見出し画像

世界は闇で満ちている ⑦

マリナの店にプライベートでも行く様になり、行く回数が増える度にマリナの表情も変わった。
自意識過剰ではないが他の席では相変わらず気怠そうに愛想の無い接客。
ドリンクを貰うわけでも無くただ接客の時間が
終わるのを待つだけ。

マリナが席に来るまで他の子が僕の席に。

「サキです。よろしくお願いします。」

サキはマリナが唯一心を開いている同僚らしい。

「中西さん最近良く来ますね?マリナちゃん喜んでたよ。」
「あははは、なんだろう、愛想の無い子だけどなんか面白いな。マリナは。」

サキは驚いた表情をした。

「中西さん、変人…」
「そっか?」
「だってマリナちゃん喋らないし、態度悪いって
たまにクレーム来るし…」
「そりゃ来るよ、あの接客じゃ。」

と、言いサキと2人で笑った。
しばらくしてマリナが僕の席に来た。
サキは気を使う様に

「じゃ、2人で楽しんで。」
「サキも残って飲めば?マリナが楽に飲める方がいいし。」
「うん。中西さんが良ければサキちゃんも一緒に飲も!」

結局3人で閉店まで飲んだ。
マリナもサキを交えて飲む事でより心を開いた。
バツイチ、子持ち、ユアと言う2歳の女の子とアパート暮らし。
前の旦那とはユアが産まれてすぐに浮気が原因で別れたらしい。
昼間は保育園に預けて昼の仕事をし、夜は飲み屋街にある託児所にユアを預けて夜の仕事。
そんな毎日を過ごす事に疲れきってる。
前の旦那の浮気で人間不信になったらしい…

夜の街の華やかなイメージの世界とは違い
夜の街に染まるしかない女性も居る。
僕は店を出てため息混じりに煙草を吸った。

「中西さん!」

振り向くとマリナが慌ただしく閉店後の店から出てきた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?