ふかや まもる

テレビ局でテレビ番組を作って、はや40年・・・ 銭湯と立ち食いソバはサイコー!本に音楽…

ふかや まもる

テレビ局でテレビ番組を作って、はや40年・・・ 銭湯と立ち食いソバはサイコー!本に音楽、映画、舞台・・・人生には楽しいことばかり!

最近の記事

一穂ミチ「恋とか愛とかやさしさなら」生理は全てを超越する

芥川賞直木賞の記事を読んでいたら、覆面作家の話が出ていた。今回のノミネートのうち3人が顔出しNGの覆面作家だったという。直木賞の受賞者である一穂ミチさんもその一人だったが、受賞を機にマスク姿を解禁した。この匿名性、今どきである。承認欲求が肥大化している現代だからこそ、真っ当な精神の持ち主であれば個人情報を秘匿して匿名であることを選択する。一穂さんのマスク姿、個人的には好感爆上がりだ。 そしてこの新作も、ものすごく興味深かった。夕食の後ちょっとだけ読もうとしたところ、あまりに没

    • 河﨑秋子「銀色のステイヤー」動物と北海道を書かせたら当代一の才能

      前に「世界馬紀行」という6分のミニテレビ番組を担当したことがある。競馬馬を育てている各国の牧場を紹介するという番組。私は他の仕事で忙しかったので実際のロケに同行することはなかったが、ある程度構成を決めたところでニューヨークに住むカメラマンに撮影を依頼し、まとめてロケをしてきてもらう。その素材を送ってもらい、日本でディレクターが編集して番組に仕上げるというちょっと変わった制作体制の番組だった。 その番組を見ていると、どの牧場も広々として気持ちいい。そしてそこで働く人たちも気持ち

      • 「物語コーポレーション」のユニーク経営

        「物語コーポレーション」の話題を聞くことが多くなっている。特にチェーングルメ系を扱うテレビ番組でその話題を聞くことが多い。きっと積極的にテレビ露出を図っているのだろう。 私が初めてこの企業のことを知ったのは、カンブリア宮殿のプロデューサーをしていたとき、2010年のことだった。制作スタッフが持ってきたリサーチ資料を見たとき、「物語コーポレーション」という企業名に正直気乗りがしなかった。 しかし経営についての話を聞くとこれはユニークと思い、すぐに番組で紹介することとした。 まず

        • 映画「バッドボーイズ RIDE OR DIE」懐かしIP復活が流行

          つい先日、Netflixで「ビバリービルズ・コップ」の新作が公開され、「ゴーストバスターズ」のリブートも公開された。やはり強いIPにはつい縋りつきたくなってしまうのだろう。こんどは「バッドボーイズ」が復活だ! シリーズ初作は1995年で、その後8年、13年で新作が作られ、今作はちょっとスパンが短く4年後に作られることとなった。 ストーリーはシンプルだ。 亡くなった上司に汚職疑惑が持ち上がる。2人は汚名をそそぐべく捜査を始めるが、警察内からも敵対する組織からも追われることにな

        一穂ミチ「恋とか愛とかやさしさなら」生理は全てを超越する

          真下みこと「かごいっぱいに詰め込んで」令和のハートウォーミングストーリー

          セルフレジが普及し始めた頃、「スローレジ」が話題になったことがある。セルフレジに対応できない高齢者や障害者が、後ろに並ぶ人に焦らされることなくゆっくりと清算できるレジが地方のスーパーなどで設けられたというニュースだ。 その際にフランスの「おしゃべりレジ」も話題になった。店員と楽しくおしゃべりしながら会計できるというこのシステム、コロナ明けでコミュニケーションに飢える世代に人気になったという。 この小説もそんな「おしゃべりレジ」が舞台になっている。 第一話は、子供の手が離れた主

