徳久 望/Nozomi Tokuhisa

心が柔らかくなる瞬間を。

徳久 望/Nozomi Tokuhisa

心が柔らかくなる瞬間を。

マガジン

  • 心が柔らかくなる瞬間を。

    写真と言の葉。フォトエッセイ。

  • お酒と徒然。

    ひとりで呑みに行くのが好きだ。いや無論、いつの間にかひとりでは、なくなっている。独りの時間に考えていた事が隣りでグラスを傾ける人と共感しあう話になる。独りが1人になり2人になり、ふたりになる。そんな風にお酒の席で出逢った時間を綴る。

  • 弾き語り

    例えば夕暮れのベランダで。例えば眠れない夜の窓辺で。例えばあなたの隣で。爪弾く歌。

  • 現代短歌

    31文字で日常の秘密を。

  • 映画のような日常

    映画のワンシーンのような日常のキリトリ。

記事一覧

真夏に口遊むラストクリスマス。

真夏に口遊むラストクリスマス。 気づけば5年くらいの付き合いになるイギリス人の女の子。 辿々しい日本語と辿々しい英語。 歌うと喜んでくれるから 何度も歌った。ラスト…

蝶とネクタイ

「生まれた事に意味なんてないのにさー。 生まれてきた意味なんて考えて世界発展させてきた人類ってちょーゆーのーじゃね?」 たまたま寄った居酒屋で絡んできたデリヘル…

手紙に夢を。

文通をしてみたいな。 指を栞にして本から顔を上げる午後。 だってだって。 その本の一説に。 “しゃべる言葉は、どんどん流れてしまうけど 文字になってやってくる手紙…

信じる。は、寂しいに似ているような気がする。

「ほんとに信じるって心の中で黙って思う事じゃないかな。」 ぽつんとその人は、言って遠い目をする。 信じる。には、人それぞれの”信じる”があるような気がする。 小…

地球が裏返ったら何をする

「地球が裏返ったらどうしよう。みたいな事言ってるようなもんだよ。」 その酔っぱらいは、そう言って考えすぎだよと笑う。 そっか、そういうもんか。と、頷きながら 考…

君が知っているこの世界の遊び方を教えて。

夏にインストの楽曲を聴きながら歩くと蝉が歌ってくれるみたい。 蝉ってやっぱりずっと歌ってたんかー。 そんな事にときめきながらスーパーまでの道を歩く。 いつもの道…

待ち合わせは、映画館。

忙しい、忙しい。 心がなんだか忙しい。 そんな気がしたので 映画を見にいく事にした。 何の情報も知らずただ時間帯が合うからという理由で映画を選ぶ。 ルックバック…

深夜のファミレスと旅行鞄。

深夜のファミレスで本を読む事が好き。 そう言うと なんだかカッコつけているみたいだけど なんとも言えない安心感があるの。 読もうと思いながら先延ばしにしていた本を…

お酒を”詩”だと言うと、酔っ払ってると君は思うかしら。

「色に例えると透明じゃない?」 遠くに引っ越した知り合いが手土産で持ってきたバーボンウイスキーを飲みながら、そんな矛盾した事を呟いていた。 それなのにも関わらず…

朝焼けに繋がる夜の香りは。

夜から朝に駆ける空気の味が秋だね。 そんな事を話す朝焼けに繋がる夜道。 「梅雨なげぇーよーー。」 そんな風に 感傷を誤魔化して笑う人。 「夏ってさ、終わりと始ま…

「今日は、海が青いだろうね。」

空を見て 「今日は、海が青いだろうね。」って、ちょっと遠出をしてお昼を食べに行く午前11時にその人は、言って。 今年まだ一度も見ていない海をぼんやりと想像した。 …

ラムロックと浴衣が似合う人

「今日お祭りだったんですか?」 最近知り合った人が浴衣を着ていたのでそう尋ねた。 「いや、違うよー。友達が今年の浴衣買ったから一緒に浴衣でお出かけしようって話に…

午後七時の西日と瓶ビールが好きな人

梅雨がもうすぐ明けるねって、そんな話をビールが好きな人と話していたバーカウンター。 飲む時間帯は、変わらないのに 明るい時間に飲めるってだけで幸せだねって。 季…

上海からのピアニスト、打上花火、月光の行く先。

上海からきたピアニストと米津玄師を歌った昨夜。 最近 中国の人や韓国の人がよく来ている気がする。 英語は、万国共通で使えるものと思っていたけれど 使えない事も結構…

塩ラムネと夏の空。

家を出るとご近所さんから飴が沢山入った袋をもらった。塩ラムネ。自分じゃ買わない飴だ。 出かける最中だったので ありがとうございます。と、言いながら先を急ぐ。 「さ…

