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書評「望まない孤独」

5月半ばになりました。
ゴールデンウィークを過ぎると月日が経つのは早いものだと感じます。
街はみずみずしい新緑の季節を迎えています。
 
私の好きな言葉をお伝えします。
 
「生きるとは自分の運命を発見することである」
   (アルキメデス)


「望まない孤独」について


著者は、大空幸星さんで24時間対応、無料チャット相談「あなたのいばしょ」の代表者です。



あなたのいばしょ | 24時間365日無料・匿名のチャット相談 (talkme.jp)

この本は、大空さんの原体験を含め、無料相談で寄せられる「望まない孤独」で苦しむ当事者の声を紹介しています。

「望まない孤独」の問題提起として、孤独が望まない妊娠、児童虐待、DVなどの社会問題、死亡リスクの上昇、冠動脈疾患発症リスクの上昇、うつ病の発症リスクの上昇、自殺の引き金になるなどの精神的・身体的リスクをもたらします。



そして、孤独を日本社会全体で捉えるべき問題として、具体的な対策を提示しています。

1. 国として孤独対策に取り組む意思の明確化
2. 効果的な対策のため、孤独に関する調査研究を推進する
3. 社会全体で孤独対策を実施する体制を整える
4. 孤独に対するスティグマの軽減と正しい理解の普及
5. すべての人が頼れる存在にアクセスできる体制を整える

2021年2月、当時の菅内閣で「孤独・孤立対策担当大臣」が誕生するなど、一部実現した対策があります。



「望まない孤独」とは何か?



英語では、“Loneliness”で、

Peplau(1981)の定義では、

「社会的関係のネットワークが量的あるいは質的に不足しているときに生じる不快な経験」


つまり、誰かに頼れなくても頼れない、話したくても話せないといった状況や、そこから生起される感情(孤独感)が「望まない孤独」と筆者は述べています。

そんな経験は、大なり小なり、誰でもあるのではないでしょうか?

例えば、

・仕事で分からないことがあるのに、上司や同僚が忙しい、または、嫌な顔をされたり、「教えてやっているのに言葉遣いや態度が悪いよね」とイチャモンつけられて喧嘩を吹っかけられた。

・子どもが学校へ行きたくないと言って、どうしたらいいのか分からず、夫に相談しても、「うるさい! 俺は仕事で疲れているんだ。そんな相談してくるな」と言われた。

・飲酒している父親とその酒癖の悪さにうんざりしている母親が毎晩、夫婦喧嘩をして、学校でいじめられていることを言えない子ども。


誰かを頼ることは「悪」なのか?


私の答えは「NO」です。

私たちは、常に何かに頼って生きているからです。



東日本大震災や熊本地震の時を振り返ってみましょう。

私は熊本地震の時、電気、ガス、水道、道路などの社会インフラがマヒしてしまったことが記憶にあります。
当時、震災地域は常時、揺れが観測され、避難先をどこにするか混乱し、孤立しました。

その時、SNSやニュースで目にしたのは、他国や他地域から熊本を支援しようという優しい行動でした。

多くの支援物資がヘリコプターを使って運搬されました。
おかげさまで、私の知人は生きており、今も仕事を続けています。

問題なのは、多くの現代人が社会的システムのおかげで便利な生活ができているのを認識しないで、孤独に対する「自己責任論」を狭い視野で論ずることなのです。

その問題の背景には、「望まない孤独」を他人事のようにとらえている点にあると思います。

地震や豪雨などによる自然災害、病気、家族の不和、学校や職場の人間関係など複雑なことが要因となって、「望まない孤独」になる可能性は誰でもあるのです。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


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