メガネ

解離性同一性障害の僕。 まったく記憶にない事で人生終わります。 僕が僕の時に少しづつ載…

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解離性同一性障害の僕。 まったく記憶にない事で人生終わります。 僕が僕の時に少しづつ載せます。

最近の記事

世界は闇で満ちている 11

サキの運転する車はB級グルメの会場から やや離れた場所に着いた。 誘導する警備員の指示に従い停車した。 ここから5分くらいシャトルバスでの移動らしい。 車から降りてシャトルバスを待つ事に。 マリナはユアと手を繋ぎ僕を指さした。 「ユア見てメガネ」 「あ、ホントだ‼︎メガネ‼︎」 僕がメガネをかけているからか、あだ名はメガネになった。 あだ名をつけて僕とユアの壁を取り除く作戦。 マリナの母親の姿に少し感心した。 「ママ、抱っこ‼︎」 シャトルバスを待つ大人の人数が嫌な

    • 世界は闇で満ちている ⑩

      「今度の日曜日時間ある?」 「どうした?いきなり。」 「サキちゃんと私でB級グルメに行こ!ユアも連れて行くし!」 なるだけ店以外で会わない様にしていたが 心を開いてくれたマリナの言葉が嬉しかった。 「いいよ!一緒に行こう!」 「なら時間またLINEする!」 と言いながらマリナは小走りに走って行った。 多分、ユアを預けている託児所だろう。 僕はタクシーを拾い家路に着いた。 タクシーの中でユアに会っていいのか…冷静に考えた。父親の存在を知らないまま育っているユアに、軽い気持

      • 世界は闇で満ちている ⑨

        重い扉は映画のワンシーンで見た独居房の様に静かに開いた。 「中西さん起きましたか?」 その言葉と同時に男性が入ってきた。 床に座っている僕をジッと見つめ 「…やっぱりヨシキや!わかるか?俺! 平碰(ヒラバエ)よ!」 一瞬潮の香りがし 頭の中が幼少期の頃の記憶に埋め尽くされた。 海辺の小さな田舎町で野球をしている。 半袖、半ズボンで汗ビッショリになりながら ボールを日が暮れるまで追いかけ回した。 その中に3歳年上の隣の地区のお兄ちゃんがいた。 野球が上手く面白い。歳下に

        • 世界は闇で満ちている ⑧

          鉄格子の外には中連の窓。 窓の下に行き来してる車が見える。 少し目線を上げると見覚えのある道路標識。 標識は仕事中良く通っていた地名と高速道路が記されていた。 「ゔ〜わ〜」 部屋の隣から鉄格子をすり抜け声が聴こえた。 耳を澄ますと一定のリズムで声が鳴る。 「ゔぅ〜」 「クソがどいつもこいつも…」 呻き声と何か文句を言っている。 隣に居る人に何か尋ねた所で無駄だと直感でわかった。冷静になって記憶を差か戻ったが何ひとつ思い出せない。 どのくらい時間が経っただろう。 時計も

        世界は闇で満ちている 11

          世界は闇で満ちている ⑦

          マリナの店にプライベートでも行く様になり、行く回数が増える度にマリナの表情も変わった。 自意識過剰ではないが他の席では相変わらず気怠そうに愛想の無い接客。 ドリンクを貰うわけでも無くただ接客の時間が 終わるのを待つだけ。 マリナが席に来るまで他の子が僕の席に。 「サキです。よろしくお願いします。」 サキはマリナが唯一心を開いている同僚らしい。 「中西さん最近良く来ますね?マリナちゃん喜んでたよ。」 「あははは、なんだろう、愛想の無い子だけどなんか面白いな。マリナは。」

          世界は闇で満ちている ⑦

          世界は闇で満ちている ⑥

          慰労会の二次会が終わり店を出ようとした。 「また機会があれば店に来て。話しやすいから楽だし。」 「わかった。また来れたら来るよ。」 「名刺とかないの?」 僕は財布に入ってた少し汚れてる名刺を渡した。 「この電話番号、個人のだから気にせず登録して。」 「ありがと。」 愛想の無い彼女は少しだけ笑って名刺を受け取った。 基本僕は人見知りをしない。 子供の時からお調子者で、目立つ存在。 だから僕の周りにはいつも誰かが寄って来る。 マリナの目にはどう映ったんだろうか。 次

          世界は闇で満ちている ⑥

          世界は闇で満ちている ⑤

          誰の電話番号かもわからないまま 俺はイライラしながら公衆電話のボタンを押した。 解離している僕は少しだけ自分の身体に戻れる 気がした。 「もしもし…」 聴き慣れた居心地のいい声。 解離してる身体がより浮遊感を感じ、僕は意識が飛んだ。 凄い耳鳴りで頭がクラクラする。 必死に目を開けたがそこは見慣れない景色だった。 2m四方の部屋に、見るからに重そうな扉がついている。扉の上には小窓。僕は泥酔状態の様にふらつきながら何とか扉の前に立った。 ドアノブを回すが開かない。小窓の外を

          世界は闇で満ちている ⑤

          世界は闇で満ちている ④

          僕の中の俺は言う。 「昨日買ったロープを上手く使えよ」 「マリナとユアを騙せ」 「お前が幸せになるのは許さない」 6月の蒸し暑さの中、終着点のわからない歩道をひたすら歩く。何時間歩いたのか… 見えない糸に操られながらただ歩く。 でもこれだけは何となくわかった。 「死ぬかも」 僕の中の俺が手招く様に「死」へ誘導しているのか、身体の自由は無い。 もう完全に俺。 俺の中の僕は空蝉… 泣く事も叫ぶ事も出来ない空蝉… 「生きたい?」 僕でもない、俺でもない声が聴こえた。

          世界は闇で満ちている ④

          世界は闇で満ちている ③

          「何飲む?」 「ウィスキーのロック」 「若いのに渋いの飲むんだ」 「若くないよ。もう35だし」 グラスに氷を入れてウィスキーを注ぐ。 3回転半混ぜたあと僕の前にグラスを置いた。 幹事の僕はやっと一息ついた。 後は聞きたくもない会話とカラオケを盛り上げるだけと、背もたれに身体を預けながらタバコを口に咥えた。 「お疲れ様。大変だね60人の大人をまとめるのは」 「ま、仕事だししようがないよな」 「でも幹事やっても給料変わらないでしょ?乾杯の挨拶しても社長、常務の太鼓持ちしても

          世界は闇で満ちている ③

          世界は闇で満ちている ②

          本来であれば今日実家に帰る予定だった。 母の誕生日のお祝いと彼女との入籍の挨拶も兼ねて。 彼女はバツイチで子持ち。 3歳の女の子、ユアがいる。 彼女、マリナと出会ったのは10ヶ月前 僕の勤める会社の慰労会にコンパニオンとして 来ていた。 他のコンパニオンと違って気怠そうにビールを注ぎ 愛想振りまく事もなく淡々と仕事をこなす。 そんなマリナに何故か興味を持った。 慰労会も終わりコンパニオンに連れられ 二次会へ行く。 幹事だった僕は社長、常務、協力会社の方々を 席に座

          世界は闇で満ちている ②

          世界は闇で満ちている ①

          6月3日   母の誕生日。 梅雨前線の影響で曇り空。 雲の切れ目に日足。 それを解離している僕が終焉迎えるように 見ている。 僕の身体は何処へ行くのか。 見た事のある懐かしい景色を微かに感じながら ただただ歩く。 「もうちょっと上手くやれよ」 「使えねーなお前は」 俺が言う。 いつからだろう…僕が俺になったのは

          世界は闇で満ちている ①