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あなたの脅威はなんですか? What is your threat?

ただ毎日の自分一人の生計や自分の所属する一家の面倒を考えるばかりでなくて、自分が所属する組織や共同体について考えるとき、そこには権威や権力、資源や負担の分配といった課題が持ち上がる。そこで、何も言わず詳しい人や他の関心が強い人にお任せするという態度(いわゆるノンポリ)を取ることもできるかもしれないが、自分が提供したリソース(例えば供託金や税金)がどう使われるのかについて意見 opinion を述べるときはその人の価値観や政治的な立場が意見に反映されることになるだろう。

この価値観や政治的な立場というのはその人がどのような可能性を想像し、念頭に置き、重要視するかによって形成された一連の信念である。

例えば、外国に侵略される可能性を他の可能性よりも明白かつ緊急なものとみなせば、資源は軍備増強または善隣外交に回すべきだということになるだろう。一方、もちろん他の課題が重大な結果を招くという評価を下すこともできる。例えば国内の経済格差があまりにも激しければ革命やクーデタによって政権が危うくなるかもしれない。それを外国の侵略よりも緊急かつ重要であると評価すれば、格差是正のための再分配や治安部隊の拡張、貧困地域の工業化に予算を回すべきだという結論に至るかもしれない。あるいは例えば、個人の自由を重視するのであれば、まずもって行政(政府)の縮小を求めるだろう。なぜならば、大きな政府を維持するための徴税とは行政による個人の財産権の不当な(正当化できない)侵害だからである。一方、自然災害が多くまたそれによる被害も甚大な国だという認識を重く見れば、たとえ増税してでも防災・減災対策のために民間企業にはできない規模のインフラ工事・財政出動をおこなう必要があるだろう。別のことに目が行く人々もいる。例えば特定の信条からテロリズムや組織犯罪に走る過激派集団行き過ぎた商業主義、市場の失敗の是正こそが多くの住民や賃労働者にとっての安心を薄く広くもたらし、社会を安定させるのだから、そこに資源を投じるべきだと考える人もいるだろう。

したがって、或る人の政治的立場を決めるものは何か what makes one's position for politics というと、その中心はその人が何を恐れるか? どんな可能性を最も脅威とみなすかによる。だから、もし異なる政治的立場の人同士が公共に与えられた資源をどのように配分すべきかを論じるとしたら、ただ自分の結論を述べるわけではなく、お互いに自分が何を怖れているかをまず相手に伝える必要がある。その上で、それが相手が怖れているものよりも強大な脅威であることや、相手の怖れている対象と同時に対処可能なのか、それともどちらかに予算を振り向けないとどちらにも対策できずに終わってしまうものなのかをそれぞれ考えて、説得し合う必要があるだろう。つまり、弱みを見せるようで難しいかもしれないが、まずはお互いに何が怖いのかをシェアすることが、政治的協力への第一歩である。

(1,243字、2024.05.11)

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