笑って、泣いて、勇気を補充。映画『花嫁はどこへ?』インド、2024年。
友だちみんなにおすすめしたい映画。派手さはないのに、ハラハラして、やさしさにホッコリして、戦う勇気が湧いてくる。さすが、「インドの宝アーミル・カーン」。彼が関わっている映画に、ハズレはありません。
舞台は20年ほど前のインド。スマホがなく、ガラケー。wifiがなく、ネットカフェの時代です。インドのしきたりでは、花嫁の家で結婚式をあげた新郎新婦は、花婿の家に2人で向かいます。
田舎では、親が決めた結婚相手と結婚するし、当日まで花婿と会ったこともないのが当たり前。女性の識字率も低い。自分がどこに嫁ぐかもよくわかっていないので、ベールを被って顔を画した花嫁さんが大安吉日に1つの列車に複数乗った場合、うっかり花嫁を取り違えてしまう展開になるというコメディ。
母親と初めて旅をした口のきけない女の子が、混雑した列車で迷子になるというインド映画を見たばかりですが、「夫の名前を呼ぶこともはしたない」インドの大混雑列車で、初々しい新郎新婦が離れ離れになるシナリオ作り。「いかにも、ありそう」で上手いです。
置いていかれた新婦は、初めて一人で外の世界へ出たわけで、とにかくわからないことだらけ。でも、不名誉だからと実家に連絡はしませんし、「警察も怖い」と教えられているので届けようとしません。駅長さんも大弱り。
一方の、間違えられた花嫁は、なにやら訳ありのようで、帰りたくないかのように自分の名前だけでなく、結婚相手や、父の名前、そして住んでいた村を偽ります。そして、なにやら怪しい動き。コメディ映画に、ミステリ要素を加えてくれます。
そして、この騒動をややこしくしているのがインドの「怖い警察」。賄賂や手抜きが当たり前の状況らしく、2人の夫たちの届け出を受けるものの、どうやったら自分の利益になるかどうかを算段するのが最優先。社会派要素も入ってきます。
アーミル・カーンの映画だけじゃなく、インド映画ってわりと社会の問題をとりあげますが、決して声高に糾弾するのではなく、コメディの舞台設定にしたり、物語の要所、要所で物語の展開の1つとして使うのがうまいので、説教臭くなりません。それでいて、とても考えさせられるし、日本も程度は違えど似たようなのあるなあ、と思わせられるんです。
最近、インド映画が日本でたくさん見られるようになって、ハリウッドみたいな派手でかっこいいアクション映画も増えました。でも、派手さはなくても人情があって、困難を乗り越えて最後はハッピーエンドになって、笑って泣けるけどでも、最後に戦う勇気が湧いてくる映画も好きです。
あと、インドの田園風景の美しさ。大きな画面でみると最高です。出てくる食べ物もとにかくおいしそうで、見ていてお腹がすきます。そして、音楽がすごくいいので、余韻の残り具合も半端ない。興味があっても、なくても、ぜひ劇場へ。おすすめです!
アーミル・カーンの作品には名作がいっぱいで、おすすめばかり。