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往復書簡

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画家 小河泰帆とタシロサトミの往復書簡。制作について、日々思うことについてやりとりしていきます。
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#抽象画

続、野望のおはなし 往復書簡#46

続、野望のおはなし 往復書簡#46

画家・小河泰帆さんとの往復書簡46回目です。
前回はこちら、美術史と野望のおはなし。

小河さんがすごくいい文章を書いてくださったので、お応えすべく私も正直に、野望について書きます。野望という言葉のもつメラメラした感じに見合う感情は、持ってる時期とそうでない時期がありますよ。私は来年で作家活動10年なのですが、ムサビ卒業したての2014年頃の野望は、いつか品川の原美術館で展示したい、でした。

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美術史に名を刻む方法とか 往復書簡#44

美術史に名を刻む方法とか 往復書簡#44

画家・小河泰帆さんとの往復書簡44回目です。
前回はこちら。

小河さんがあげた美術館の展覧会で私も見たのは、アブストラクション、マティス、蔡國強、テート、ワールドクラスルームです。これ以外でこの夏に見たのは、DIC川村記念館でジョセフ・アルバース、山梨県立美術館でミレーと4人の現代作家たち、東京都現代美術館でホックニーと「あ、共感とかじゃなくて。」、オペラシティアートギャラリーで野又穣ですね。

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タヒチと、本のお話 往復書簡#40

タヒチと、本のお話 往復書簡#40

画家・小河泰帆さんとの往復書簡40回目です。
前回はこちら、作品のお値段と行ってみたい美術館についてでした。

たくさんの行きたい美術館を挙げていただき、読みながら私もわくわくしてきましたよ。ヨーロッパやアメリカで美術館めぐり、やっぱり憧れますね。

私は出不精で、海外旅行はろくにしたことないのですけど、20代後半の頃タヒチに行ったことあります。その時『ノアノア』というゴーギャンのタヒチ滞在記を持

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仮縁問題と、ヒルマ・アフ・クリント 往復書簡#36

仮縁問題と、ヒルマ・アフ・クリント 往復書簡#36

画家・小河泰帆さんとの往復書簡36回目です。
前回はこちら、作品のサイズについてでした。

基本が100号サイズだったとは、すごい。でも言われてみれば、小河さんの根っこである身体表現を生かすのは確かに大画面ですよね。納得です。小品を愛でるように描くというのも、とても素敵ですね。

作品サイズによって作品に対する姿勢や考え方が違うの、よく分かります。
私の場合はいつも表現したいものありきの制作なので

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ひとり年末反省会と、違うということ 往復書簡#32

ひとり年末反省会と、違うということ 往復書簡#32

画家・小河泰帆さんとの往復書簡32回目です。
前回は自分の機嫌の取り方のお話で、なるほど~と思いながら読みました。

お料理、いいですね。煮豚とても美味しそうです。私も長時間ほったらかしの煮込み料理をよく作るのですが、アトリエと台所が一体化しているので、鍋をごく弱火にかけた横で制作してますよ。料理は美味しくできると嬉しいから、気分が上がっていいですよね。
炒めものとか、タイミングが重要な料理はたま

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悲喜劇と白黒映画、見せない面 往復書簡#22

悲喜劇と白黒映画、見せない面 往復書簡#22

画家・小河泰帆さんとの往復書簡22回目です。
前回は好きな映画のお話で、デビット・リンチへの愛が溢れる記事をありがとうございました。

私、デビット・リンチが絵を描いてるのを知ったの、つい10年位前なんですよ。渋谷ヒカリエがオープンしたての頃、8/でリトグラフを見ました。それまで彼のことを映画監督だと思っていたので、作品がとてもよくて驚いたのですが、同時に納得したのを覚えています。
デビット・リン

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不定形パネルと触覚について 往復書簡#14

不定形パネルと触覚について 往復書簡#14

画家・小河泰帆さんとの往復書簡14回目ですよ。
前回は完成を決めるタイミングについてのお話でした。

完成を決める難しさ、本当にそうだよなと思いました。

自宅の壁に飾っての検証は、時間が許すかぎり私もよくやります。
この作業、私は作品を忘れないとできないので、数日のあいだ絵を隠しておきます。
描いたばかりの作品は、自分と一体化してしまっている感覚があります。たっぷり絵具を含んだ筆を滑らせた時の快

