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【ファジサポ日誌】27.もっと河井を!~第41節vsブラウブリッツ秋田~

こんにちは。
10月半ばながら、もうホーム最終戦を迎えなくてはならない。
あらかじめ分かっていたことですが、少し慌ただしさを感じずにはいられない今シーズンです。

これからが秋深まる空気の下、サッカーを楽しめるのに…と思っていましたが、結果的にこの後もファジのサッカーを楽しめることができますね。

色々と悔しさも募る試合になりましたが、他力とはいえリーグ戦3位を最終戦を待たずに確定できた点は、今後の戦いに向けて大きいと思いますし、クラブ史上最高順位をマークしたチームは称賛に値します。

しかし、3連勝中の好調秋田相手とはいえ、この試合の試合運びはまずかったと思います。

私自身の中で入り交じるポジティブとネガティブな感情をこのレビューで整理してみたいと思います。
今回もおつき合いいただけましたら幸いです。

1.秋田戦 試合結果&スタートメンバー
2.この試合の敗因
3.河井陽介にもっとボールを預けよう
4.河井の初ゴールでムードは最高潮に
5.繰り返されたカウンターでの失点
6.不満が残る同点後の振る舞い

1.秋田戦 試合結果&スタートメンバー

後半5分、CF(7)チアゴのパスからLIH(27)河井が移籍後初ゴールを決めて、声出し応援再開、12,570人の観衆を集めたスタジアムのボルテージは最高潮に達したましたが、9分後に秋田得意のカウンターから痛恨の失点を喫します。

J1自動昇格の可能性を残すためには、勝利が最低条件となる岡山は、その後も攻勢を強めますが、秋田の守備を崩すことが出来ず、逆にATに隙を突かれて勝ち越しゴールを献上、敗戦を喫しました。

この敗戦により、残り1試合で2位以内に到達することは不可能となりJ1自動昇格の可能性は消滅しました。一方、2時間遅れでスタートした仙台vs熊本で4位熊本が敗れたため、最終節を待たずして岡山の3位も確定、クラブ史上最高順位をマークすることが確定しました。

第41節 岡山vs秋田 スタートメンバー

岡山はCF(7)チアゴが4試合ぶりに復帰。(15)デュークとの先発2トップを組むのは第36節徳島戦以来となりました。
中盤には(27)河井が4試合ぶりに先発で出場しました。

9月以降、5勝1分1敗と好調の秋田は、ボランチの2枚を前節から代えてきました。
秋田の布陣の特徴はSBにも必ず1人は長身の選手を入れることです。
この試合ではRSBに181cmの(50)加賀を起用していました。

2.この試合の敗因

今回はいきなり結論を述べますが、この試合の敗因は秋田のサッカーにおつきあいしてしまったことにあると考えます。

① 秋田のサッカーを整理


秋田のサッカーが特殊であることはJ2サポの多くが知るところですが、この点を改めて整理しますと、極端な堅守速攻といえます。
岡山も堅守速攻は得意な方であると思いますが、相手陣内でのサッカーを標榜している点や、自陣からビルドアップする一面も持ち得ています。

秋田の場合はそうしたことがほとんどなく、対戦相手がどこであれ、自陣でしっかり相手の攻撃を人数をかけて跳ね返し(前からもプレスをかけますが)、マイボールになれば相手陣内に素早くボールを運び、手数をかけずにフィニッシュに至るというサッカーです。
基本的に相手にボールを持たせますが、ボール奪取で優位に立つため、屈強なフィジカルと走力を持ち合わせた選手が揃っている点も特徴的です。

データも秋田のサッカーの特徴を如実に現わしています。

フットボールラボの指標では自陣、敵陣関わらずポゼッション数値は30台前後と極端に低いのですが、注目すべきはカウンターの数値です。
ショートカウンター70(2位)、ロングカウンター80(1位)と共に高い数値を弾き出しています。
一方でカウンターからのシュート率は高くはなく、共に10%前後と低くなっています。

