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心が柔らかくなる瞬間を。

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写真と言の葉。フォトエッセイ。
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蝶とネクタイ

蝶とネクタイ

「生まれた事に意味なんてないのにさー。
生まれてきた意味なんて考えて世界発展させてきた人類ってちょーゆーのーじゃね?」

たまたま寄った居酒屋で絡んできたデリヘル嬢は、そう言って、炒飯を頼んでいる。

そして
何故か瓶ビールのグラスが私の目の前にも置かれている。

「そっすね。あ、ざっす。いただきます。」と、乾杯をしながら。

持ち前の人間力を彼女は、発揮する。

褒めてみるとうるせぇ殺すぞと睨ま

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信じる。は、寂しいに似ているような気がする。

信じる。は、寂しいに似ているような気がする。

「ほんとに信じるって心の中で黙って思う事じゃないかな。」

ぽつんとその人は、言って遠い目をする。

信じる。には、人それぞれの”信じる”があるような気がする。

小さな弱さが見え隠れする。
スンとした意志を感じる。

信じるは、孤独に似てるような気がする。

信じる。って言葉に君はどんな背景を見ますか?

心の中で黙って想われている人にその想いが届けばいいなとぼんやり思う。

心の中に大切な人が

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地球が裏返ったら何をする

地球が裏返ったら何をする

「地球が裏返ったらどうしよう。みたいな事言ってるようなもんだよ。」

その酔っぱらいは、そう言って考えすぎだよと笑う。

そっか、そういうもんか。と、頷きながら
考えるってどこまで考える事がセンスの良い考え方なんだろって、考える。

ゲシュタルト崩壊。
地球が裏返ってしまうかもしれない。

物事の捉え方って、ひとそれぞれで面白い。

重たく捉えて動けなくなったり
軽く捉えて大目玉をくらったり

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君が知っているこの世界の遊び方を教えて。

君が知っているこの世界の遊び方を教えて。

夏にインストの楽曲を聴きながら歩くと蝉が歌ってくれるみたい。

蝉ってやっぱりずっと歌ってたんかー。

そんな事にときめきながらスーパーまでの道を歩く。

いつもの道に新しい気付き。

そういうものに出逢える事が嬉しい。

毎日にときめいていたい。

そんなときめきは、ふとした瞬間に訪れる。

青い空に浮かぶ入道雲の形に驚いたり
飛行機雲の行方をぼんやりと眺めてみたり。

今ここにしかないものって

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深夜のファミレスと旅行鞄。

深夜のファミレスと旅行鞄。

深夜のファミレスで本を読む事が好き。

そう言うと
なんだかカッコつけているみたいだけど
なんとも言えない安心感があるの。

読もうと思いながら先延ばしにしていた本を
リュックに詰め込んでファミレスに行く。

あれを読もう、これを読もうと、詰め込んでいるだけで、不思議と愉しい。

じんわりと重いリュックが高揚感に変わる。

あれも、これも、と、詰めながら
これだけの本を読めるわけがないとわかってい

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お酒を”詩”だと言うと、酔っ払ってると君は思うかしら。

お酒を”詩”だと言うと、酔っ払ってると君は思うかしら。

「色に例えると透明じゃない?」

遠くに引っ越した知り合いが手土産で持ってきたバーボンウイスキーを飲みながら、そんな矛盾した事を呟いていた。

それなのにも関わらず。

「でしょ。ほんとに。そうだね。」と、その人は、頷くのだった。

「まるくて、透明。」
琥珀色の液体を飲みながら、味をそう表現する。

お酒を飲む事が好きなのは、例えばそんな言葉を分け合えるからなのかもしれない。

味に硬さやまるさ

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朝焼けに繋がる夜の香りは。

朝焼けに繋がる夜の香りは。

夜から朝に駆ける空気の味が秋だね。

そんな事を話す朝焼けに繋がる夜道。

「梅雨なげぇーよーー。」

そんな風に
感傷を誤魔化して笑う人。

「夏ってさ、終わりと始まりどっちを夏って言うかで心の位置って少し、見えるような気がするよね。」

そう言うと

同じかもね。と、遠い目をする。

夜風が涼しい。

いや
ほんとはちょっと肌寒い。

