ふかや まもる

テレビ局でテレビ番組を作って、はや40年・・・ 銭湯と立ち食いソバはサイコー!本に音楽…

ふかや まもる

テレビ局でテレビ番組を作って、はや40年・・・ 銭湯と立ち食いソバはサイコー!本に音楽、映画、舞台・・・人生には楽しいことばかり!

記事一覧

福田悠「京都伏見の榎本文房具店 真実はインクに隠して」ライト文房具ミステリ

文房具はギア業界でも一種独特な世界を成している。チープファンシーから超高額まで、とにかく振り幅が大きい。 本書は、都内の老舗文具店に勤める主人公が、京都で文具店…

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「映画 窓ぎわのトットちゃん」豊かな表現のアニメーション

原作の「窓ぎわのトットちゃん」はずいぶん昔に読んだが、もちろんほとんど忘れている。なのでほぼ何も知らない状態で鑑賞に臨んだ。 個人的には、なんだかアニメーション…

椰月美智子「みかんファミリー」最後はタイトルに納得する小説

以前、日々を追われるように過ごしていたときは児童文学を読む時間など全くなかったが、ここのところ歳をとって仕事のペースもかなり緩くなってきたので、時間ができるよう…

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くわがきあゆ「復讐の泥沼」ちょっと深夜ドラマっぽい

ぜんさくくの「レモンと殺人鬼」は確かに読んでいるのだが、全く頭に残っていない。きっと展開に納得がいかなかったのだろう。 今度はいかがなものか。 老朽化した建物の…

朝井リョウ「生殖記」何も知らずに読めてよかった

朝井リョウの新作、まだ情報が出回らないうちに読めてよかった。 というのも、まず仕掛けが出オチ系。もちろんその後もきちんと楽しめる作品ではあるが、大きな仕掛けにま…

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配信「ビバリーヒルズ・コップ アクセル・フォーリー」シリーズ作復活!配信のおかげ

エディ・マーフィーの人気シリーズの30年ぶりの続編。 主人公のアクセル・フォーリーはデトロイトに移っていたが、弁護士の娘が関わる事件のためにビバリーヒルズに戻って…

映画「FPS」ゲームのFPSというより映画のPOV

プレイヤーの視点でゲームを展開していくシューティングゲームをFPSと呼ぶ。この映画は全編を主人公目線で展開している映画なのでFPSと名付けたようだ。 しかし映画の手法…

マンションの大規模修繕費が大変なことになりそう

ネットを見ていたら、住宅のリフォーム工事代が大幅に上がっていて、不動産投資をしている人たちの大きな負担、収益減になっているそうだ。そもそも不動産投資とは、物価と…

映画「このろくでもない世界で」見終わって陰鬱とした気持ちになる韓国ダークノワール

韓国には、格差社会からこぼれ落ちた最下層の下を描くディストピア・ダークノワール映画のジャンルがある。「パラサイト 半地下の家族」はその代表。そしてこのジャンルに…

映画「クワイエット・プレイス DAY 1」一発芸映画のIPがこんなにもシャブれるとは…

「クワイエット・ブレイス」シリーズは、まず第1作目がとんでもなく良くできていた。絶妙な設定の家族と、待ち受ける「出産」というイベント。 2作目では、生まれた赤ん…

映画「ザ・ウオッチャーズ」父娘の血は争えない

世紀のワンアイディア監督マイケル・ナイト・シャマランの娘が監督した超常サスペンス映画。お父さんと全く同じ作風というところに、争えない血筋を感じる。ちなみに父が制…

映画「YOLO 百元の恋」元の映画とは違った意味で傑作

元になったのは日本映画「百円の恋」。こちらは10年ほど前の映画だが、ダメ女子がボクシングによって再生していく非常に印象的な映画。安藤サクラの芝居の巧さが爆発してい…

配信「十角館の殺人」割とよくできた映像化

新本格派の古典「十角館の殺人」がHuluでドラマ化されていた。45分程度の5話構成だ。 ストーリーは原作に忠実。なので大きな破綻もなく仕上がっている。役者は知らない人…

映画「朽ちないサクラ」都市伝説陰謀論系原作をうまく料理した佳作

柚月裕子原作ということで観に行く。この人の作品はほとんど読んでいて、特に「慈雨」という作品は大傑作。ある制作会社の人に「主演伊東四朗さんでドラマ化するといい」と…

小野寺史宜「モノ」日本初のモノレール小説!?

