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体と水の深~い関係~熱中症予防対策~

連日、酷暑が続いています。
外へ出ると、直射日光と熱気ですぐに汗をかいてしまいます。
電気代はかかりますが、クーラーをかけて熱い夏をしのいでいます。
 
好きな言葉をお伝えします。
「自然のあらゆるものの中に、驚異がある」
(アリストテレス)


なぜ、汗をかくのか?


体温が上がりそうになると、まず、心拍数が上昇するとともに体内の血液は皮膚表面に多く流れるようになり、この血流により身体内部で発生した熱が運ばれて体表面からの伝導、対流、輻射によって放散されやすくなります。

その状態においても体温の上昇が続く場合には、汗腺から発汗が始まり、熱の放散量が一気に増えてきます。



汗 100 ㎖をすべて皮膚表面で蒸発させることができれば、体重 70 ㎏の人の体温は約 1.0℃下がります。

皮下脂肪の厚い人は、皮膚表面から熱を放散する作用が弱いので、発汗に頼る傾向が大きくなります。

また、湿度が高い環境においては、汗が蒸発しにくく、したたり落ちた汗も体温低下に作用しないことから、大量の発汗が続くことがあります。


なぜ、水を飲むのか?


生き物は、水無しでは生きていけません。
人は、1日におよそ2.5リットルの水を摂取しており、体内の水分の1パーセントが失われただけでも、のどの渇きを覚えると言われています。



また、人の体の60パーセント以上は水であり、特に赤ん坊や若者は水分の割合が高く、皮膚だけでなく体全体の細胞の活動が活発であることを示しています。

生き物が水無しでは生きていけないのは、水が生命の誕生や生命の活動そのものと深く関わっていることによると考えられます。

人は1日に最低2.5リットルの水を必要としますが、実際には、人が1日の活動を維持するためにはその約10倍の水が必要だと言われています。

その差をどうしているかというと、体内でリサイクルされています。腎臓でろ過された水が、また体内を循環しています。


体と水の関係


1. 1日の水分摂取量


(1)食事  1.0 L
(2)体内で作られる水  0.3 L
  タンパク質や炭水化物、脂肪などの代謝によって得られる水
(3)飲み水       1.2 L

 

2.1日の水分排出量



(1)尿・便  1.6 L
(2)呼吸や汗 0.9 L


水分を失った時の症状


例えば、体重60kgの成人男性は約36kg分が水分になります。

1.水分5 %失った時(約1.8kg分)


(1)脱水症


・隠れ脱水症の見つけ方として、「爪を押してセルフチェック」があります。
①   手の親指の爪を逆の指でつまみます。
②   つまんだ指を離した時、白かった爪の色がピンクに戻るのに3秒以上かかれば、脱水症を起こしている可能性があります
・尿の色を見てセルフチェック
尿の色が濃くなるほど(薄い黄色→黄色→黄土色~茶色)、脱水リスクが高くなります。

(2)熱中症


めまい、立ちくらみ、手足のしびれ、筋肉のこむら返り、気分が悪い、頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感、いつもと様子が違う


2. 水分10 %失った時(約3.6kg分)


筋肉のけいれんや循環不全が起きます。



3. 水分20 %失った時(約7.2kg分)

死に至ります。



熱中症の発症に影響を与える主な疾患


1. 糖尿病



血糖値が高いときは、血液が濃縮された状態で、身体のバランスをとるために多量の水分が必要になります。

また、尿に糖が漏れ出てしまう状態では、糖と一緒に水分も尿に出てしまいます。

そのため、糖尿病の患者は常に喉が渇き水分を多く欲しがり、尿量が多くなることがあります。

このため、糖尿病は自覚症状がなくても血糖値が上がっていることが多く、十分な水分補給がないまま、知らないうちに脱水状態になっていることが多く見られますので、糖尿病の労働者の高温多湿作業場所における作業においては十分な注意が必要です。


