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夢をつかみ取る娘と母の物語。映画『シークレット・スーパースター』インド・2016年

アーミル・カーンの作品ならばハズレはありません。
インドの社会問題をとりあげつつ、笑いあり、涙あり、歌もステキ。

今回の作品は、DVの父親を持つ歌のうまい少女と、学歴がないけど音楽好きの優しい母、ちょっと甘やかされているけどかわいい弟の物語。健気でかわいい初恋の男の子。このチンタンがとってもかわいいし、あのパスワードのエピソードステキすぎ。お母さん役ステキ。ふわっとして頼りなくて、優しくて、でも芯が強くて。

そして、そして、アーミル・カーン。
主役でなく脇役のそれもあんまり出てこない。なかなか出てこない。でも、重くなりすぎる話の中で、彼の笑える演技がすごく救い。いい人になりすぎないのもいい。エンドロールのふざけ方、最高です。

娘の夏休みも終わり。今度は夫の夏休みと合わせて、3人で映画に行きました。私は2度めの『シークレット・スーパースター』。1回めよりも涙腺が緩んで、泣けました(タオル持参だったので無問題でしたけどね)

最初のときにはわからなかった部分をしっかり見ることができました。主人公の女の子の表情とか、お母さん、大叔母さん、弟くん、チンタン、そしてお父さん。特に主人公インシアが結構お父さんに似て癇癪を起こすし、ワイルドだし。でも、尖った娘でなければ人生は戦えない。

日本の一般的なシンデレラ物語は、虐げられる者がとことん「良い子」。品行方正で非の打ち所がない人物じゃないと「反逆の資格がない」みたいな雰囲気がある。でも、何か辛い現状を突破できたり、新しい扉を開いたりできるのは尖った子。欠点もあるし、ちゃっかりしていたり、生意気だったり。
そういう意味でもインシアはちゃんと魅力的。癇癪起こすし、物には当たるし、好きな子に正直に好きって言えないし。かわいい。

そして、お母さん。空港でオロオロする自分を尻目にしっかり対応する娘に驚き、飛行機の座席を占拠する男性をどかす娘にも驚く。そして、自分もしっかりしなければと考え始める母の無言の変化がいい。きつい男女差別のインドで戦ってきた女性同志。大叔母との空港でのハグも涙なしには見れない。

邦題:シークレット・スーパースター(原題:Secret Superstar)
監督:アドヴェイト・チャンダン
製作:インド(2016年)150分
出演者: ザイラー・ワシーム、メヘル・ヴィジュ、アーミル・カーン


映画がすばらしかった分、いろんな意味で衝撃なのが、主人公を演じた女の子が、この映画公開後、引退してしまったこと。敬虔なイスラム教徒なので、『ダンガル』で髪の毛切ったり、コミカルな演技をしたりするのに風当たりが辛かったとのこと。なんとまあ……婉曲に書かれているけど、これってリアルな『シークレット・スーパースター』ってこと。辛すぎる。



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