日本初の「モノレール」小説!! 作者の名前にも覚えがなく、初めて読む人かと思って調べると、女性タクシー運転手を描いたお仕事小説を始め、数作品を読んだことのある人…

小原瑞樹「ハートレス・ケア」ちょっと珍しいケア小説

地方の小さな出版社が「介護、医療、福祉」にジャンルを絞って募集した小説コンテストの第一回大賞受賞作。 コンテストは第3回まで続いているようだ。このような試みは業…

福田悠「京都伏見の榎本文房具店 真実はインクに隠して」ライト文房具ミステリ

福田悠「京都伏見の榎本文房具店 真実はインクに隠して」ライト文房具ミステリ

文房具はギア業界でも一種独特な世界を成している。チープファンシーから超高額まで、とにかく振り幅が大きい。
本書は、都内の老舗文具店に勤める主人公が、京都で文具店を営む祖母の逝去を機に久しぶりに店を訪れることから始まる。もちろん主人公はある種の文房具マニアだ。知識も豊富。そういえば、テレビチャンピオンの文具王の人も文具メーカーに勤めていた。
連作のそれぞれはミステリ仕立てになっているが、そこまでハー

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「映画 窓ぎわのトットちゃん」豊かな表現のアニメーション

「映画 窓ぎわのトットちゃん」豊かな表現のアニメーション

原作の「窓ぎわのトットちゃん」はずいぶん昔に読んだが、もちろんほとんど忘れている。なのでほぼ何も知らない状態で鑑賞に臨んだ。
個人的には、なんだかアニメーションを劇場で観るのは苦手だ。配信でいいじゃないかという気持ちがある。
しかしそうでもない作品に出会うこともあり、たまには劇場でアニメーションもいいのではと思うこともある。例えば「この世界の片隅に」は試写室の小さいけれどもスクリーンで観られてよか

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椰月美智子「みかんファミリー」最後はタイトルに納得する小説

椰月美智子「みかんファミリー」最後はタイトルに納得する小説

以前、日々を追われるように過ごしていたときは児童文学を読む時間など全くなかったが、ここのところ歳をとって仕事のペースもかなり緩くなってきたので、時間ができるようになった。そんなわけで児童文学にも目を通すことがある。
児童文学といっても、子供用とバカにはできない。けっこうきちんとした文学だったり、エンタテインメントだったりする。侮ってはいけない大切なジャンルなのだ。しかも次の時代を担う子供たちを育て

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くわがきあゆ「復讐の泥沼」ちょっと深夜ドラマっぽい

くわがきあゆ「復讐の泥沼」ちょっと深夜ドラマっぽい

ぜんさくくの「レモンと殺人鬼」は確かに読んでいるのだが、全く頭に残っていない。きっと展開に納得がいかなかったのだろう。
今度はいかがなものか。

老朽化した建物の崩壊で発見された主人公たちは、なぜか医師から助けてもらえなかった。そして次は、この時立ち去った医師を発見するシーンへとつながる。
このあたりが非常に映像的。映画の導入を見ているようだ。
その次の展開もまたビジュアル的だ。詳しくは書けないが

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朝井リョウ「生殖記」何も知らずに読めてよかった

朝井リョウ「生殖記」何も知らずに読めてよかった

朝井リョウの新作、まだ情報が出回らないうちに読めてよかった。
というのも、まず仕掛けが出オチ系。もちろんその後もきちんと楽しめる作品ではあるが、大きな仕掛けにまずは呆れる。
これまで全く前例がないわけではない仕掛けだが、非常にチャレンジングな一作。
とにかく内容については一切知らないで読んだ方がいい。読書の楽しみと驚きをきっちり味わえる。
<10月上旬発売予定>

配信「ビバリーヒルズ・コップ アクセル・フォーリー」シリーズ作復活!配信のおかげ

エディ・マーフィーの人気シリーズの30年ぶりの続編。
主人公のアクセル・フォーリーはデトロイトに移っていたが、弁護士の娘が関わる事件のためにビバリーヒルズに戻ってくる。
底抜けに明るく、意味なく派手なスピリッツはそのまま。ザッツ・ハリウッド・エンターテインメント。
しかし年齢相応な表現になっているのがいい。歳をとってきた実感、時代が変わって変わった社会意識などがちょっとずつ挟み込まれている。
観て

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映画「FPS」ゲームのFPSというより映画のPOV

映画「FPS」ゲームのFPSというより映画のPOV

プレイヤーの視点でゲームを展開していくシューティングゲームをFPSと呼ぶ。この映画は全編を主人公目線で展開している映画なのでFPSと名付けたようだ。
しかし映画の手法で言うとPOVと呼ばれるものになる。FPSとは「First Person Shooter」の略なので、主人公が「戦う」という意味では、この映画は厳密なFPSではない。
POVは「Point Of View」の略で、主観視点で展開する映

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マンションの大規模修繕費が大変なことになりそう

マンションの大規模修繕費が大変なことになりそう

ネットを見ていたら、住宅のリフォーム工事代が大幅に上がっていて、不動産投資をしている人たちの大きな負担、収益減になっているそうだ。そもそも不動産投資とは、物価と家賃が連動しているという「幻想」に基づく投資。しかし現在のようなヘンなスタグフレーション経済の中では、物価が上がっても家賃は上げられない。なので不動産投資家にとっては冬の時代になってしまう状況だ。
しかもコロナによりリモートワークが普及し、

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映画「このろくでもない世界で」見終わって陰鬱とした気持ちになる韓国ダークノワール

