2月22日「春一番」

 友人たちと日本酒持ち寄りの会をもよおすので、わたしにしてはめずらしく数日前から食事を仕込んでいる。醤油と酒にしょうが・にんにくをあえればだいたいなんでもおいしくなるので和食は偉大だ。早々に食事は準備できたので窓をあけて部屋を掃除していると思いのほか風が強く、枠をがたがた揺らしていた。春一番がやってきたのだ。

 去年より半月もはやい到来で花粉が大量飛散しているらしく、こいびとにはお気の毒なことである。コロナ騒動のせいでほんとうにマスクが手に入らないせいで、ダイレクトに花粉を防がねばならぬひとに行き渡らないのがかわいそうだ。マスクがなくなる、というニュースを聞いたときは「オイルショックかよ(笑)」と思っていたのだが、ほんとうにどこもかしこも売り切れているのには驚くし、感染者でない限りはあまり意味がないと専門家が言っているのだから、むしろ症状のある人たちがマスクできなくなるほうが困るだろう、資源がなくなるわけじゃないんだから普通に必要に応じて買えばいいのに、と思うのだけど、そういうわけにもいかないらしい。

 というような話をしながら、日本酒を煽り煽られ6時間近く、気づけば4人で5本はあけていた。正直、後半はなにを話したかおぼえていない。得意のだし巻き卵をびっくりするくらい巻くことができずぼろぼろにして出したことと、酩酊状態で鰤の炊き込みごはんをつくったらこれまた驚くほどにおいしかったというだけだ。友人たちが帰ったあと、残りを椀によそって白だしじょうゆを溶かしたお湯をかけてこいびととふたり食べたら、我ながらステンディングオベーションをしたくなる味だった。

 たぶん実のある話はひとつもしていない。友人たちはわたしの話を隅々まで覚えている、かもしれないけれど、まあどうでもいいか、と思える程度の中身の薄さだ(……たぶん)。こんなふうに心の許せる何人かで、酒や食事をわかちあえる幸せを噛み締めつつ、ベッドに倒れこむ。気づけば風は、やんでいた。

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