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2月29日「閏年」

 四年に一度の、2月29日。もしかして特別なニクの日だからみんな肉を買い占めたのかしら?としょうもないことを考える。わたしは生まれるのがあと数時間おそかったら今日が誕生日。子どものころはギリギリセーフでよかったあ、なんて思っていたけど、大人になってからは29日のほうがおいしかったな、と思っている。同業で、むかしは尊敬するというのも悔しくて言えなかったくらいの女性は29日生まれで、誕生日さえわたしが凡人である証のような気がして落ちこんでいたこともあった。しょうもない嫉妬である。

    • 2月28日「春服」

       目覚めると、トイレットペーパーとティッシュがなくなるという情報がTwitterをめぐっていて、まっさかーと思ってスーパーに行ったら本当にひとつ残らず消えていた。残っていたのはキッチンペーパーだけ。え、うそ。うち、あと4ロールしかないんですけど!?と軽く焦って実家に電話してみたら、名古屋のドラッグストアからも消え失せていたらしい。さらにその後、スーパーに行ったら肉の棚が空っぽになっていて、店員さんいわく午前中で買い占められていったという。みんな……シェルターにでも籠もるの……

      • 2月27日「うららか」

         京都の占いに行くのは昨年の夏ぶり、二度目である。家族との関係についてみてもらったところ「あなたのお母さんと妹さんは他者からどう見られるかが大事なので、そもそもマウンティング基質です。あなたにそのつもりがなくてもマウンティングされたと思うと怒りだします」と言われ、理不尽にひっくり返りそうになる。「マウンティングさせておけば平和なので、させておいてあげましょう。それによってあなたは不当に名誉を傷つけられたと思うかもしれないけれど、向こうにあなたを貶める意志は一切ありません。ただ

        • 2月26日「余寒」

           もう春か、と油断していたら寒くなって風邪をひきそうである。このご時世、外でうかつに咳き込むこともできないので、びくびくしている。  という体調のぐらつきはあったものの、悪化することなく平穏に、閑散としすぎて心配になる京都旅行を終えた。ただ、風邪はひかなかったが、思いもよらぬ不調が出た。あごまわりの大量にきびと、乙女が(だれがだ)言うのもはばかられる、お尻にできるあれである。最近は金と努力を惜しまなかったおかげで肌も安定していたというのに、いきなりでかいにきびが三つも四つも

        2月29日「閏年」

          2月25日「草青む」

           呪いとはかくもおそろしいものだなあ、と思う。あいかわらず恋愛方面で迷走している後輩だが、おそらく彼女は、自分が性的に扱われることをそもそもあまり好んでいないタイプだと思うのだ。けれどこの世の中は、恋愛至上主義に満ちている。どんなに仕事がいちばんだと言ってもどこかで「そうは言っても恋したらそれが最優先、いちばん大事なことになるだろう」という前提で話されることも多いし、どんなにさみしくないと言ってもちょっと憐れまれたりする(ちなみに「最近どう?」というのがいやで聞いてくる人を避

          2月25日「草青む」

          2月24日「凍解」

           セクハラ関連の本を仕事で読んでいて、陰鬱とした気持ちになる。世間の耳目を浴びる大事件、ではなく、あまりにありふれた日常だからだ。被害と呼んでいいのかもためらう、あのとき言われた、されたときの、いやな気持ち。こんなのはよくあることだと押し殺して、なんてことないと世間慣れしたしぐさを発動させてしまった自分に対する違和感。たくさん、たくさん、思いだして泣きたくなった。  某アイドルが未成年に手を出して引退に追いこまれたとき、ほかでもない女性が、彼のファンが、被害者の女性をバッシ

          2月24日「凍解」

          2月23日「天皇誕生日」

           地味に気になっていることがある。うちのトイレットペーパーホルダーは二つ横並びになっているタイプなのだけど、縦に積める予備ホルダーも置いているので、基本はひとつしか使っていない。が、きのう友人のどちらかがセットしたようで、気づくと使いかけが二つ並んでいた。理由がわからなさすぎる。と、こいびとに伝えると、友人たちが帰ったあと5回くらい首を傾げていたそうで、それはもう地味ではなく派手に気になっているよと言われた。  以前にも似たようなことがあった。そのときは、予備ホルダーは置か

          2月23日「天皇誕生日」

          2月22日「春一番」

           友人たちと日本酒持ち寄りの会をもよおすので、わたしにしてはめずらしく数日前から食事を仕込んでいる。醤油と酒にしょうが・にんにくをあえればだいたいなんでもおいしくなるので和食は偉大だ。早々に食事は準備できたので窓をあけて部屋を掃除していると思いのほか風が強く、枠をがたがた揺らしていた。春一番がやってきたのだ。  去年より半月もはやい到来で花粉が大量飛散しているらしく、こいびとにはお気の毒なことである。コロナ騒動のせいでほんとうにマスクが手に入らないせいで、ダイレクトに花粉を

