見出し画像

世界は闇で満ちている ⑤

誰の電話番号かもわからないまま
俺はイライラしながら公衆電話のボタンを押した。
解離している僕は少しだけ自分の身体に戻れる
気がした。

「もしもし…」

聴き慣れた居心地のいい声。
解離してる身体がより浮遊感を感じ、僕は意識が飛んだ。

凄い耳鳴りで頭がクラクラする。
必死に目を開けたがそこは見慣れない景色だった。
2m四方の部屋に、見るからに重そうな扉がついている。扉の上には小窓。僕は泥酔状態の様にふらつきながら何とか扉の前に立った。
ドアノブを回すが開かない。小窓の外を覗くと、
慌ただしく動く看護婦さんらしき人がいる。

「すいません」
 
誰も気付かない。
僕はもっと大きな声を出した。

「すいませーん!あのー何処ですかー!」

それでも誰も僕には気付かない。
仕様がなくその場に座り込んだ。
相変わらず耳鳴りがする。頭が二日酔いの様に痛い。自分が何処に居るかもわからない。
唯一わかるのは僕が僕の身体でいる事。
解離している訳でもなく自分の意志で身体を動かせる。

ゆっくり周囲を見渡すと簡易式のトイレもある。
扉と逆方向には鉄格子。

「なんだ此処は…」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?