得」。
となると「新規獲得」のハードルが高い連続系の場合、【離反>新規獲得】という流れになり、シーズンを重ねるごとに視聴者数は右肩下がりになっていくものである。
というわけで、あくまでも数字にこだわる局側としては、1話完結系の方を優遇せざるを得ないわけさ。

1話完結系の金字塔「CSI」シリーズ

日本でも、長寿シリーズとなってる「相棒」なんかは「CSI」パターンだね。
これもシーズン1からのオールドファンだけでなく、シーズン途中から参入した、ご新規ファンは必ずいるはずだよ。
さて、こういうのはアニメの場合だとどうなるのか?
アニメの場合でも、長寿シリーズというのはそのほとんどが1話完結系である。
サザエさん」「ドラえもん」「名探偵コナン」など、大体がそうでしょ。
いや、「コナン」は同列に語れないかな?
「コナン」の場合、確かに1話完結とはいえ、シリーズには「黒の組織との対決」という長いストーリーが根っこにあり、そのへんは「サザエさん」や「ドラえもん」と同列に語れないかも。
こういうのは次シーズンへのヒキを作る米国的なマーケティングともいえるわけで、なかなか「コナン」はうまい作りになってると思う。
じゃ、「サザエさん」や「ドラえもん」はヒキを作らなくていいのか?
まぁ、全く途切れることなく延々と続く「サザエさん」は特殊な存在としても、「ドラえもん」の方は本来ヒキを作るべきだと思う。
でも、敢えてそうしないのは、これが「子供向けアニメ」だからじゃないだろうか。
視聴対象は主に小学生、もしくは幼児であり、少なくとも中学生ともなれば「ドラえもん」はまず見ないし、つまり子供向けアニメは「視聴者の卒業」が前提。
ゆえに、新規は常に拾っていかねばならず、敢えて間口の広い1話完結形態を維持して、回転率で稼ぐというコンセプトだろう。

劇場版「ドラえもん」最新作「のび太の地球交響楽」(2024年)

しかし、「ドラえもん」の馬鹿にできない要素は、これには劇場版があり、しかもコンスタントにヒットを記録してるという点である。
こういう成功事例は米国型マーケティングにあまり多くなく、日本ならではといえるかもね。
基本、「ドラえもん」を見てる子供たちはひとりで映画館に行ける年齢じゃないと思うので、多くが親同伴。
思うに、ここでカギを握ってるのは、子供よりむしろ親の方なんじゃないか?
「子供と遊ぶ」という家族サービスにおいて、親にしてみれば映画館に行くというのはコスパがよく、かなり楽な部類である。
だから親の方が積極的に子供を映画館に連れていこうとするわけで、しかし親の多くは子供のトレンドとかよく知らんし、ついつい老舗ブランドである「ドラえもん」に頼っちゃうのよ。
そもそも親が知ってるものって、あとは「コナン」「クレヨンしんちゃん」「ワンピース」「プリキュア」、そのへんぐらいが限界。
でさ、制作側もそのへんの事情をよく分かってるし、これが
「いかにして親の心を掴むか」
という重要なプレゼンの機会として、そりゃもう全力で劇場版を作ってくるのさ。

特に「クレヨンしんちゃん」の映画は、オトナにこそ刺さる内容が多い

実際、子供向けアニメの劇場版って、確かに面白いんだよなぁ・・。
世のお父さんお母さんもそのへんをよく分かっており、
「あ、〇〇の新作が公開されるのか・・。
見たいな。
よし、今度の休みに子供連れて見に行こう

という流れになってるんだと思う。
大体、昭和の漫画である「ドラえもん」の劇場版が、令和になってもヒットしてるということ自体、現象としては少しおかしくない?

「ドラえもん」ではお馴染み「土管のある空き地」、こんなの令和に存在するか?

こうして今なお続く「ドラえもん」人気自体が、もはや親主導の現象としか考えられないわけよ。
たとえば「仮面ライダー」シリーズにしても、あんな古い特撮コンテンツが今なお人気を維持してる理由は、意外とお母さんがイケメン目当てで見てるからだ、という話を聞いたことがある。
やはり子供市場のカギを握ってるのは、子供よりむしろオトナの方(大きなオトモダチも含む)なんだよね。
だからこそ、「子供だまし」な内容のものなんて作ろうもんなら、それこそ鑑賞眼のある親御さんの信頼を失い、そのブランド力は失墜してしまうわけだ。

「サザエさん」

で、私が個人的に期待したいのは、劇場版「サザエさん」の制作である。
皆さんは、見たくない?

・カツオが恐竜の子供を育てる劇場版
・ワカメがタイムリープする劇場版
・サザエさんとマスオさんがオトナ帝国に引きこもってしまい、タラちゃんがそれを救出にいく劇場版
・サザエさん一家がループ世界に閉じ込められてしまい、唯一それに気付いた波平が奔走し、一家を危機から救う劇場版

それこそ、ネタはいくらでもあると思うんだわ。

奔走する波平①
奔走する波平②

ただ、こういうのは長谷川町子事務所とのライセンスの問題がねぇ・・。
やはりこれは国民的コンテンツだけに、そのブランドは保守色が強いものである。
とはいえ、保守であるからこそイジりたくなるのが人間の業というもので、ネット上ではあらゆるところで「サザエさん」イジりが見受けられる。

こうしてイジられまくってるの見ると、まだまだ「サザエさん」はオワコンではないな、と。
ならば別にお笑いに走らなくてもいいから、たとえば「のんのんびより」の劇場版みたいなテイストで、一家が沖縄とかに行って休暇を過ごす、みたいなアットホームな企画で十分なんだよ。
とりあえず一回試してみて、興行収入を測ってみればいい。
10億ぐらいクリアするんじゃないかな?
そこで長谷川町子事務所が「イケる!」と手応えを掴めば、顔色を伺いつつ次はタイムリープ編だね。

劇場版「時をかけるサザエ」

これは私の持論だが、保守的なブランドほど革新の手を入れた時に爆発的な飛躍を見せるものである。
たとえば、「CHANEL」というブランドがあるだろ?
あれって、本来は保守的なデザインのスーツを売りにしたブランドだったんだ。
ところが、ある時期からカールラガーフェルドというブッ飛んだデザインをする人がチーフデザイナーになった途端、それまでオワコンと認識されてたCHANELがモードブランドとして大復活を遂げたのよ。

元祖「シャネルスーツ」を着た、ブランド創設者ココ・シャネル
故カールラガーフェルド(左)と現在の「CHANEL」

私は「サザエさん」って、CHANEL以上のポテンシャルを秘めてると思うんだけどね。

細田守か原恵一あたり、劇場版「サザエさん」やってくれんかなぁ・・。


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