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深夜のファミレスと旅行鞄。

深夜のファミレスで本を読む事が好き。

そう言うと
なんだかカッコつけているみたいだけど
なんとも言えない安心感があるの。

読もうと思いながら先延ばしにしていた本を
リュックに詰め込んでファミレスに行く。

あれを読もう、これを読もうと、詰め込んでいるだけで、不思議と愉しい。

じんわりと重いリュックが高揚感に変わる。

あれも、これも、と、詰めながら
これだけの本を読めるわけがないとわかっているのだ。

だけど、贅沢に詰め込んでしまう。
なんだかちょっとした旅行に出かける気分。

深夜のファミレスで本を読む。
ただそれだけのなのに
お手軽にそんな気分を味わえてしまうからリーズナブル。

ドドドッとテーブルの上に本を積み上げて
コーヒーを飲む。

まばらな人、少し離れた席の会話、ドリンバーで誰かが氷を注ぐ音が聞こえる。

家には、ない景色がここには、沢山ある。

当たり前だ。
そんな当たり前に救われていることが
実は沢山あるんだなぁと、コーヒーを飲みながらじんわりと思う。

そう言えば。

そんな事は、沢山の人が語っている事だった。
それなのに改めてそんな当たり前の事を確認している。

当たり前の事は、忘れがちだよなぁ。

そんな事もたしか誰かが言っていた。

でも
そんな当たり前の事にもどっていけない時があるから人生は、辛い。

本なんて家でも本当は、読めるけれど。
気分は、沈んでいくような気がする。
日常にある軽やかさに戻っていけないような気がする。

深夜のファミレスに向かう力だって無くなってしまうのが、現実だったりもする。

だから
こういう風に大げさに
深夜のファミレスで本を読む。
たったそれくらいの事を”好き”と言っていたい。

たったそれくらいの事。
わざわざやる必要の無い事。

そう言う事をあえてする事が贅沢のような気がする。
もしかしてこれも当たり前の事だったりするのかなぁ。
当たり前の事は、やっぱり忘れがちだ。

なんて。
また誰かが言った言葉を反芻しながら
少しぬるくなったコーヒーを飲む。

そう言えば。
まだ本の頁をめくっていない。

だけど
深夜のファミレスというタイトルの頁をめくった気がする。

そんな事を書きながら。

深夜のファミレスで本を読む事が好き。









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