そんな些細な事を分け合える距離にいる人との出逢いは、特別な

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「今日は、海が青いだろうね。」

「今日は、海が青いだろうね。」

空を見て
「今日は、海が青いだろうね。」って、ちょっと遠出をしてお昼を食べに行く午前11時にその人は、言って。

今年まだ一度も見ていない海をぼんやりと想像した。

空に海を見るってなんだか不思議だ。

次々に変わりゆく景色。車の窓に潮騒。

人ってどこにいるんだろう。
そんな大袈裟な事を考える。

ラジオから流れてくる懐メロ。
簡単に心は旅に出てしまう。

残念ながら目的地だったお店は、臨時休業

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ラムロックと浴衣が似合う人

ラムロックと浴衣が似合う人

「今日お祭りだったんですか?」

最近知り合った人が浴衣を着ていたのでそう尋ねた。

「いや、違うよー。友達が今年の浴衣買ったから一緒に浴衣でお出かけしようって話になってご飯食べてきた帰りだよー。」

「あ、そうなんすね。お似合いです。ラッキー。得しました。」

なんて会話をしながら

そんな風に
今日という日を楽しんでいいんだなってなんだか心が軽くなる心地がした。

浴衣のお姉さんは
いつものラ

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午後七時の西日と瓶ビールが好きな人

午後七時の西日と瓶ビールが好きな人

梅雨がもうすぐ明けるねって、そんな話をビールが好きな人と話していたバーカウンター。

飲む時間帯は、変わらないのに
明るい時間に飲めるってだけで幸せだねって。

季節が連れてくるそれぞれの幸せが、こんなところに。

ビールが好きな人の言葉に幸せを感じた。

君は、この季節のどんなところに幸せを感じますか?
そんな君の話を聞きたいなって思った。

そうやって人の事を好きになっていきたい。

どんな風

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塩ラムネと夏の空。

塩ラムネと夏の空。

家を出るとご近所さんから飴が沢山入った袋をもらった。塩ラムネ。自分じゃ買わない飴だ。
出かける最中だったので
ありがとうございます。と、言いながら先を急ぐ。

「さっきもらったんだけど食べる?」

友達に渡すと
舌先で転がしながらこれいいね。って。

今度見かけたら絶対買うわ。って。

その言葉を聞いてなんだか嬉しくなり
人が人に出来る事について想う。

大きな事や目立つ事に意味や価値があるような

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「やさしい天使が降りてきたらきっとあの子は、喜ぶさ。」

「やさしい天使が降りてきたらきっとあの子は、喜ぶさ。」

突然だけど天使っていると思う?

不意に頭を流れていくメロディは、フィッシュマンズ。頼りない天使。

「やさしい天使が降りてきたらきっとあの子は、喜ぶさ。」

私は、なりたいと思う。

なんて。うそ。

でも
そんな正解のないような
どうしようもない話を延々と話せる事が

どうしようもなく大切なものを教えてくれるような気がする。

誰にでも話せるわけじゃない話を
話せる人って貴重だ。

君とならそ

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そんな綺麗事が本当だったりもして。

そんな綺麗事が本当だったりもして。

七夕の夜を超えて。

会いたい人に会えましたか?

会いたい人がいるってそれだけで幸せだよなぁ。

なんて
そんな事を思いながら、帰り道。

コンビニに立ち寄って缶チューハイ片手に見上げる夜空。

会いたい人がいる。って

出逢えている事なんだよなぁ。

ここに居なくてもその人の事を考える時間。
そういうものに人は心を教えてもらったりして。

七夕の夜
そんな風に会いたい人がいる。
そんな出逢いが

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空の青に魅入ったり、風に心を委ねたり、雨の音に耳を澄ましたり。

空の青に魅入ったり、風に心を委ねたり、雨の音に耳を澄ましたり。

人間ってすべての事に全力で向き合えるほどの力を持っているわけじゃないんだなぁって。

ついつい運動不足になりがちな日常。
意識して筋トレをしつつ
限界を迎えながら目の前の事だけにしか集中出来なくなってふと思った。
息を止めて、煩悩を棄てるような感覚。

あれしなきゃ、これしなきゃ、あれどういう意味だったんだろ、なんでわかってもらえないんだ、あぁーだめだ、人生失敗してるなぁ。

なんて
大げさだけど

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