          真下みこと「かごいっぱいに詰め込んで」令和のハートウォーミングストーリー

          結城真一郎「やらなくてもいい宿題」

          最近話題の結城真一郎の新作は、小学校5年生が対象のジュブナイルだ。さすが開成中学卒業生作家、受験で習う「旅人算」とか「つるかめ算」とか、そして「ニュートン算」も登場する。それかをわかりやすく物語の中で説明してくれる。いわば学習ミステリなのだ。 男子小学生の主人公の学校に女子転校生がやってくる。そしてちょっとした経緯で、彼女から問題を出され解答しなければならないことになってしまう。 その問題は算数の問題だが、そこにはちょっとしたトリックがあって、一筋縄では解くことができない。正

          結城真一郎「やらなくてもいい宿題」

          映画「犯罪都市 PUNISHMENT」マブリー版"刑事はつらいよ"

          このシリーズも、はや4作目。3作目はちょっとダレた感じがあったが、4作目にしてまた面白さが復活している。これって意外にも息の長いシリーズになっていきそうな気がする。 今回のテーマは、IT犯罪、中でも最近話題のオンラインカジノだ。 オンラインカジノについてはあまり知識がなかったが、つい先日、NHKの番組で特集されていて、ちょっと知識を得た。。 基本はカジノにリモートで参加するイメージだ。いくつかのゲームがあって、それぞれに複数のテーブルが設けられている。さらにそれぞれにディー

          映画「犯罪都市 PUNISHMENT」マブリー版"刑事はつらいよ"

          日野瑛太郎「フェイク・マッスル」チョコザップが人気の理由も納得できる

          これが江戸川乱歩賞受賞作なのか?というのが最初の感想。実にライトでポップ。個人的には全然アリの作品で、けっこう楽しめたが、果たしてこの章の歴史の中ではいかに評価されるのか。 3度の最終候補を経ての受賞ということなので、間違いなくきちんと書ける作家の人。ただ、文体、ストーリー共にチョット軽い感じがどう受け止められるのか。テレビがYouTubeに淘汰されたように、ミステリもライトなものに収束していくのかもしれない。それが時代だ。 突然マッチョになったアイドル。ドーピングが疑われ

          日野瑛太郎「フェイク・マッスル」チョコザップが人気の理由も納得できる

          穂波了「月面にアームストロングの足跡は存在しない」そんなにSF臭くないので大丈夫

          今年、アポロ11号を題材にした映画が公開された。「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、「アポロ11号は月面に到着していない」という有名な都市伝説を題材にした映画で、月面着陸のフェイク映像を作るドタバタを描いているらしい。未見。 この小説もアポロ11号を題材にしている。月軌道のプラットフォームに滞在する6人の宇宙飛行士は「実は、アポロ11号は月に行っていない。この事実を隠蔽するために月に行ってアームストロングの足跡を偽造してほしい」と命令される。ところが事故が発生して・・・とい

          穂波了「月面にアームストロングの足跡は存在しない」そんなにSF臭くないので大丈夫

          映画「ゴールド・ボーイ」けっこうしっかりとしたノワール作品

          この映画、なぜか子供が友達に誘われ、ほぼ公開と同時に観に行った作品。「割と面白かった」評価だったので何となく気になっていたが、公開規模も小さく、結局観に行かないままだった。 配信で観るチャンスがあって気になって観たが、これが想像以上に面白く、しっかりとした暗黒映画だった。 映画の成り立ちはチョット複雑。 そもそもの原作は中国のミステリ小説で、それをアジアの大手動画配信プラットフォームiQIYIで海外戦略作品としてドラマ化し配信した。 その流れで、iQIYIの日本の代理店であ

          映画「ゴールド・ボーイ」けっこうしっかりとしたノワール作品

          金子玲介「死んだ石井の大群」作者の名前は覚えてなくても本のタイトルは覚えている

          前作の「死んだ山田と教室」は、事故で突然死んだクラスの人気者が教室のスピーカーになって蘇るという奇妙奇天烈な小説だった。しかも呼び出す時には、普段絶対に口に出さないであろう言葉を合言葉にしようということで「おちんちん体操第二」にする。誰かが「おちんちん体操第二」と唱えると、亡くなった山田の憑依したスピーカーから声が聞こえる。死んだ山田は暇を持て余し、深夜に一人でディスクジョッキーをする。うーん、完全脱力系の物語だ。しかしラストは意外にもセンチメンタルな気持ちになり、読後感がい

          金子玲介「死んだ石井の大群」作者の名前は覚えてなくても本のタイトルは覚えている

          映画「首」ヒョエーッ、首が飛んでる!

