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無題(幸せ・教団X)

幸せです。なんて幸せでしょう。
わたしはブランド品にほとんど興味がありません。いただいたらありがたく使います。自分では手に取りません。それを持っていてもわたしは輝かないし、わたしが持っていてもそれは輝かないと思うからです。わたしはレモンの刺繍が入った黄色いトートバッグを持っています。幸せです。ブランドに詳しく、よく似合うあの子も、幸せであることをわたしは知っています。
わたしにはパートナーがいません。必要とも不要とも思いません。「ある状態」がないのではなく、「ない状態」があるのではなく、ただいません。ひとりでベッドに横たわったままカーテンを開けて青空を眺めたり、西日が射して本の背表紙を照らす時間を待ったりしています。幸せです。食器を買うときはパートナーの分も合わせて買う彼女が幸せであることを、わたしは知っています。
わたしはわたしのやさしさを知っています。わたしのやさしさがあなたのやさしさと違うこと、あなたのやさしさがわたしのやさしさと違うことを知っています。幸せです。
わたしはわたしの幸せを知っています。あなたの幸せを理解できるとは思いませんが、あなたが幸せであることは知っています。幸せであるといいなと思います。
そう思えて幸せです。

🍂

前の仕事に行かなくなったときのことを振り返る。
前日は仲のいい友達と先輩と会った。変わらないねとも、元気ないね、らしくないよ、とも言われた。
当日の朝、出勤する準備をして母に電話をかけた。映画を観に行くと言っていた。
図書館で予約していた又吉さんの「月と散文」をようやく借りられた。
いろんなことが心に忍び込んだんだろうな〜と思う。
久しぶりに自分をわかってくれている人に会ったこと。遠くで過ごす、変わりない母の日常。又吉さんの憂鬱、自分と向き合う姿勢。9月の風のなかに秋の気配があったこと。涙が止まらなくて前に進めなかった。
仕事を辞めた10月、本とラジオとYouTubeでお笑い芸人の兼近さんを知った。
兼近さんがいなかったら笑えない日があったと思う。悲観的になるのを止められなかったと思う。日々がもっと味気なかったと思う。
これらがなければわたしは自分を救えなかった。よかった。
ありがとうございました。

誰にでも幸せや救いがあって、比べるものでも、比べられるものでもないともわかっている。でも、わたしは自分の手の中にある幸せや救いを眺めて、絶対的に、自分にとってのそれがこれでよかったと思い、感謝する。

これから大小問わずいろんなものに出会うだろうと思う。小さな出会いの連続の中に、大きなものがあるだろうと思う。最初から大きかったり、自分で大きくしたりすると思う。又吉さんも兼近さんも大か小かわからない。全てのものは変化の流れの中にあって、わたしは様々なものを胸に抱えつつ、少しずつ腕の中からこぼれていくのを自覚しながら気づかないふりをして、流れが少しいい方に向かえばいいなと眺めている。

これを読んでいる人、あなたが幸せでありますように。あなたの幸せに気づけますように。あなたの幸せがあなたを幸せにしてくれますように。あなたの幸せとわたしの幸せが重なるところがあれば、友だちになりましょう。共に生きましょう。


おわり

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