こうした点からも秋田を攻略するには、秋田のカウンターを発動させない、カウンターの本数を抑える、カウンターを止めるといった対策が必要となります。

こうした点を踏まえまして、この試合の岡山の攻守を振り返ります。

② 秋田におつきあいの前半

もったいない試合運びになっていたと感じたのが前半でした。
岡山は2トップの(15)デューク、(7)チアゴが縦関係となり、(15)デュークが落としたボールを(7)チアゴが裏で受けるという形を狙っていましたが、この2人に対して秋田はしっかりマークをつけており、まず(15)デュークが競り勝つ場面が少なかったように思えます。また(7)チアゴもプレースペースを十分に与えてもらえず、単発のチャンスはありましたが、この2トップが機能していなかったと感じました。

秋田の守り方はあらかじめ分かっていたはずなのですが、岡山は前半あえて主に空中戦を選択。セットプレーも含めてパワーで真っ向勝負を挑んだのですが、前述しましたように秋田はRWBにも長身選手を起用。PA内に浮き球のクロスを送るも、ことごとく跳ね返されていました。

前半はクロスのほとんどが浮き球でしたが、RWB(16)河野のクロスの精度もいまいちでした。

また地上戦でも秋田が守りやすいゾーンへパスを出すシーンが散見され、岡山は自ら秋田の守備におつき合いしているように見えたのでした。

では、2列目も含めて非常に低い位置で守る秋田に対して、岡山はどのように攻撃するべきであったのでしょうか?

秋田に空中戦を挑んだ前半。岡山の攻撃は後手にまわる。

3.河井陽介にもっとボールを預けよう

いつもホームゲームを一緒に観ている友人がゲーム中、ぽろっと漏らした指摘が非常に的確と感じました。

自陣内に張りついている秋田の選手をもっと外に引き出し、バイタルにスペースを作る必要があったのではないでしょうか?

そこで有効な役割を果たす可能性があったのが(27)河井です。
前半から2つのシーンを挙げてみたいと思います。

まずは前半26分、岡山のスローインのシーンです。

第41節 岡山vs秋田 前半26分のシーン

岡山が秋田陣内でスローインを得ます。(16)河野は右サイド奥に流れた(7)チアゴに出しますが、秋田(13)才藤、(16)井上、(8)茂、そしてマーカーの(15)江口の計4人に囲まれてしまいました。

この場面で例えば(27)河井に出していれば、どのようになっていたでしょうか?
(27)河井は秋田の3人に囲まれており、一見ここに出すのはリスクが高いようにも見えますが、囲んでいる秋田の3人のうち2人は2トップで、仮にここで奪われても後方に岡山守備陣が控えていますので、大事にはならないと予想します。
また(27)河井のこれまでのプレーぶりを考えれば、ここで3人に囲まれてもキープできるだけの力量があり、寧ろ秋田(15)江口を引き出すことができれば、バイタルに(7)チアゴのプレースペースが生まれるのです。

続いて前半42分のシーンです。

第41節 岡山vs秋田 前半42分のシーン

(34)輪笠のパスの選択肢は2つ。(14)田中と(27)河井です。
この場面(27)河井が手を挙げていましたが、(34)輪笠は(14)田中を選択。更に(16)河野に渡り、秋田の密集地帯に走り込む(7)チアゴへパスが出されます。しかし、ここでボールロスト、秋田のカウンターに繋がってしまった場面でした。

このシーンは、まず単純に(27)河井のスペースが広かったので(27)河井に出した方が良かったと思いますし、また先ほどのスローインのシーンと同様で、(27)河井が秋田のボランチを引きつける可能性があり、秋田最終ラインとボランチの間にスペースが出来ていた可能性もありました。
(22)佐野を使う、または(22)佐野がおとりになる展開も期待できました。

なぜこのようになってしまったのか?
それは、岡山の各選手の(15)デューク、(7)チアゴへの意識が強すぎるからだと考えます。
今、挙げました2つのシーン、いかに(15)デューク、(7)チアゴに預けるか、または彼らの近くにボールを送るかが常に優先されているのです。

