「今日は、海が青いだろうね。」
空を見て
「今日は、海が青いだろうね。」って、ちょっと遠出をしてお昼を食べに行く午前11時にその人は、言って。
今年まだ一度も見ていない海をぼんやりと想像した。
空に海を見るってなんだか不思議だ。
次々に変わりゆく景色。車の窓に潮騒。
人ってどこにいるんだろう。
そんな大袈裟な事を考える。
ラジオから流れてくる懐メロ。
簡単に心は旅に出てしまう。
残念ながら目的地だったお店は、臨時休業だった。
あらら。と、言いながら道沿いたまたま見つけた食堂に入ってみる。
昭和の匂いがする食品サンプルが並ぶ。
からからと戸を開ける。
扇風機で風を送る店内。
伝う汗、自然にある涼しさを感じながら。
定食を注文する。
ぐるると、お腹が鳴る。
厨房で動き回る
おじいさんおばあさんを眺めながら
この食堂に流れてきた時間を想う。
ゆっくりと味わう店内に
テレビからオリンピックの話題が聞こえる。
昭和と令和がこっそりと繋がる。
続いていく事、変わっていく事。
それぞれは、しっかりと結び目を作る。
「ご馳走様でした。」と、言いながら
お店を出ると、空が青い。
きっと今日の海は、青いんだろうなぁ。
そんな事を呟きながら。
今年初めてのツクツクボウシの鳴き声に耳を澄ました。
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