いつかの感情やその時間もそっと色を落として。

あちぃ。夏だー。夏が来たのかー。と汗を拭いながら眺める入道雲。 すげぇ。空ってすげぇ、と、立ち止まりパシャリ。 毎日似たようで違う景色を映しながら そこにいつか…

真夏に口遊むラストクリスマス。

真夏に口遊むラストクリスマス。

真夏に口遊むラストクリスマス。
気づけば5年くらいの付き合いになるイギリス人の女の子。
辿々しい日本語と辿々しい英語。
歌うと喜んでくれるから
何度も歌った。ラストクリスマス。
あなたのテーマソング。
グレンフィディックのロックを傾けながら口遊む。
アイラブジョージマイクー。と彼女は、笑う。
あまり上手に喋れなくても一緒に居ると言ってることがわかるから不思議だ。
気付けば日本語と英語が入れ替わるの

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蝶とネクタイ

蝶とネクタイ

「生まれた事に意味なんてないのにさー。
生まれてきた意味なんて考えて世界発展させてきた人類ってちょーゆーのーじゃね?」

たまたま寄った居酒屋で絡んできたデリヘル嬢は、そう言って、炒飯を頼んでいる。

そして
何故か瓶ビールのグラスが私の目の前にも置かれている。

「そっすね。あ、ざっす。いただきます。」と、乾杯をしながら。

持ち前の人間力を彼女は、発揮する。

褒めてみるとうるせぇ殺すぞと睨ま

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手紙に夢を。

手紙に夢を。

文通をしてみたいな。
指を栞にして本から顔を上げる午後。

だってだって。

その本の一説に。

“しゃべる言葉は、どんどん流れてしまうけど
文字になってやってくる手紙は、その人自身の近い所に触れてしまう”

そのように書かれていて。
そうだよな。そうだよな。と、共感したから。

文字。

しかもそれを、その人が自分で綴っていく手紙。

例えば
それが読めないくらいに下手な文字だとしても
くすくす

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信じる。は、寂しいに似ているような気がする。

信じる。は、寂しいに似ているような気がする。

「ほんとに信じるって心の中で黙って思う事じゃないかな。」

ぽつんとその人は、言って遠い目をする。

信じる。には、人それぞれの”信じる”があるような気がする。

小さな弱さが見え隠れする。
スンとした意志を感じる。

信じるは、孤独に似てるような気がする。

信じる。って言葉に君はどんな背景を見ますか?