映画「このろくでもない世界で」見終わって陰鬱とした気持ちになる韓国ダークノワール

韓国には、格差社会からこぼれ落ちた最下層の下を描くディストピア・ダークノワール映画のジャンルがある。「パラサイト 半地下の家族」はその代表。そしてこのジャンルには傑作が多い。
この作品も、見終わって陰鬱とした気持ちにしかならない映画だが、間違いなく傑作。真っ当に頑張って生きていたら絶対に這い上がれない人生に差し込んだ一筋の光。それが、偽りの光だったことに気が付かず、すがってみればさらに地獄へと引き

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映画「クワイエット・プレイス DAY 1」一発芸映画のIPがこんなにもシャブれるとは…

映画「クワイエット・プレイス DAY 1」一発芸映画のIPがこんなにもシャブれるとは…

「クワイエット・ブレイス」シリーズは、まず第1作目がとんでもなく良くできていた。絶妙な設定の家族と、待ち受ける「出産」というイベント。
2作目では、生まれた赤ん坊を抱えた家族のその後を描く。

そして3作目は時間を遡り、この事態の初日から描き始める。
だが真の物語は、主人公2人の新たなサバイバルストーリーだ。これがなかなか良くできている。日本ではそれほどヒットしていないようだが、いやいや実はすごく

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映画「ザ・ウオッチャーズ」父娘の血は争えない

映画「ザ・ウオッチャーズ」父娘の血は争えない

世紀のワンアイディア監督マイケル・ナイト・シャマランの娘が監督した超常サスペンス映画。お父さんと全く同じ作風というところに、争えない血筋を感じる。ちなみに父が制作に入っている。
森に迷い込んだ女性は、謎のガラス張りの家に辿り着く。そこには母親と女、息子がいたが、どこか様子がヘン。何かに監視されているという。
その家には「監視者に背を向けない」「ドアを開けてはならない」「光の中にいる」というルールが

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映画「YOLO 百元の恋」元の映画とは違った意味で傑作

映画「YOLO 百元の恋」元の映画とは違った意味で傑作

元になったのは日本映画「百円の恋」。こちらは10年ほど前の映画だが、ダメ女子がボクシングによって再生していく非常に印象的な映画。安藤サクラの芝居の巧さが爆発していた。
その中国でのリメイクがこの作品だ。日本版の映画スタッフが監修として制作に参加していることもあって、非常によくできたリメイク作品に仕上がっている。ただ残念なことに元の作品はもう1人の主役が新井浩文ということなのでなかなか話題にしにくい

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配信「十角館の殺人」割とよくできた映像化

配信「十角館の殺人」割とよくできた映像化

新本格派の古典「十角館の殺人」がHuluでドラマ化されていた。45分程度の5話構成だ。
ストーリーは原作に忠実。なので大きな破綻もなく仕上がっている。役者は知らない人が多いが、役者のことがあまり気にならなくてそれがかえっていいのかもしれない。特にこのトリックにはそこが大切な要素なのだ。
ストーリーはお馴染みのもので、あの有名なトリックも上手く収められている。ただ小説で読んだときの方がインパクトが大

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映画「朽ちないサクラ」都市伝説陰謀論系原作をうまく料理した佳作

映画「朽ちないサクラ」都市伝説陰謀論系原作をうまく料理した佳作

柚月裕子原作ということで観に行く。この人の作品はほとんど読んでいて、特に「慈雨」という作品は大傑作。ある制作会社の人に「主演伊東四朗さんでドラマ化するといい」と話したことがある。
この映画の原作についてはあまりよく覚えていなかったが、映画の冒頭5分ほどですっかりストーリーを思い出した。そうだ、都市伝説陰謀論的ミステリだったのですっかり忘れていたのだった。
地方の県警広報の女性の成長譚で、続編では刑

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小野寺史宜「モノ」日本初のモノレール小説!?

小野寺史宜「モノ」日本初のモノレール小説!?

日本初の「モノレール」小説!!
作者の名前にも覚えがなく、初めて読む人かと思って調べると、女性タクシー運転手を描いたお仕事小説を始め、数作品を読んだことのある人。最近はすっかり物忘れがひどい、まずい・・・
しかも、書影からなんとなく児童小説かと思い読み始めたら、全くそんなことはない。羽田と浜松町を結ぶ東京モノレールを題材とした立派な大人向きの短編連作。
最近は企業や自治体が製作費を提供し、その企業

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小原瑞樹「ハートレス・ケア」ちょっと珍しいケア小説

地方の小さな出版社が「介護、医療、福祉」にジャンルを絞って募集した小説コンテストの第一回大賞受賞作。
コンテストは第3回まで続いているようだ。このような試みは業界を活性化する。その先にある映像化なども含めて、さらに続いていくことを望む。

この小説の主人公は、就活に失敗し、やむなく「介護」の仕事を選んだ青年。しかも現場でヘルパーをしている。毎日がイヤでイヤでならない。1日も早くこの仕事を辞めたいと

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