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福田悠「京都伏見の榎本文房具店 真実はインクに隠して」ライト文房具ミステリ

文房具はギア業界でも一種独特な世界を成している。チープファンシーから超高額まで、とにかく振り幅が大きい。
本書は、都内の老舗文具店に勤める主人公が、京都で文具店を営む祖母の逝去を機に久しぶりに店を訪れることから始まる。もちろん主人公はある種の文房具マニアだ。知識も豊富。そういえば、テレビチャンピオンの文具王の人も文具メーカーに勤めていた。
連作のそれぞれはミステリ仕立てになっているが、そこまでハードなミステリではなく、ライトに楽しめるエンタインメントに仕上がっている。
登場する文具も、鉛筆、万年筆、ガラスペン、墨など、なかなか魅力的なアイテムだ。それぞれの蘊蓄も楽しい。
京都という古都の風情とこだわりの文房具、この組み合わせが魅力的で気持ちよく読み進められる。
肩肘張らず気軽に楽しめる一冊。文房具ミステリはそのくらいライトなほうがいい。

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