記事一覧
世界は闇で満ちている ⑥
慰労会の二次会が終わり店を出ようとした。
「また機会があれば店に来て。話しやすいから楽だし。」
「わかった。また来れたら来るよ。」
「名刺とかないの?」
僕は財布に入ってた少し汚れてる名刺を渡した。
「この電話番号、個人のだから気にせず登録して。」
「ありがと。」
愛想の無い彼女は少しだけ笑って名刺を受け取った。
基本僕は人見知りをしない。
子供の時からお調子者で、目立つ存在。
だから僕
世界は闇で満ちている ⑤
誰の電話番号かもわからないまま
俺はイライラしながら公衆電話のボタンを押した。
解離している僕は少しだけ自分の身体に戻れる
気がした。
「もしもし…」
聴き慣れた居心地のいい声。
解離してる身体がより浮遊感を感じ、僕は意識が飛んだ。
凄い耳鳴りで頭がクラクラする。
必死に目を開けたがそこは見慣れない景色だった。
2m四方の部屋に、見るからに重そうな扉がついている。扉の上には小窓。僕は泥酔状態
世界は闇で満ちている ④
僕の中の俺は言う。
「昨日買ったロープを上手く使えよ」
「マリナとユアを騙せ」
「お前が幸せになるのは許さない」
6月の蒸し暑さの中、終着点のわからない歩道をひたすら歩く。何時間歩いたのか…
見えない糸に操られながらただ歩く。
でもこれだけは何となくわかった。
「死ぬかも」
僕の中の俺が手招く様に「死」へ誘導しているのか、身体の自由は無い。
もう完全に俺。
俺の中の僕は空蝉…
泣く事も叫ぶ
世界は闇で満ちている ③
「何飲む?」
「ウィスキーのロック」
「若いのに渋いの飲むんだ」
「若くないよ。もう35だし」
グラスに氷を入れてウィスキーを注ぐ。
3回転半混ぜたあと僕の前にグラスを置いた。
幹事の僕はやっと一息ついた。
後は聞きたくもない会話とカラオケを盛り上げるだけと、背もたれに身体を預けながらタバコを口に咥えた。
「お疲れ様。大変だね60人の大人をまとめるのは」
「ま、仕事だししようがないよな」
「
世界は闇で満ちている ②
本来であれば今日実家に帰る予定だった。
母の誕生日のお祝いと彼女との入籍の挨拶も兼ねて。
彼女はバツイチで子持ち。
3歳の女の子、ユアがいる。
彼女、マリナと出会ったのは10ヶ月前
僕の勤める会社の慰労会にコンパニオンとして
来ていた。
他のコンパニオンと違って気怠そうにビールを注ぎ
愛想振りまく事もなく淡々と仕事をこなす。
そんなマリナに何故か興味を持った。
慰労会も終わりコンパニオン
世界は闇で満ちている ①
6月3日
母の誕生日。
梅雨前線の影響で曇り空。
雲の切れ目に日足。
それを解離している僕が終焉迎えるように
見ている。
僕の身体は何処へ行くのか。
見た事のある懐かしい景色を微かに感じながら
ただただ歩く。
「もうちょっと上手くやれよ」
「使えねーなお前は」
俺が言う。
いつからだろう…僕が俺になったのは