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美味しいくだものは生産者から直接買おう【八百屋からみた“食”no.38】

果樹(≒樹木で実るくだもの)の今後は本当に厳しいです。

◆異常気象(暖冬の開花異常・遅霜の枝花凍結・台風の風水塩害・夏秋の高温多湿&病害)
◆流行病・ウイルスによる伐採。高温耐性&耐病品種への植え替え
◆生産者高齢化による労働力不足&廃業(継いでも未来が見込めない)
◆大幅な需要減(贈答文化の消滅+今まで食べていたご年配層が噛めなく剥かなくなる+元々美味しいくだもの食べたことない層)
◆生産資材/燃料動力費/人件費といった生産コストの上昇
◆梱包資材/宅急便送料/クール便切替といった流通コストの上昇・容量上限・日数伸長。

生産⇔流通⇔消費。環境が様変わりし与件変化し続ける中、売場は全く変わろうとしません。売場が変わらない=出荷側(生産&流通)も消費側(お客さん)も変わらなくてもこの先大丈夫と考えを放棄しているようです。
常に並べ、見た目/大きさ/人気品種を優先し、量を売る。
そんな昭和な売り方をずーーーーーっと続け、出荷者も販売者も消費者もずーっと売場に置かれ続けたくだものを買い続けた怠惰と惰性の末、以下のようになってしまいました。

◎もぎたてのくだものを食べたことがない
◎くだものを食べて美味しかったことがない
◎くだものの美味しい時期(≒旬)は短いことを知らない

文字にすると恥ずかしいくらい“初歩の初歩”ですら、皆、体験せず&知らずにくだものを食べる日常生活。もぎたての美味しさを知る&買える機会がほとんどないのですから、「美味しくてまた食べたい!」というポジティブな動機も減り、消費は縮小します。いまいちど、くだものの美味しさ・基本知識・現在を学び直す必要があるのではないでしょうか。

はっきり言います。市場流通を経てスーパーに並ぶくだものの“主目的”は、とにかく長持ちすること。どの流通経路を辿り売場で長く置かれても耐えうることが前提で、熟す初期段階・色づきはじめの段階で若取りします。トマトの青もぎ〜その後の流通をイメージしていただければわかりやすいです。長持ちする(見た目が映える・形状劣化が少ない)代わりに熟度や味を犠牲にして成り立つのが現在の市場流通です。
(品目により幅ありますが)とびきり美味しいくだものに出会える確率はかなり低く、仮に1回美味しかったとて同じ売場で再現/リピートできません。あの時と同じモノを買いに再度スーパーに行っても、同産地&同生産者&同品種を買えることはまれです。

美味しい果物を手に入れるには、生産者から直接買うと確実です。
直に繋がり、交流を深め、毎年買い続けてもらうことにこそ、栽培&販売リスクの高い果樹農家が営農継続できる未来があると考えています。道の駅や生産者直売所に買い出しに行く、農園から送ってもらう、ECサイトを使う等、美味しいくだものを欲しい消費者はさまざまなルートで直接買い付けが可能です。ぜひ生産者と直接繋がって買い支え続けてください。どのルートを辿ってもいいです。(数少ないですが)産直八百屋も1つの窓口。美味しいくだものを食べ続けたいから産直八百屋を続けています。

美味しいくだものを食べ続けられる未来を。

またノムさん、大げさなコトを言って〜なんて思わず。

美味しいくだものが満足に手に入らなくなる未来はすでに始まっています。そしてそれはくだものに限りません。

※補足※
果樹栽培のオーガニックしばりには賛成できません。栽培現場の苦悩を知らない人達の勝手な願望です。農薬を減らす・肥料を過剰投入しない・堆肥を使う等の(農薬肥料をなるべくつかわずと一般的に呼ばれる)栽培体系はすでにどの慣行栽培の果樹農家も永年実践しているものです。オーガニックのくだもの栽培は困難を極めるため、それこそオーガニックを明示する生産者からの直接購入がベストです。

果樹は野菜に比べ、虫食い(とくにカメムシ)・草・ウイルス・凍結/高温障害・多年草(野菜のように植え替えしにくい)等々、樹木の健康維持管理リスクが格段に高いです。ヒトへの栄養補給&投薬同様、健康維持に農薬と肥料を使います。木が痩せず毎年実をつけ続けるために肥料を、園地の状態・土の状態・樹木の状態を見ながら農薬を使用します。用法用途・使用量・使用時期は厳格に決められていて、無尽蔵に使えるわけではありません。果樹農家は1年中(実がついてない時期も)園地を周り、草刈り・追肥・剪定・摘果等の管理をされています。ただでさえ労力負荷の大きく天候リスクが高すぎる果樹栽培。オーガニック推進→労力&天候&病虫害リスク増大→果樹が衰退し消える未来(病害虫/健康維持リスクに全く対応できず枯れる未来)と捉えてください。


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↓過去投稿:いつも満足に並ぶ昭和食品流通の終焉

↓オーガニック給食を推進する前に、毎日作る給食製造現場の設備改善を(もちろん待遇も)

↓オーガニック or not の語り口はナンセンス

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