ふかや まもる

テレビ局でテレビ番組を作って、はや40年・・・ 銭湯と立ち食いソバはサイコー!本に音楽…

ふかや まもる

テレビ局でテレビ番組を作って、はや40年・・・ 銭湯と立ち食いソバはサイコー!本に音楽、映画、舞台・・・人生には楽しいことばかり!

最近の記事

寺地はるな「いつか月夜」ほっこりとする小説

父を亡くしてなんだかよくわからない不安を感じ始める平凡なサラリーマンの男性。その不安が「黒いモヤモヤ」として出現する。それを「モヤヤン」と名づけるエピソードにまず心を掴まれる。 不安を紛らわすために「夜の散歩」に出ると、会社の同僚に出会う。しかも子供と一緒にいる。自分の子供ではなく、一緒に暮らしていた男性の連れ子。男性とはもう別れている。いやあおもしろい。 とにかく登場人物が皆、魅力的だ。それぞれに個性があり、背景があり、そして秘められた想いや事情がある。 誰にも「色々なこと

    • 映画「フォールガイ」 お気楽で底抜けに楽しいコメディテイストのアクション映画

      ライアン・ゴズリング主演の能天気アクション映画。 主人公はスタントマン。撮影中の事故で怪我を負い、レストランの駐車係をしていたが、撮影現場に呼び戻される。そして事件が勃発する。 監督は元カノという設定がよい。ストーリーはまあそんな感じという程度だが、色々なスタントが見られるのが楽しい。とにかく徹底してエンターテインメントだ。 ラストにはNG集があってジャッキー・チェン映画のような楽しさ。 コメディ、アクション、恋愛などとにかく全部詰め込んで、飽きさせることなくたたみかけていく

      • 古内一絵「十六夜荘ノート」戦前〜戦中〜戦後、そして今を繋ぐ大河物語

        書店にこんな激推しコーナーがあると、読まないわけにはいかない。 海外で亡くなった大伯母から屋敷「十六夜荘」を相続することになった会社員。しかしその屋敷はシェアハウスになっていて、格安の家賃でユニークな人々が住んでいる。 過去と現在をカットバックしながら展開していくストーリーは、割と王道ではあるが、しっかりと骨太。読み応えがある。この本を激推ししている書店があるのも納得の出来だ。 現代パートの主人公の男性サラリーマンもいい。会社ではできるサラリーマンだったが、意外な地雷を踏み

        • 「NHKスペシャル 調査報道・新世紀 File3 子どもを狙う盗撮・児童ポルノの闇」

          前後編2週にわたって放送された。前編は未成年者をターゲットとしたSNSコミュニティを扱い、後編では児童ポルノの売買を仲介するアプリを扱う。 特に後編は興味深かった。 「アルバムコレクション」という動画販売のアプリが児童ポルノの温床になっているという実態を追ったドキュメンタリーだ。購入者は160円を支払うと一時的なパスキーをもらえ画像や映像を閲覧できる。投稿者にはそのうち15円が支払われるという。そこで扱われているのが児童ポルノということだ。 パスキーの有効時間は短く、追跡で

        寺地はるな「いつか月夜」ほっこりとする小説

          ドキュメンタリー映画「大きな家」どうやって取材対象者との関係値を作れたのか

          児童養護施設を長く取材したドキュメンタリー。そこに暮らす子供たちに密着取材している。子供たちは実名、顔出しで取材している。テレビでよくある日和ったモザイクは一切ない。 しかしその代わり、映画の初めと最後に監督からのメッセージが入る。「子供たちのことを探ったり、SNSで発信したりしないで欲しい」 取材対象者をきちんと守り抜くという監督の決意がここにはある。 欧米式のノーナレーション。数名の子どもに特にスポット当て、それぞれの物語を紹介するオムニバス形式。 このドキュメンタリー