心の中で黙って想われている人にその想いが届けばいいなとぼんやり思う。

心の中に大切な人が

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地球が裏返ったら何をする

地球が裏返ったら何をする

「地球が裏返ったらどうしよう。みたいな事言ってるようなもんだよ。」

その酔っぱらいは、そう言って考えすぎだよと笑う。

そっか、そういうもんか。と、頷きながら
考えるってどこまで考える事がセンスの良い考え方なんだろって、考える。

ゲシュタルト崩壊。
地球が裏返ってしまうかもしれない。

物事の捉え方って、ひとそれぞれで面白い。

重たく捉えて動けなくなったり
軽く捉えて大目玉をくらったり

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君が知っているこの世界の遊び方を教えて。

君が知っているこの世界の遊び方を教えて。

夏にインストの楽曲を聴きながら歩くと蝉が歌ってくれるみたい。

蝉ってやっぱりずっと歌ってたんかー。

そんな事にときめきながらスーパーまでの道を歩く。

いつもの道に新しい気付き。

そういうものに出逢える事が嬉しい。

毎日にときめいていたい。

そんなときめきは、ふとした瞬間に訪れる。

青い空に浮かぶ入道雲の形に驚いたり
飛行機雲の行方をぼんやりと眺めてみたり。

今ここにしかないものって

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待ち合わせは、映画館。

待ち合わせは、映画館。

忙しい、忙しい。

心がなんだか忙しい。

そんな気がしたので
映画を見にいく事にした。

何の情報も知らずただ時間帯が合うからという理由で映画を選ぶ。

ルックバック。

上映まで少し時間があったので
サイゼリヤに入りちょっとしたツマミとビール2杯と、白ワイン。

鞄に忍ばせた本を読みながらちびちびと。

幸福感に浸る。

あぁーこういう時間の流れ方が好きなんだなぁっと、自分自身に対して気付く。

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深夜のファミレスと旅行鞄。

深夜のファミレスと旅行鞄。

深夜のファミレスで本を読む事が好き。

そう言うと
なんだかカッコつけているみたいだけど
なんとも言えない安心感があるの。

読もうと思いながら先延ばしにしていた本を
リュックに詰め込んでファミレスに行く。

あれを読もう、これを読もうと、詰め込んでいるだけで、不思議と愉しい。

じんわりと重いリュックが高揚感に変わる。

あれも、これも、と、詰めながら
これだけの本を読めるわけがないとわかってい

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お酒を”詩”だと言うと、酔っ払ってると君は思うかしら。

お酒を”詩”だと言うと、酔っ払ってると君は思うかしら。

「色に例えると透明じゃない?」

遠くに引っ越した知り合いが手土産で持ってきたバーボンウイスキーを飲みながら、そんな矛盾した事を呟いていた。

それなのにも関わらず。

「でしょ。ほんとに。そうだね。」と、その人は、頷くのだった。

「まるくて、透明。」
琥珀色の液体を飲みながら、味をそう表現する。

お酒を飲む事が好きなのは、例えばそんな言葉を分け合えるからなのかもしれない。

味に硬さやまるさ

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朝焼けに繋がる夜の香りは。

朝焼けに繋がる夜の香りは。

夜から朝に駆ける空気の味が秋だね。

そんな事を話す朝焼けに繋がる夜道。

「梅雨なげぇーよーー。」

そんな風に
感傷を誤魔化して笑う人。

「夏ってさ、終わりと始まりどっちを夏って言うかで心の位置って少し、見えるような気がするよね。」

そう言うと

同じかもね。と、遠い目をする。

夜風が涼しい。

いや
ほんとはちょっと肌寒い。

そんな些細な事を分け合える距離にいる人との出逢いは、特別な

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「今日は、海が青いだろうね。」

「今日は、海が青いだろうね。」

空を見て
「今日は、海が青いだろうね。」って、ちょっと遠出をしてお昼を食べに行く午前11時にその人は、言って。

今年まだ一度も見ていない海をぼんやりと想像した。

空に海を見るってなんだか不思議だ。

次々に変わりゆく景色。車の窓に潮騒。

人ってどこにいるんだろう。
そんな大袈裟な事を考える。

ラジオから流れてくる懐メロ。
簡単に心は旅に出てしまう。

残念ながら目的地だったお店は、臨時休業

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ラムロックと浴衣が似合う人

ラムロックと浴衣が似合う人

「今日お祭りだったんですか?」

最近知り合った人が浴衣を着ていたのでそう尋ねた。

「いや、違うよー。友達が今年の浴衣買ったから一緒に浴衣でお出かけしようって話になってご飯食べてきた帰りだよー。」

「あ、そうなんすね。お似合いです。ラッキー。得しました。」

なんて会話をしながら

そんな風に
今日という日を楽しんでいいんだなってなんだか心が軽くなる心地がした。

浴衣のお姉さんは
いつものラ

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午後七時の西日と瓶ビールが好きな人

午後七時の西日と瓶ビールが好きな人

梅雨がもうすぐ明けるねって、そんな話をビールが好きな人と話していたバーカウンター。

飲む時間帯は、変わらないのに
明るい時間に飲めるってだけで幸せだねって。

季節が連れてくるそれぞれの幸せが、こんなところに。

ビールが好きな人の言葉に幸せを感じた。

君は、この季節のどんなところに幸せを感じますか?
そんな君の話を聞きたいなって思った。

そうやって人の事を好きになっていきたい。

どんな風

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上海からのピアニスト、打上花火、月光の行く先。

上海からのピアニスト、打上花火、月光の行く先。

上海からきたピアニストと米津玄師を歌った昨夜。

最近
中国の人や韓国の人がよく来ている気がする。

英語は、万国共通で使えるものと思っていたけれど
使えない事も結構あって
そんな時は
翻訳アプリに助けられながら会話をする。

相手の言いたい事や考えてる事を一生懸命に感じとる時間。

同じ日本人と話すより疲れるけれど
人と向き合うって本来は、こんな風に心を遣う事なんだなって思う。

「8月にある日

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塩ラムネと夏の空。

塩ラムネと夏の空。

家を出るとご近所さんから飴が沢山入った袋をもらった。塩ラムネ。自分じゃ買わない飴だ。
出かける最中だったので
ありがとうございます。と、言いながら先を急ぐ。

「さっきもらったんだけど食べる?」

友達に渡すと
舌先で転がしながらこれいいね。って。

今度見かけたら絶対買うわ。って。

その言葉を聞いてなんだか嬉しくなり
人が人に出来る事について想う。

大きな事や目立つ事に意味や価値があるような

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いつかの感情やその時間もそっと色を落として。

いつかの感情やその時間もそっと色を落として。

あちぃ。夏だー。夏が来たのかー。と汗を拭いながら眺める入道雲。

すげぇ。空ってすげぇ、と、立ち止まりパシャリ。

毎日似たようで違う景色を映しながら
そこにいつかの感情やその時間もそっと色を落として。
生きてきた情景が映っていくんだよなぁ。

そんな事を考えながら眺める。

今年はどんな夏になるだろう。

きっと想像通りじゃないんだろうなぁ。
なんて
そんな高揚感を感じながら。
立ち止まる。

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