もちろんこの2人は岡山の攻撃のストロングであり、この2人に決定的な仕事をさせることがチームとしても得点への近道なのですが、彼らの個人能力に頼りすぎるが故に、彼らが前線でプレーしやすくなるような工夫、配慮がチームとして欠けているのです。

対戦相手にとっても(15)デューク、(7)チアゴの2人はストロングであり、厳しいマークの対象になります。彼ら2人に張り付いて構えているところにボールが送られてくる訳ですから、守備側としては非常に守りやすいといえます。

おそらく(27)河井はゴールから逆算して、より決定機を生みやすいプレーをイメージしていると思われますが、この部分がチーム全体で共有できていないような気がするのです。

秋田(29)齋藤に対応する(27)河井。ポジショニングが良く、ゴールも見事。
(29)齋藤のドリブルに振り切られ、同点ゴールを許したシーンが悔しい。

4.河井の初ゴールでムードは最高潮に

しかし、後半はチームとしての戦い方に修正がみられました。
(27)河井の移籍後初ゴールのシーンを振り返ります。

ここは動画の方がわかりやすいかもしれません。
後半に入って、明らかに地上戦を増やしていた岡山ですが、その成果が早速出ました。
右に流れた(7)チアゴが秋田CB(4)池田をつり出すことに成功。ボックス内には(15)デュークと(22)佐野が入っており、更に(14)田中が中央に侵入。(4)池田は(7)チアゴが中にクロスを入れてくると思ったのか、重心が左に寄りますが、(7)チアゴは(27)河井へ意表をつくマイナスのパスを送ります。(27)河井は冷静にコースを突くキックでゴールを割ります。
(15)デュークらの存在に集中していた秋田の守備の逆をつく(7)チアゴの視野、パスも素晴らしかったのですが、特筆すべきはやはり(27)河井の動きです。
攻守ともに各選手がゴール前へとスピードを上げていく中、(27)河井は1人ボックス手前でスピードを緩めます。このスピードダウンで、自身の前にシュートコースを作っているのです。

低調に終わった前半の修正がチームとして図れていたと思われるシーンで非常にこの試合は有利になったと手応えを感じたシーンでした。しかし…

(27)河井の先制ゴール!見事なコントロールショット
アシストの(7)チアゴと(27)河井

5.繰り返されたカウンターでの失点

秋田(29)齋藤の迷いのないドリブル、シュートは見事でしたが、(29)齋藤は前半からシュートを放っており、前半から何度か秋田にカウンターの機会を与えていたツケが回ってきたと感じました。

後半5分の先制点が見事であっただけにこの失点は非常にもったいなく、この後の岡山の重石となってしまいました。

解せないのは、この前の(41)徳元のロングスローの流れから約40秒もの間(5)柳、(23)バイスが前線に残り続けたことです。

2点目を獲りにいくことが悪いとは思いませんが、先制点を奪えば高い確率で勝利できる岡山でありながら、まるでビハインドの状況のような攻撃を仕掛ける必要は全くない場面でした。
(22)佐野から(34)輪笠へ下げたタイミングでCBのうち1人は帰陣すべきであったと私は考えます。
2位横浜FC、4位熊本の得失点差を考えても岡山がこれ以上得失点差を広げる必要性も考えにくく、この無理して2点目を獲りにいった意図は一体何であったのか?

もっと述べますならこの試合のチームとしてのテーマは何であったのか?
何度考えても解せないのです。

もし、スタジアム全体が先制点以降イケイケのムードを作ってしまっていたなら一サポとして反省したいところです。

6.不満が残る同点後の振る舞い

後半序盤から地上戦を織り交ぜ、秋田の堅い守備をこじ開けることに成功したにも関わらず、同点後の岡山の攻撃は再び力任せのクロス、放り込みに終始してしまった感があります。