2. 高血圧症、心臓病や腎臓病



高血圧症や心疾患で治療している場合には、体内に水分がたまり心臓の負担を軽減するため、水分を体外に強制的に排泄する利尿剤を内服していることがあります。

利尿剤で脱水状態になっているほか、ナトリウムも一緒に排泄する作用により熱中症になりやすい状態となっていることがあります。

なお、利尿剤を必要とする病態は水分や塩分の補給に制限があることが多く、熱中症を回避する行動が取りにくいことがあります。

血管を広げる薬を内服している場合は軽度の脱水でも一過性の脳虚血(立ちくらみ等)を起こしやすくなります。

また、慢性腎不全があると水分や塩分の尿中排泄量のコントロールが不適切になることがあります。

高血圧・心疾患や腎不全で治療中の労働者の場合は高温多湿作業場所における作業においては十分な注意が必要です。


3. 皮膚疾患、精神・神経疾患等



広範囲の皮膚疾患があると、発汗がうまくいかず体温調節に支障を来たすことがあります。

精神疾患があると、自律神経のコントロールがうまくいかない場合には体温調節に支障を来たすことがあります。

また、自律神経に影響のある薬(パーキンソン病治療薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬等)を内服する場合に発汗及び体温調節が阻害されるおそれがあります。

皮膚疾患や精神疾患で治療中の労働者については高温多湿作業場所での作業は十分な注意が必要です。


熱中症予防のための健康チェック


1.風邪気味など体調不良



風邪気味だと鼻が詰まって就寝中に口で呼吸することが多く、外気に接する粘膜面積が増えて不感蒸泄量が増えることがあります。

また、発熱があると就寝中に汗を余計にかくことで、やはり不感蒸泄量が増えることがあります。

さらに、下痢や嘔吐があると身体に必要な水分が失われてしまいます。特に、下痢や嘔吐は塩分(ナトリウム)など電解質も失われてしまいます。

これらの体調不良時は、体内の水分や塩分が喪失するため、普段よりも脱水状態が著しくなり、熱中症になりやすいといえます。


2.前日の飲酒量


大量に飲酒した翌日の起床時には、いつも以上に喉が渇いています。

アルコールはその分解に水分を使うことに加え、尿を多く出す作用(利尿作用)があります。

前日に飲酒量が多かった時は、翌日の起床時には、普通よりも脱水状態になっており、十分な注意が必要です。


3.朝食抜き



一般的に、起床時に既に脱水状態になっているので、その改善には起床後に水分を摂ることが重要です。

朝食をしっかり摂ると水分だけでなく塩分も摂ることができます。もちろん糖質やたんぱく質やビタミン類も含まれています。

米食は水分が多く含まれており、主成分のでんぷん質は体内で分解されて最終的に水分と二酸化炭素になります。

朝食を摂ることで朝から水分を補うと、その後の暑熱作業などで体温を下げる効果がある汗も出やすくなります。

また朝食は汗で失う塩分をあらかじめ補っておくことにもなります。

暑い日が続くといわゆる夏バテになり、朝食を摂らない人が増加する傾向があります。

特に熱中症となる危険性がある作業に従事する予定の人は、必ず朝食を摂ることが重要です。


4. 睡眠不足



睡眠は脳や身体を休息させる大切な役割があります。

その脳が疲労したままですと働きが鈍くなり、注意力や集中力が低下するとともに、暑熱にさらされた身体の体温コントロールが難しくなって熱中症に罹りやすくなる可能性があります。

「寝不足の日の前夜は熱帯夜で寝苦しかった」という場合も考えられます。そのような場合は就寝中の発汗量が多く、また普段よりも起床時の脱水状態が著しく、熱中症に罹りやすくなります。

また、無理に起きているために夜間に利尿作用を持つコーヒー・紅茶・緑茶などカフェインを含む嗜好品を多く取ることがあります。そのような場合の翌朝には普段以上に脱水状態となっている可能性があります。

 
参考資料:厚生労働省ホームページ
     文部科学省ホームページ


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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