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建築

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ウェブ上での編集について考えていること。

『建築家のためのウェブ発信講義』を出したのは3年前になるのだけど、その間も色々とウェブ発信と編集のことは、考え続けていて、ふわふわとしていたものが、徐々に明確になりつつあるような感覚があります。

この書籍では、建築家の活動はそれぞれ既に固有のもので、それ自体に発信の種は眠っている、という前提で書かれたものだったかあと回顧されるのだけど、今もそれは変わっていません。

最近思ったのは、建築家の商品

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「バラバラだけど調和している」場づくり——OpenAに学ぶ、多様性の空間【建築家・馬場正尊さん】

「バラバラだけど調和している」場づくり——OpenAに学ぶ、多様性の空間【建築家・馬場正尊さん】

何かを失うことには、ただ「欠落」があるだけなのでしょうか?

建築家の馬場正尊さんはリノベーションブームの仕掛け人として、2000年代から精力的に活動されてきました。「東京R不動産」の立ち上げをはじめ、建築設計や都市計画、執筆など多岐に渡る活動を続ける業界のトップランナーです。

一方で馬場さんは30代半ばの頃に自身の視力の悪化に気がつき、約15年が経った現在は小さな文字を読んだり人の顔を瞬時に識

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誰も教えてくれない「有料noteを売るべきではない理由」

誰も教えてくれない「有料noteを売るべきではない理由」

こういうのnoteで書くのは我ながらどうかと思うんですが、noteユーザーの方は知っておいた方がいい話なので……。noteを信用して書いておきますw

ぼくはこれまで、note上でコンテンツを販売し、ざっくり1億円くらい稼いできました。累計部数でいうと、ゆうに1万部はコンテンツを販売しているはずです。

で……。

これめっちゃ後悔してるんですよ。

なぜかわかります?

「手数料が高いから?」

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建築生産マネジメント特論講義1──日本の住宅生産の流れ

建築生産マネジメント特論講義1──日本の住宅生産の流れ

本稿は、東京大学大学院にて開講中の権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。

450万戸の住宅不足に対し、住宅供給能力は年間10万戸。1945年、終戦後の日本は空前の「住宅不足」に陥っていた。この国家的危機にどう応えるか、その試行錯誤の中から、日本の住宅産業は立ち上がったと言って良い。

建築生産マネジメント特論講義1「日本の住宅生産の流れ

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先日公開した記事に参考文献を追記しました。ご活用ください。

https://note.mu/kentaro5a18/n/na55fd9af64a6

建築生産マネジメント特論講義2──「プレハブ住宅」の展開(前編)

建築生産マネジメント特論講義2──「プレハブ住宅」の展開(前編)

本稿は、東京大学大学院にて開講中の権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。

建築学における「プレハブ」は、「プレハブリケーション(Prefabrication)」の略語である。その語の指し示す通り、事前に作っておくこと、転じて敷地で組み立てる建設方式を指す。上に示した二つのイメージは、生産システムと建築が地理的に分離したことを端的に示すも

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建築生産マネジメント特論講義2──「プレハブ住宅」の展開(後編)

建築生産マネジメント特論講義2──「プレハブ住宅」の展開(後編)

本稿は、東京大学大学院にて開講中の権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。

前編で見てきたように、「プレハブ住宅」が成立してゆく流れとは、「大量生産」という近代的な工業生産の方法論を「住宅」へと適用しつつ、これを市場に受け入れられる「商品」へと変容させていくプロセスであった。ここで最初に概観したプレハブの思想の成立過程に立ち返ろう。そこで

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建築生産マネジメント特論講義3──在来構法と工務店、その未来

建築生産マネジメント特論講義3──在来構法と工務店、その未来

本稿は、東京大学大学院にて開講された権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。

前回の講義ではプレハブ住宅の技術史的展開を概観した。それは部品の互換性技術に裏打ちされた「大量生産」という夢の実現であった。戦後の住宅不足を解決し、高度な住宅のプレハブ化に成功した日本は、世界的にも稀な工業化住宅先進国といえる。

しかし、改めて日本の住宅市場を

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建築生産マネジメント特論講義4──沖縄の木造住宅、喪失と再生

建築生産マネジメント特論講義4──沖縄の木造住宅、喪失と再生

本稿は、東京大学大学院にて開講された権藤智之特任准教授による講義『建築生産マネジメント特論』を、一部テキストベースで公開するものです。

前回まで、戦後住宅史、プレハブの歴史、工務店の登場と、戦後日本の住宅生産に関連する大きな見取り図を順に見てきた。結論の一つは、戦後日本における木造在来構法システムの強靭さを確認したことであろう。

とはいえそれは、あくまで木造在来構法システムの及ぶ範囲の理解にと

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図面について___まだ2D図面を描くとしたら、その理由___

図面について___まだ2D図面を描くとしたら、その理由___

1.視点としての図面

 2D図面(以降、図面と呼びます)の伝達メディアとしての役割は終わりつつあると言えるでしょう。発注者に対するプレゼンテーションはほぼ3Dメディアに移りつつありますし、システム化されたハウスメーカーの設計CADは3Dがベースです。ハード面の条件が整えばその他の施工発注・監理もデジタル3Dモデルがベースになっていくでしょう。私はここで、模型やデジタル3Dモデルを過小評価したり、

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設計課題の取り組み方

設計課題の取り組み方

はじめに自身の設計事務所を立ち上げるとほぼ同時に設計演習のTAや非常勤講師を拝命し、これまで約7年間継続的にエスキスやクリティークを行ってきたが、「そもそも課題にどう取り組んだらいいのかわからない」という様相の学生を数多く目にしてきた。まぁ無理もない。思えば自分も母校の建築学科に進学して初年度(2年生)はまったく手の動かし方がわからなかった。しかし3年生になってから、プログラムから空間をつくるOM

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