不死の日のエドム
「日の神にかけて。今日は『誰も死なぬ日』でさ、ヨブの旦那」
薄汚い牧童は、そう言って男に微笑み、右手を挙げた。
「試してみる。首を出せ」
「いや。痛いは痛いんでね。罪になりやすぜ」
「構わぬ。贖い銀は先払いだ。俺の神に誓う。そこの連中、証し人となれ」
ヨブは、銀の入った革袋を呉れてやる。
牧童と証し人らは銀を確かめ、肯いて受け取る。
「じゃ、どうぞ」
剣が一閃し、牧童の首を断つ。ごろりと落ち、血は出ない。
首は顔を引き攣らせ、口をぱくぱくさせる。
「い……いてえ! 旦那、早う首を戻してくだせえ」
「喋れるとは不思議だ。日が沈めば死ぬのか」
「お、おれがこのまま死にゃあ、旦那も死ぬんですぜ!早う!早う!」
「そうか」
証し人がヨブを睨む。
首を拾い上げ、傷口に載せてやると、元の通りに繋がった。
「ああ、痛かった。じゃ、これで」
「うむ」
牧童らが去ったあと、ヨブは空を見上げる。
太陽が見ている。動きが遅い。
「エリパズの言う通りか」
【続く】
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