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父の夢実現に向けて、手となり足となる息子たち【#10家にまつわるストーリー】

現場での必要な打ち合わせをなんとか終えて、内装工事も始まりました。外壁もどんどんできあがっていました。

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【水道や排水パイプ、電気の配線が終わってから断熱材と内壁が入る】

電気配線の工事の打ち合わせのときに、セキュリティカメラ用の配線の見積もりを聞くと、1500ドルほどの追加費用がかかることがわかりました。

ワイヤレスという手もありますが、有線のほうが信頼性、安全性ともに高そうなので夫は配線したいというのです。最初の見積もり金額に入れていませんでしたが、こんな調子で次々に追加していっては、いくらあっても足りません。

電気技師との打ち合わせのときに次男と末息子もいました。末息子は音楽やメディアプロダクションに関することなら任せなさいタイプの人なので、「自分で配線してもいいですか?」と聞きました。

「電気配線はライセンスのある技師じゃないといけませんが、WiFiケーブルは安全性の要求される電気とはちがうので、だいじょうぶですよ」との返事でした。

「オレがやってやるよ。WiFiケーブルなんて高いものじゃないし、週末1日あればたぶんできると思うから」

そんな運びで、大工さんが仕事しない週末に、息子たちがケーブルの配線作業をしてくれることになりました。7月の第2週の週末に、次男夫婦と末息子カップルといっしょに現場にお弁当を持ち込みピクニック気分で集合。

息子たちの配線作業を夫といっしょにおしゃべりしながら見守りました。夫はあまり動けませんが、椅子に横たわり口で指示をしながら眺めています。

末息子の家はデトロイト近郊なので、往復すれば500kmの道のりです。コロナ禍のことでもあり、遠距離を駆けつけてまでこんな作業を買って出るのも父親を想う気持ちからにほかなりません。

息子たちのやさしさが身に沁みます。

こんなふうに、子どもたちを巻き込んでしまうことになったのは、それだけではありません。もともと、DIYも楽しもうと考えていた夫は、デッキも、地下の完成も床張りも自分でしようと計画していました。

そのため、ウッドデッキは柱のインストールだけを建築業者にお願いしていたのです。自分の手でデッキを作ることを楽しみにしていましたが、今の夫は思い通りに体が動きません。少し歩くだけで息切れがするので、高いところに上ったり、金槌を持つなんてことはとても無理です。

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デッキはあろうことか、4箇所もあります。見て下さい!!このデカさ。

この記事で伝えたように、メンテナンスの心配をするわたしは、デッキは必要最小限がいいと夫に常日頃から言ってました……。

この巨大なデッキとなる柱を見た途端、わたしの涙腺はブチギレました。

「必要最小限って言っておいたのに、なにこのデカさ!!」という怒り。

と同時に、

夫が見ている夢とわたしの希望は食い違っているけど、「それでも果たしたい」と思っている夫の願いが見えたようで、「このデッキが完成しここで夫と共に家族みんなが集まって笑える日」を想ったら、たぶんその日は来ない気がして、ただただ悔しくて、残念で、溢れる涙を抑えることができませんでした。

加えて、夫が動けなくなった今、これからどうすればいいのかわからない目の前の不安も涙の一部だったと思います。とにかく、止めようと思っても止まらない涙を流しきろうと、しばらく夕日の中で泣いていました。

元気でさえいてくれたなら、デッキを完成させるために、お互い憎たれ口をたたきながらも、日が暮れるまで二人で仲良くトントンカンカンやっている姿もまぶたに浮かびました。

元気なころの夫にとっては、デッキを作る程度のことは朝飯前のことでした。柱さえ埋まっているのなら、デッキボードを切って打つだけのことなので、「数日あれば簡単に完成させられる」というのが夫の認識でした。

材料は高いと言っても知れています。でももう夫がDIYは無理です。建ってしまっている柱の面積で、建築家さんにデッキを完成させてもらえば、これまたいくらかかるのやら?の話です。

全てを前に進めていかなければ工期までに家が完成できません。自分の家のことなら半分出来でもまぁいいやってことがまかりとおりますが、新築工事で、受け渡しが終わっていない場合にはまだわたしたちの家ではありません。州のコードにあわせて、数々の認定基準にパスしていかなければならないので後回しにはできません。

さて、そこでまたまた息子たち登場です。

7月の終わりには、いちばん上の息子タロー夫婦が、住んでいたテキサス州から越して来ました。パンデミックで仕事がリモートワークになったために、闘病と家のことで人生最大の危機にいるわたしの助っ人として志願してくれたのです。

ほんとうにありがたいことです。

久しぶりに3人の息子たちが集結。大工さんのいない週末にデッキ製作と、予定していた地下の一部に壁を作ることを手伝ってくれました。現場監督は、動けないけど頭と口は確かな夫です。

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【地下に壁作りたい・デッキの床作り・地下に施主供給の資材を運び込む】

地下の一部の壁はないからと言って家の完成に関係ないことなのですが、夫がどうしてもこれをしておきたかったようです。わたしに言わせれば、「今それしなくていいでしょ!!」って感じなのですが、もはや、夫の“したいこと”に誰も異を唱えることはしません。

今あるお父さんの時間を大切に。「今したいことをすべて叶えてあげたい」という気持ちで言いたいことは飲み込んで、笑顔対応で夫の残り少ない時間と向き合っているのです。

息子たちにとって、難儀なことですが、弱った父親を目の当たりにし、できることはなんでもしてあげようという気持ちになったのでしょう。3人息子たちがじゃれ合いながら、父親の前で楽しそうにデッキ作りを進めていました。次男のワイフは、常にわたしを気遣ってわたしの側にいてくれます。

こんな様子を見つめながら、息子3人もいることに感謝!!心から子どもたちがいてくれてよかったと思いました。言葉にすることのできない夫ですが、夫もうれしいひとときだったにちがいありません。

夫が3人の息子といっしょに過ごせたのはこのときが最後となりました。

【#11家にまつわるストーリー】に続く



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