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COPD~慢性閉塞性肺疾患~

7月に入りました。
東京は夏の青空がまぶしい日々が続いています。
梅雨明け宣言はまだですが、暑い季節が到来したようです。
 
私の好きな言葉をお伝えします。
 
「幸せな人生の秘訣とは 
   変化を喜んで受け入れること」
   (ジェームズ・スチュワート)


COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは?


たばこの煙を代表とする吸入された毒素によって、免疫反応が引き起こされ、その結果増えているたんなど排出物による気道の閉鎖がおこりやすい状態です。



痰を伴う咳、息切れが何年にもわたって続き、息を吐く時間がのび、ぜいぜいするという症状があります。ひどい場合には、体重減少・やせ、気胸、心不全や呼吸不全を伴います。

長い経過を経て至る状態でありそもそも気道や肺胞などの組織が破壊されてしまっていること、またたんなどによる気道の閉塞そのもの、とから、肺炎などへの進行へつながりやすく、また階段や坂道をのぼるといった、ちょっとした日常生活での運動でも息切れが出てきます。重症の場合には、携帯用酸素ボンベなどを用いて、酸素を補充する必要があります。


喫煙とCOPD


喫煙は、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)の原因になることが明らかになっています。



喫煙はCOPDのリスクの9割を占めるとされています。


世界保健機構(WHO)の報告によると、COPDは世界の疾患別の死亡順位が第3位となっており、2019年の1年間におよそ300万人(全死亡者数に占める割合は6%)がCOPDで亡くなっていると推計されています。

COPDは予防可能な疾患として、世界の公衆衛生上の重要な課題となっています。わが国では、COPDでありながら未受診の方が500万人以上いると推定され、COPDによる死亡者数は年間約18,000人と報告されています。

他にも喫煙は、呼吸機能の低下、結核による死亡との関連も因果関係を推定するのに十分な証拠がある(レベル1)と判断されています。


気管支喘息の発症および増悪、結核発症、結核再発、および突発性肺線維症との関連については、因果関係を示唆しているが十分でない(レベル2)と判定されています。


たばこの煙の呼吸器系への影響


たばこの煙には多数の有害化学物質が含まれており、喫煙は全身の諸器官に悪影響をもたらします。

その中でも特に影響を受けやすいのが、直接たばこ煙にさらされることになる呼吸器系です。


たばこの煙は、主に活性酸素やフリーラジカルなどを過剰に産生するため、酸化ストレスの増大や炎症などを引き起こします。それらが呼吸器系に与える影響は次のとおりです。


1. 中枢気道における変化


線毛(繊毛)の消失……気管などに侵入する異物を除去する働きが鈍くなる
粘膜腺の肥大……気道内の粘液分泌である痰(たん)が増える
杯細胞(さかずきさいぼう)数の増加……粘膜細胞である杯細胞の過形成・過分泌により、痰が増える
気管支粘膜上皮の組織学的変化……細胞の分化形質において異常が起こり(化生)、がんに発展するなどの変化が起こる


2.末梢気道における変化


炎症や萎縮
杯細胞や扁平上皮(へんぺいじょうひ:内部が空洞になっている臓器の粘膜組織)の化生
粘膜栓や粘液の過剰な産生……気道にゼリー状の粘膜のかたまりや粘液分泌が増える
平滑筋の肥大や萎縮……平滑筋が気道内で肥大・収縮すると、気道が狭くなり呼吸がしにくくなる
細気管支周囲が線維化……細気管支にある肺胞が線維化して硬くなり、呼吸がしにくくなる


3. 肺における変化


肺胞の破壊
小動脈数の減少……血流量の調節機能が低下し、血圧の上昇や動脈硬化などを引き起こす


このように、喫煙は呼吸器系の形態的・機能的変化をきたし、様々な症状や疾患を引き起こします。

喫煙者は非喫煙者に比べて、咳(せき)・痰・喘鳴(ぜんめい:気道が狭くなっているため、呼吸時にゼーゼーという異常音が連続的に発生する状態)・息切れなどの症状が多く見られます。

また、喫煙は気管支喘息のリスク因子とされています。特に、受動喫煙と小児の喘息には関連性があることが認められています。


重症化を予防する方法


COPDになると、肺の機能は健常の老化よりも急速に低下していくことが多いので、早期に診断して適切な治療を受けることが重要です。



喫煙者や過去に喫煙したことがある中高年者で、痰がからみやすい、風邪をひきやすい、風邪がこじれやすいなどの経験がある人はCOPDの可能性があります。

また、普段は元気でも風邪を引いたときに喉や気管が“ぜいぜい”ということがあれば喘息やCOPDの可能性があるので、医療機関への受診をお勧めします。


COPDの治療


治療で最も大切なことは、すぐに禁煙をすることです。
さらに適切な薬物治療・非薬物治療(適切な生活習慣、日々の運動習慣、リハビリなど)により、病気の進行をできる限り食い止め、健康的なライフスタイルを維持することができます。



COPDの主な治療薬は、気管支を広げて呼吸をしやすくする気管支拡張薬です。通常、1日に1~2回、定期的に吸入することで息切れを軽減し、体調の悪化を予防することができます。

また、COPDは気道感染(いわゆる風邪)や肺炎などで病態が悪化・進行していきます。COPDの更なる悪化を予防するために、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種が有効とされています。また、COPDの患者さんは、新型コロナウイルス感染症にかかると重症化するリスクが高まりますので、新型コロナウイルスワクチンの接種が大切です。

息切れを感じるようになって、日々の活動性が低下しますと、COPDも悪化していくことが知られていますので、主治医とよく相談して、無理のない範囲で運動習慣を身に着けることも大切です。

また、COPDでは、さまざまな他の内臓の疾患の合併(併存症)が多いことが知られています。
特に、肺がんを筆頭とする悪性腫瘍、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)・心不全・糖尿病・フレイル/サルコペニア・骨粗しょう症、消化性潰瘍や胃食道逆流などが知られています。
COPDの呼吸器内科的治療に加えて、このような併存症の有無のチェックと管理も大切です。


参考資料:厚生労働省ホームページ


最後まで読んでいただきありがとうございました。

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