秋田の中央は変わらず高いので、そこを通り越すファーへのクロスから折り返しを狙う意図は感じとれましたが、秋田に難なく対応されてしまいます。

同点後の岡山はクロスを入れども入れども秋田に跳ね返される
最後は(35)堀田も攻撃参加したが

この試合はホーム最終戦であり、声出し応援の再開、12,000人を超えるサポの後押し、そして数日前に発表された(6)喜山康平、(17)関戸健二、(2)廣木雄磨、(18)齋藤和樹、(11)宮崎智彦の退団と、昇格争い以外にも選手を発奮させる材料に溢れた試合でした。
その気迫が完全に空回りしていた印象です。

グラウンド一周に加わった(6)喜山

一方、秋田は吉田謙監督のコメントのとおり、どのような状況でもやることは変わりませんでした。秋田の冷静さに敗れた一戦でした。

前々節の金沢、そして今節の秋田と共に好調の中位クラブと秋とは思えない暑さの中で対戦しましたが、この条件では完敗することも十分あり得る。
残念ながらこれが今の岡山の現在地であると認めざるを得ません。

勝ち越しゴール後の秋田
いつもDAZNで観ていた弾幕。スローガンどおりの秋田の戦いぶりであった。
ほろ苦い古巣対戦となった(34)輪笠

この先、プレーオフを勝ち抜くには、一工夫、二工夫とアイデアが必要となります。
しかし、今シーズンの岡山は再開試合のバイスのゴール、セットプレーのバリエーション、大胆なフォーメーション変更など、様々な創意工夫で勝ち抜いてきたチームです。

試合終了後のセレモニーでは(17)関戸健二、(6)喜山康平がスピーチをしました。両選手のスピーチ、特に(6)喜山のスピーチからは今シーズンのチームの飛躍の中で忘れかけていたクラブ草創期の苦しい時代を思い出させてくれました。
そんな苦しい時代を乗り越えてきた岡山が、この1敗で揺らぐことはない。
改めて残り4戦に向けて気持ちを新たにすることが出来ました。

(15)デュークをもってしてもこの暑さはキツイ

まとめ

それではまとめます。
1.前半の岡山は秋田が守りやすい攻撃に終始した
2.もっと河井にボールを預けることで岡山の攻撃は活性化する
3.後半序盤の地上戦は見事
4.解せないのはカウンター失点前の岡山の振る舞い
5.同点後の岡山の攻撃は焦り過ぎといえる

次戦、最終戦で対戦する東京ヴェルディも5連勝中と好調ですが、岡山としてはスタンドからも疲れが見てとれる何選手かを休ます必要もあるかと思います。しかし、プレーオフに向けて一定の結果も求められる難しい戦いになると予想しています。こういう試合だからこそ、選手の近くで応援したくなるものです。

お読みいただきありがとうございました。

【自己紹介】
今シーズンから未熟な内容ながらもレビューを続けております。
ありがたいことに、最近、コメントや反応をいただくことも多くなって参りましたので、少しばかり自己紹介をさせていただきます。

麓一茂(ふもとかずしげ)
40代。社会保険労務士です。
コミュニケーション能力に長けていないにもかかわらず、人の意図、心情、人と人との関連性、組織の決定などを推測しながら、サッカーを広く浅く観ています。

公私において、全体的にこのレビューのような論調、モノの見方、性格だと思います。
1993年のJリーグ開幕でサッカーの虜になり、北九州に住んでいた影響で、一時期はアビスパやサガンをよく観戦していました。
(ギラヴァンツが産声を上げるずっと前の話です。)

ファジはJFL時代からです。
J2昇格がかかったリーグ終盤、佐川急便戦を落とした時の伊藤琢矢選手の涙は未だに印象に残っています。

ずっと何気なく一喜一憂しながら応援していましたが、2018シーズン後半に「なぜファジは点を取れないのか」考えるようになり、ちょっとずつ戦術畑を耕すようになりました。

ミラーレス一眼片手の乗り鉄です。
金沢アウェイに岡山→大垣→東京→上野→水戸→郡山→会津若松→新津→新潟→直江津→泊→富山→金沢という、周囲から不思議がられるルートで入ります。状況が許すようになれば、乗り鉄&away戦のレビューも行いたいです。


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