          ドキュメンタリー映画「大きな家」どうやって取材対象者との関係値を作れたのか

          五十嵐貴久「コンクールシェフ!」肩の力を抜いて気軽に読みたいエンタテインメント

          あれっ、この小説読んだことあるなあ。 読み始めてすぐに気がついた。単行本が刊行されたとき「『料理の鉄人』に携わった著者」という惹句に惹かれて読んだのだが、今回もまた同じ。番組は他局だがよく観ていたし、その後、ある番組で「鉄人」の演出、構成作家、フードコーディネーターなどのチームとある番組をご一緒したことがあり、そんなこともあって惹かれたのだろう。 読んだ本だからなあと思いながらもまた読んでしまった。まるでテレビドラマを観ているように光景が目に思い浮かび、非常に読みやすい本だか

          五十嵐貴久「コンクールシェフ!」肩の力を抜いて気軽に読みたいエンタテインメント

          田村和大「修羅の国の子供たち」極道の子どもたちが任侠に生きるピュアストーリー。

          全く知らない作家の方だが、経歴を見るとNHKを経て弁護士というなかなか異色。なのでとてもユニークな作品となっている。 この本は「ヤクザの親」に生まれた子供たちの生き方を描く骨太な作品。 前に「犯罪加害者家族」のことを調べたことがあるが、例えば親が交通事故で人を殺めてしまったとき、多くの家庭は崩壊の危機を迎えていた。仕事を失い、住むところも追われ、転校も余儀なくされる。悪意なき「犯罪」でもこうなのだから、故意の犯罪ではさらに状況は厳しい。 例えば親が破廉恥な罪で捕まったとき。家

          田村和大「修羅の国の子供たち」極道の子どもたちが任侠に生きるピュアストーリー。

          映画「人でなしの恋」

          江戸川乱歩の「人でなしの恋」を割と忠実に現代に翻案、映画化したもの。なのでストーリーはよく知られたものだし、そこに驚きはない。 なのに無理に謎を謎として成立させようとしているのがまどろっこしい。「もうわかっているからさぁ」という割り切りで変態の気持ち悪さをうまく表現した方が面白い映画になったのにと残念に思う。 主役の兎丸愛美が不思議な魅力を振り撒く。微妙に不幸そうな美人というのがいい感じ。 ちょっとした濡れ場もあって、それもまた江戸川乱歩らしい。

          映画「人でなしの恋」

          浅野 祐一、 鬼ノ 仁「一級建築士矩子と考える危ないデザイン」舐めてはいけない本格建築テキスト

          表紙はラノベチックでヤワな本かと思って読むと、全くそんなことはなく、けっこうハード系の建築テキスト。 柔らかチックにイラストで説明もあるが、本文は実際のトラブル例、事故例をもとに、建築で起こしがちなトラブルとその予防策を記している。 内容は「滑り・つまづき」「外壁落下」「開口部落下」「開口部からの転落」「水平開口部からの落下」「挟まれ・ぶつかり」「反射光害」「糞尿被害」「シックハウス」「注意すべき4つのデザイン」となかなかハードだ。それもそのはず、「日経クロステック」での連載

          浅野 祐一、 鬼ノ 仁「一級建築士矩子と考える危ないデザイン」舐めてはいけない本格建築テキスト

          映画「BEAST」

          本を読んでいてもたまに「あれっ、このストーリー知っている」と思うことがある。そう、気づかず2度目を読んでしまっているのだ。最近はほとんどを電子書籍で読んでいるので、ダブり買いはアラートしてくれる。それでもAmazonの紙や電子で読み、hontoの電子でまた買ってしまうなんてことはたまにある。 配信で観るようになって、映画のダブりも頻発だ。 大抵は2度目は途中で止めようと思うことが多い。この作品も以前配信で観ていた。始まって数分で気がついたが、まあいいかと観続けた。というのもそ