          ちょっと前の話題の映画。見逃していたので配信で。 時代劇だがSFXの力を借りて、グロシーンもきちんと描いている。さすがの北野映画。刀で人の首を刎ねるとこんなふうに飛んでいくのかって納得させてくれる。 微妙に現代劇風の喋り方には違和感がないわけではないが、実際に戦国時代にどんな喋り方をしていたかなんて今では推測でしかないので、「戦国時代はこんな喋り」という方が固定概念、思い込みなのかもしれない。 時代劇の形ではあるが、描いているのは人間ドラマで、「人の欲望の本質は何か」に迫ろ

          映画「首」ヒョエーッ、首が飛んでる!

          「映画 マイホームヒーロー」

          テレビドラマも見ておらず、原作のコミックを読んでいないまま映画版を鑑賞。あまり丁寧ではないが物語の前提は説明してくれて、何とかついていくことはできる。 特に前半部分はテンポ感も良く、けっこう期待感で盛り上がる。 ところが中盤から気持ちタダ下がり。とにかく脚本が下手すぎ。なんかシノプシスだけを見せられている感じだし、とにかく必然のないストーリー。 映画って贅沢な娯楽だったはずなのに、何だか貧乏くさいのも辛い。役者の力量の違いもけっこう大きいし。なんかアンバランス。 そもそも映

          「映画 マイホームヒーロー」

          映画「SUPER HAPPY FOREVER」

          人との出会いが人生をハッピーにしていく。そんな前向きな気持ちになれる映画作品。 まずはパイロットとして短編を制作し、それを同じスタッフ、キャストで映画化した長編作品のようだ。 幼馴染の2人がまもなく閉館となる寂れたホテルを訪れる。一人は怪しげなセミナーに傾倒する男、もう一人は妻を亡くした男。男は妻との想い出をホテルに探していく。 主な出演者は男2人に女2人とコンパクト。取り立てて何かすごい事件が起きるわけでもなく、淡々と日常がスケッチされていく。何だかとっても草食な描写だが

          映画「SUPER HAPPY FOREVER」

          映画「ナイトスイム」安心のブラムハウス印

          ホラー映画って意外にセンスが必要で、ただ怖がらせればいいものでもないし、怖がらせ方にもテクニックが要る。そこはさすがのホラーエリート「ブラムハウス」しかもジェームス・ワンとジェイソン・ブラムが共同で制作にあたっている。これは間違いない。 故障した野球選手一家が、リハビリのためにプール付きの家を購入する。なぜかプールはしばらく使われていなかったよう。 きちんと整備し清掃してプールを使い始めると、みるみる体調が戻ってくる。しかし他の家族は奇妙な経験をするようになって・・・というお

          映画「ナイトスイム」安心のブラムハウス印

          福田悠「京都伏見の榎本文房具店 真実はインクに隠して」ライト文房具ミステリ

          文房具はギア業界でも一種独特な世界を成している。チープファンシーから超高額まで、とにかく振り幅が大きい。 本書は、都内の老舗文具店に勤める主人公が、京都で文具店を営む祖母の逝去を機に久しぶりに店を訪れることから始まる。もちろん主人公はある種の文房具マニアだ。知識も豊富。そういえば、テレビチャンピオンの文具王の人も文具メーカーに勤めていた。 連作のそれぞれはミステリ仕立てになっているが、そこまでハードなミステリではなく、ライトに楽しめるエンタインメントに仕上がっている。 登場す

          福田悠「京都伏見の榎本文房具店 真実はインクに隠して」ライト文房具ミステリ