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世界は闇で満ちている ⑧

鉄格子の外には中連の窓。
窓の下に行き来してる車が見える。
少し目線を上げると見覚えのある道路標識。
標識は仕事中良く通っていた地名と高速道路が記されていた。

「ゔ〜わ〜」

部屋の隣から鉄格子をすり抜け声が聴こえた。
耳を澄ますと一定のリズムで声が鳴る。

「ゔぅ〜」
「クソがどいつもこいつも…」

呻き声と何か文句を言っている。
隣に居る人に何か尋ねた所で無駄だと直感でわかった。冷静になって記憶を差か戻ったが何ひとつ思い出せない。
どのくらい時間が経っただろう。
時計も無く時間もわからない。
隣から聴こえる声に嫌気がさした。
この鉄格子とコンクリートに細工した空間には嫌気さが増す。耳を塞ぐ指を上手くくぐり抜け、時計の秒針の替わりに呻き声だけ一定のリズムで鳴る。
自分がこの部屋に居る理由がわからない。

「ガチャ」

プライバシーも関係無く重そうな扉が開いた。

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