          映画「BEAST」

          東京喜劇 熱海五郎一座「スマイル フォーエバー ~ちょいワル淑女と愛の魔法~」

          知人の舞台役者が最近、私よりずいぶんと若くして亡くなり、しばらくはなんだか舞台を観たいという気持ちにはならなかった。が、先日、ひょんなことからシェークスピアの翻案劇を観て、そしてこの東京喜劇。やはり舞台はいいなあと改めて感じる。 新橋演舞場での公演ももう10回目とのこと。SETの公演も長く続いているが、どちらも続けていけていることが素晴らしい。舞台は観客があってのものだから、それだけ続けられるということは、それだけのニーズがあるということ。実に素晴らしい。 しかも今回は伊東

          東京喜劇 熱海五郎一座「スマイル フォーエバー ~ちょいワル淑女と愛の魔法~」

          映画「ザ・ハッスル」

          配信でレコメンドされた5年ほど前のクライムコメディ。「ペテン師とサギ師 だまされてリビエラ」のリメイク。 アン・ハサウェイとレベル・ウィルソンが主演。 もうちょっと小気味よいといいのだが、全体的にモッタリとした感じ。あまり切れ味が良くない。 それにしてもこんな映画があったとは全く知らなかった。

          映画「ザ・ハッスル」

          映画「ザ・ファブル」「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」よくできたコメディアクション

          岡田准一主演のコメディアクションの佳作を続けて観直す。 このシリーズの素晴らしいところは、細かなコメディセンスはいただけないが、何よりアクションのレベルがものすごく高いこと。特に、続編の足場のかかったマンションのベランダを使ったアクションシーンは日本映画としてずば抜けた出来だ。 おそらく原作のコメディ要素がうまくはまっていないようなので、そこを映画に合わせて改良すれば、グローバルに発信できる可能性もある。 前作からはもう3年ほども経ってしまっているので、ぜひ次作の制作を楽しみ

          映画「ザ・ファブル」「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」よくできたコメディアクション

          映画「みなに幸あれ」

          これはジトっとして、ベタっとして、真綿で首を締められるような怖さの「田舎ホラー」だ。特に都会に育ってきた者には身に染みる怖さ、不気味さ満載だ。 都会で暮らしていた女性が田舎を訪ねる。祖父母や村人には、歓迎されるが、どこかみんな様子がちょっと変。そして家の様子もおかしい。 ただでさえ昔の木造の家は木が乾燥して音が鳴ったりするので怖い。しかしこの家は乾燥音どころではない、もっと大きな、そして異なる音がする。 祖父母の様子がおかしい。ちょっとボケているという感じではなく、行動自体が

          映画「みなに幸あれ」

          フライングシアター自由劇場 第二回公演「あの夏至の晩 生き残りのホモサピエンスは終わらない夢を見た」@新宿村LIVE

          舞台の稽古場として知られている新宿村に併設されている劇場。初めて行った。キャパが200ちょっとの観やすい劇場だ。長く続いた「オンシアター自由劇場」を1996年に解散して後、再び串田和美が新しいプロデュース公演を始めた。その名が「フライングシアター自由劇場」。 六本木から西麻布に向かって行くところに立つ硝子店の地下にホームシアターがあった「オンシアター自由劇場」の代表作はなんといっても音楽劇の「上海バンスキング」で、「クスコ」や「もっと泣いてよフラッパー」なども良かったが、圧

          フライングシアター自由劇場 第二回公演「あの夏至の晩 生き残りのホモサピエンスは終わらない夢を見た」@新宿村LIVE

          森バジル「なんで死体がスタジオに!?」ネット時代のテレビ局が舞台

          テレビ局で事件が起きるという小説は昔からけっこうあった。でもどれもあまりピンとこない作品ばかりだった。 それらに比べてこの作品はかなり同時代的でピタッとくる感じがする。ずいぶんとテレビ放送の今を取材して描かれたのではないかと感じた。特に出てくる固有名詞がまさに今のテレビだ。番組名、人名、そして今の放送システムなどをなかなか丁寧に取材している。 一昔前のテレビは、大がかりで煌びやかで、ちょっと異世界感があった。それがIT、ネットのおかげで個人でも映像を発信できる時代になった。そ

          森バジル「なんで死体がスタジオに!?」ネット時代のテレビ局が舞台