          2月22日「春一番」

          2月21日「土脉潤起」

           久しぶりに映画館に行った。レディースデーでもauマンデーでもない正規料金で。なにをおいても観たいものがあった、というより、頭をエンタメに染めたかった。ほんとうは『パラサイト』を観たい、というかあれは観ておかないとまずそうだなあ、と思っているのだけれど、あんまり難しいことを考えずスカッとした気分になりたかったので、終わりかけている『ナイブズ・アウト』を。アメリカの移民問題とか、立場の強弱による関係性の変化など、いろいろテーマは盛り込まれているものの、基本的には探偵映画。これで

          2月21日「土脉潤起」

          2月20日「雨水」

           雨水とは降り注ぐ雨ではなく、雪解けて田畑を潤す水だ。ようやくわたしの心にも、潤いが戻ってくる。  つくづくわたしは単純だし飽きっぽいな、と思ったのは、ぐっすり寝て起きてみたらすこし元気になっていたからだ。今週は、やらねばならないことはあるけど追い立てられるほどでもないのがよかった。そのぶん稼ぎは少なめだけど、今月はむりやり詰め込まないほうがよい気がする、とあえて営業をかけなかったのが幸いした。余裕があるぶん長々めそめそしてしまったけれど、メンヘラ気質はあるもののそれを上回

          2月20日「雨水」

          2月19日「花粉」

           あと一歩で仕事が終わる、そのあとはそこそこ余裕があって、好きなようにしたらいい。わかっているのに「仕事しなきゃ」と思うだけで吐きそうになり、布団から起きあがれずに、ぼんやりしてたら気づけば15時。〆切は伸ばしてもらってどうにか這い出して、予約していたマッサージに向かう。シャワーを浴びるのも着替えて外に出るのもいやでいやでたまらなかったけれど、キャンセル料をとられる店なのでのろのろと家を出た。どうやら「○○しなきゃ」と思うことが気持ちの負担になっているようなので「わーい仕事大

          2月19日「花粉」

          2月18日「休」

          体調不良。

          2月18日「休」

          2月17日「魚上氷」

           仕事仲間の発案で、雀荘に集まり、卓をかこんだ。初対面の人たちばかりで、挨拶も自己紹介もそこそこにじゃらじゃらと牌を鳴らしながら対局をはじめる。お金は賭けずに、ただひたすら真剣勝負する、超健全な頭脳ゲームとしての麻雀だ。おなじ業界に身を置いているひとたちがほとんど、と言っても、具体的に仕事の話をすることもなく、気づけば4時間があっというまに過ぎていた。あれほど神経を研ぎ澄ます機会は日常になく、知恵熱を出したようにふらふらしながら帰途につく。  私には好きなものがたくさんある

          2月17日「魚上氷」

          2月16日「春寒」

           オーケストラライブに行った。圧倒的な技巧とセンスに酔いしれる、ぎゅうぎゅうに濃密な夜だった。調和と型破りを共存させる熱量が美しいなあ、と思った。帰り道は雨が激しくなって、さむいのに駅は遠くて散々だったけれど、ぜんぜん気分が落ちることはなくむしろ高揚がしずかに醒めていくのが心地よかった。ひさしぶりに、こいびとに八つ当たりめいた議論を吹っかけることもなかった。  会場が横浜だったので中華街のちかくで待ち合わせ、ケーキを食べたり餃子を食べたりしていたのだけど、そのあいまにふと思

          2月16日「春寒」

          2月15日「蕪」

           仕事をはじめたばかりの女の子の相談に乗りながら、自分のことを棚上げしてアドバイスをしている自分が滑稽になる。けっきょくは自分のやりたいように納得するように決断していくしかないので、彼女の話を聞いて、ときどきわたしの場合はどうだったかを話して、あとは委ねる、その過程を共有することで彼女がラクになるのならまあいいか、とも思う。しきりに申し訳なさがっている彼女にわたしが堂々と言えることは、わたし自身がかつて先輩から受けとった言葉だけだ。わたしもそうやって助けられて奢られてきたのだ

          2月15日「蕪」

          2月14日「梅の花」

           ここぞというときにしか食べないようにしている鮨屋のランチをいただき、食べ終えたあとなぜか涙が出そうになった。まだ大丈夫だ、とおもった。満腹感の幸せが悲しみに打ち勝つうちは、まだまだ全然、生きていける。  と、書いているときに昨日の日記を読んだ兄さんから「一枚の絵にはいろんな色が入ってる」とLINEがきた。べつの友だちからも、ここ数日のを読んだけど大丈夫か、と聞かれた。こいびとは私のめんどくささに辟易しながらも調子はどうだと気遣ってくれた。家族と揉めるとなぜかわたしは自分の

          2月14日「梅の花」