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オーガニック⇔慣行農業は対立しない。比較・優劣・区別する人達は時代遅れ【八百屋から見た“食”no.35】

いわゆる“オーガニック農業/農産物”を10項目にまとめます

(慣行農業と比べ)
石油資材&動力使用は減らない。地球環境に優しいとはいえない。
生態系に優しいが、生育中の植物に対して悪さもする。
栽培条件(生育適期/地域/地質/水/温度/日照≒旬)に合う品目品種がメイン。
栽培条件に合わない品目品種の栽培は困難。技術力と天候と運。
栽培条件&品種特性&技術投入に対し、出来&味が素直。良くも悪くも。
天候不順による出来/不出来の波が大きすぎる。ド豊作もゼロもある。
収穫量に対し商品化(歩留まり率)が低い。欠品リスクが上がる。

(慣行農業/オーガニック共通)
土壌分析・肥料設計・(物理的)防除管理は当たり前。農家が持つ技術力&作業投入量の差が明確に出る。何も投入せず/管理せずだと仮に1年収穫できても後々いきづまる。
天候リスク/病害虫リスクを全回避したオーガニックは植物工場。土耕/露地でないオーガニック表示も存在する。
有機質肥料・堆肥・天然由来農薬成分は、オーガニックでも慣行農業でもスタンダードな資材として利用されている。どれも大幅に値上がりした。

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この10項目を踏まえた上で、以下お読みください。

処方箋的な農薬を使い、肥料で養分を補給調整し、病気・カビ・雑菌・ウイルス・虫食い・栄養過不足に対処しながら収穫まで【見守り管理しながら育てる慣行農業】が国内農産物の大多数です。この文脈は有機JASの範疇にもあてはまります(使用可能な資材が大幅に制限)。

全ての天候リスク栽培リスクに対処しながら慣行農業で圧倒的供給を達成し、飢え/食料不足の可能性が低いからこそ、オーガニック農業/農産物流通も成立しています。日本という地理的地質的条件・気候風土、今後も異常気象が続くと安易に予想できる現状では、いわゆるオーガニック(農薬肥料不使用/環境保全型)農業は、よほどの技術革新が起きない限り(日本全体の食事量を満たすような)量的貢献は難しいです。

もっと言えば、慣行農業が圧倒的供給をしているからこそ、100万人を切る農業従事者によって1億3000万人の大半の食を生産できています(流通&輸出入の話は省略します)。大半の人が農業以外の仕事に従事し、稼いで購入することで、自給自足生活を心配せずに暮らせています。小売の私も同じく。


実際には、慣行農業とオーガニックのミックスが進んでいます。
特にここ5-10年の慣行農業は、農薬使用の用途に合わせて“対象品目・科目グループを分類し、使用時期・濃度・使用頻度を処方箋のように細かく設定しています。毎月のように農薬使用ルールも更新されます。農薬1種類ごとに成分(≒効き目)が明確。用途に合うよう【適用作物分類表】を詳細に見つつ/栽培指導を受けつつ使用します。用途以外に使えません。ヒトに置き換えると滑稽ですが、風邪をひいた時、目薬は処方されませんよね?
用途用法用量目的が決まっている農薬を「無制限に使う・何回も(例:68回も)使う」等、回数で表現しキケンを煽る人達がいます。意図的作為的なプレゼンか、大昔の話を当時の記憶で話しているかのどちらかです。つかまされないでください。スルーしましょう。

慣行農業とオーガニックのミックスが進む。つまり慣行農業とオーガニックが融和する・対立しない・差が小さくなったことを意味します。言葉にするまでもなく、収穫まで“見守り育てる”行動自体、慣行/オーガニック共通しています。管理方法が異なるだけ。対立構造で語る人は古い人です。

10年以上前のスライド(上も下も)
細かな修正は必要なものの、概念図としてご覧ください
当時、農薬&肥料の役割をごちゃまぜにする人もいたので概念図。
有機JAS・〇〇農法・無農薬・無施肥(?)
それぞれに「シバリ」や「公式/ローカルルール」があると解釈してください

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以前のnoteで2つの投稿をしました。

いま店に並ぶ野菜や農産物や食品は、誰かの尽力のおかげ。

◆その時々の栽培環境/天候により、量や品質に波がある(時にできない)ことを理解する。
◆ためしに育ててみる。
◆「作る個」と「買う個」の継続意志/支え合い/相互理解

オーガニックを知るだけでなく、農業・栽培・出来かたを理解する。
農産物生産と家庭菜園的自給自足は、目的がまったく別。育ててうまくいかなかったとしても学びになるはずです。店で食材を選ぶときは優劣比較や区別を超え、好きな作り手を応援する気持ちを忘れずに買い物してください。

オーガニックに対しての想いは、自給自足的生活と田舎暮らしと都市生活疲れをミックスさせた“スローライフへの憧れ・ノスタルジー“にすり替わりがち。また、閲覧数/課金/集票/集客といった思惑がミックスしたさまざまな煽り動画やニコニコ顔のワークショップともなぜか相性良く取り込まれがち/感化されがちです。今回のnoteにより、特定の学者や配信者が焚きつける不安をクリアにし、栽培や農産物に対する正しい理解のもと、無用な心配から解放された現実的な2023年の食生活を送っていただけるとありがたいです。

今年(2023年)の9月の野菜は酷暑猛暑を経た【はざかい期】。
猛暑豪雨を耐えて育ち実った農産物。
くだものは豊作ですが、野菜は本当に収穫&販売が少ないです。
売場に並ぶ農産物・食品を大切に美味しく食べましょうね。


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↓過去投稿:オーガニック給食普及より、給食設備の更新を。

↓過去投稿:食に対する不安は誰かのセイではなく貴方が解消するもの

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