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完成を決めるタイミングについて 往復書簡#13

完成を決めるタイミングについて 往復書簡#13

画家・タシロサトミさんとの往復書簡13回目です。
前回はタシロさんの色彩について、混色する理由についてお伺いしました。
タシロさんの色彩は私にはないもので、絵の具の質感や盛り上がり方にフェティッシュな美しさを感じるんですよね。そしてとても美味しそう。いいな〜と最初に作品を見た時からずっと思ってます。

さて、今回のお題完成を決めるタイミングについて。

完成を決めるタイミングは難しいですよね。

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混色する理由、唯一無二性 往復書簡#12

混色する理由、唯一無二性 往復書簡#12

画家・小河泰帆さんとの往復書簡12回目ですよ。
前回は色彩について伺いました。

小河さんのモノトーン作品、7回目の往復書簡で「戦ってる絵」って表現されてましたけど、本当にそういう感じ。ヒリヒリするような絵ですね。すごいな。かっこいい。

学生時代の無彩色があり、9年間のお休み期間を経て、復帰後に色が出てきたというのはなんとも不思議で面白いです。やっぱりそのタイミングでしか描けない絵があるというか

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⑧通信制美大にはいったわけ

⑧通信制美大にはいったわけ

画家・小河泰帆さんとの往復書簡8回目です。
このやりとり、思った以上に文通っぽくて楽しいですね。コロナ禍で、対話に飢えてるせいもあるのかな。

小河さんからは、身体表現のお話を伺いました。
身体全体で受信して、全身で飛び跳ねてるのですね。
まずは行動ありきのスピード感、これは自分に欠けてる要素なので、心からすごいなと思います。
私は良くも悪くも、もっと全般的にのんびりしてるし、臆病なので時間がかか

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⑦演劇をやっていた頃。または寄り道は肥やしになる。

⑦演劇をやっていた頃。または寄り道は肥やしになる。

画家 タシロサトミさんとの往復書簡7回目です。
投げかけられた質問で、自分の記憶を掘り起こして文章にする良い機会になってるなと思う今日この頃です。

タシロさんからは抽象画を描くようになったきっかけをお伺いしました。
2人の先生から言われた言葉が印象に残り、抽象表現に向かうきっかけになったとのこと、とてもよくわかります。
私の場合は、恩師に言われた「小河さんは描かないと何も出てこないから、どんどん

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自己紹介

自己紹介

抽象画を描いているタシロサトミです。noteはじめました。
主に東京にて、こんな感じの展覧会をしています。
よろしくお願い致します!

作品の特徴は、ゆがんだ形の支持体(キャンバスやパネル、紙などのこと)と、厚塗りの絵の具(アクリル絵の具にメディウムを混ぜている)、微妙な色味(やたら混色している)、破線(点々の線)などです。

私の興味は、自分と世界がどのように関わったのかにあります。
最初に意識

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⑥抽象画にはまった理由、誤読の自由

⑥抽象画にはまった理由、誤読の自由

画家・小河泰帆さんとの往復書簡6回目です。

前回小河さんからは、「原風景・よく行ってた美術館」へのコメントと、抽象画を描くようになったきっかけを伺いました。

国立西洋美術館のドニ《雌鶏と少女》、とても可愛らしい絵ですよね。
絵の平面性や色調、筆遣いと相まって、おとぎ話のいち場面みたいにも見えます。
この少女の顔、小河さんに似てませんか?輪郭そっくりだし、たくらんでる表情も私のなかの小河さんのイ

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⑤抽象絵画を描くようになったきっかけについて

⑤抽象絵画を描くようになったきっかけについて

画家・タシロサトミさんとの往復書簡5回目です。

タシロさんからは「原風景・よく行ってた美術館」について教えていただきました。
国立西洋美術館いいですね。ロダンの彫刻が多数所蔵され、「考える人」も「地獄の門」もある! 常設展だけでも見応えがあって、東京はいいな〜と上京してからしみじみと思ったものです。

「ダフニスとクロエ」はいい絵ですよね。
甘酸っぱくて、ちょっとドキドキして照れちゃう感じもあり

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