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世界は闇で満ちている ③
「何飲む?」
「ウィスキーのロック」
「若いのに渋いの飲むんだ」
「若くないよ。もう35だし」
グラスに氷を入れてウィスキーを注ぐ。
3回転半混ぜたあと僕の前にグラスを置いた。
幹事の僕はやっと一息ついた。
後は聞きたくもない会話とカラオケを盛り上げるだけと、背もたれに身体を預けながらタバコを口に咥えた。
「お疲れ様。大変だね60人の大人をまとめるのは」
「ま、仕事だししようがないよな」
「でも幹事やっても給料変わらないでしょ?乾杯の挨拶しても社長、常務の太鼓持ちしても」
「面白いなその発想。確かにお金は貰えない。でも何処の会社もそんなモンだろ」
「私は無理。いくらお金を貰ってもやりたくない」
そう言いながら咥えてるタバコに火をつけてくれた。
僕はお金を貰っても水商売はできない。
訳の分からない酔っ払いの相手は嫌だ。
マリナから見る僕と
僕から見るマリナの仕事は特に変わりはない。
「名前なんて言うの?」
「…マリナ」
「逆にマリナの仕事はお金貰ってもできないな」
「…私もやりたくない…こんな仕事」
「?」
「…元々人見知りだし、お酒飲まないとしゃべれないし、お金いるから仕方ないし…」
僕は特に深入りする事なくウィスキーを飲んだ。
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