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【ファジサポ日誌】49.勝機を逸する~第14節FC町田ゼルビアvsファジアーノ岡山

ファジアーノにとって岡山→秋田→岡山→町田と長距離移動を伴ったGW3連戦の締めくくりは、首位町田との雨中の死闘でした。
秋田、山形戦連勝の良い流れのまま先制に成功。町田を困らせるところまではいきましたが、勝つことはできませんでした。チームの健闘を讃えますと共に、残念であったことも事実です。
今シーズンを明確なスタイルで戦ってくる町田を相手に、岡山の良い点、悪い点も改めて浮き彫りになったと思います。今回はこうした点を中心に述べてみたいと思います。

1.試合結果&レビュー

今季初の3連勝とはならず、ドロー決着となりました。
リーグ戦1/3を終え、岡山はリーグ最少のたった1敗ながら、ドロー数も最多の9を数えます。首位とは勝点差9、プレーオフ圏とはわずか勝点差2と「昇格争い」には絡んでいる状態ですが、中盤戦はこのドローをいかに勝ち切るのか、チームに何らかの上積み材料がほしいところです。

J2第14節 町田vs岡山 スタートメンバー

岡山も町田も前節から中3日での戦いとなりました。
岡山は前節山形戦からのスタメン変更は(8)ステファン・ムーク→(7)チアゴ・アウベスのみ。山形戦で殊勲のゴールを決めた(44)仙波大志は2戦続けて先発出場です。なお、ベンチメンバーには2戦続けて切り札(19)木村太哉の名前はありませんでした(※5/8右足関節内果疲労骨折、全治3ヶ月程度とのリリースがありました)。

町田も前節大宮戦からは1人のスタメン変更に止まります。(7)荒木駿太に代えてケガから復帰の(10)高橋大悟が入りました。注目はこの2人のSHの位置です。左利きの(10)高橋が右に入り、前節で右に入っていた右利き(27)平河悠が左に入りました。
そして(15)ミッチェル・デュークも元気に先発出場です。
岡山としては、(10)高橋、(27)平河、そしてベンチの(25)藤尾翔太など過去に手痛いゴールを決められた選手も多く、(15)デュークの恩返し弾も含めて、この4選手にはゴールを決められたくないと個人的には感じていました。

2.レビュー

J2第14節 町田vs岡山 時間帯別攻勢守勢分布図(筆者の見解)

まず戦況全体を振り返ります。
時間帯によっては町田が1分おきにアタッキングサードへの侵入、更に決定機に至っている時間帯があり、町田攻勢の時間(赤色の時間)が非常に多くなっています。これには町田のFKが岡山よりもかなり多かった(20本:13本)ことも影響していたと思います。
岡山の選手がコンタクトの場面でかなりファールを取られていました。

それでも、岡山は押し込まれる展開はある程度想定していたとは思いますが、少々想定を超えていたとも言えます。タフな守備対応が体力を削ぎ、後半はなかなか攻撃に転ずることができませんでした。
それでも選手交代によって76分以降は攻勢を仕掛けましたが、最終局面で精度を欠き、惜しくも勝ち越しゴールは奪えませんでした。

評価が分かれるところですが、首位町田を苦しめましたチームの頑張りは認めつつも、勝てる試合であったと筆者は思います。

最近はプレビュー的な内容をあまり発信していないのですが、この試合は首位との一戦ということもあり、また町田のサッカーも予想しやすかったため、以下のような内容を試合前にTwitterでつぶやきました。

さて、以上①~④の注目点を中心にレビューを進めてみたいと思います。
まずは今季の町田について述べてみたいと思います。

(1)今シーズンの町田ゼルビアのサッカー

新体制1年目でJ2を優勝するサッカーを考えるうえで、昨シーズンの岡山の堅い守備から縦に速いサッカーは町田の大きな参考になったと考えます。

岡山原強化部長、ミッチェルデュークの招聘はその証といえるでしょう。

残っている映像が少ないのですが、エリキは中国でもしっかりプレーしていたようです。J1ならまだしもJ2であれば得点量産の気配が漂います。

いわゆる負けないサッカーをしてくると思います。前線がブレーキでもセットプレーで点を取るサッカーをイメージしています。

昨シーズンとは全く異なるチームになりそうですので、相互理解や戦術浸透にどれぐらいの時間がかかるのかがポイントでしょう。

【ファジサポ日誌】32. 2023 ポストコロナのJ2リーグJ1昇格圏予想 麓一茂

シーズン前の昇格予想記事から町田の部分を抜粋しました。
いわゆる「負けないサッカー」をしているのは間違いないと思いますが、それをベースに「勝ち切る」サッカーが出来ています。
つまり、相手に先制を許さずに試合を進め、先制すると堅い試合運びで逃げ切ってしまう。そんなサッカーです。
この14節を終え、先制した試合は10試合で9勝1分、更に前半30分以内に先制した試合は8試合で7勝1分とデータも町田の手堅さを裏づけています。
それを可能としているのが、J2を代表するメンバーを揃えた屈強な守備陣です。この試合終了時点で総失点はわずか7、1試合平均0.5は脅威の数字といえます。

攻撃に関しては、高さがある選手が多く、(18)下田北斗のような良いキッカーがいることから、セットプレーでの得点が多くなると予想していましたが、実際には30m未満のパス、スルーパスからの得点が多くなっています。
これはハイプレスが上手くいっていることの証でもあります。ゴールに近い位置でボールを奪えていますので、当然ゴールまでの距離は短くなりますし、スルーパスが通る可能性も高くなります。
一方で別データではロングカウンターも多いというデータも出ています。
いずれにしましても、攻撃局面に入ると高い確率で完結まで至るチームです。

J2第13節 大宮vs町田 15分のシーン

アタッキングサードに侵入してからの町田の攻撃の一例として第13節大宮戦での先制点につながったシーンをみていきます。
最終ラインの(4)池田樹雷人から左サイドの(22)翁長聖にフィードします。
まず町田の攻撃はこのようにSBやSHがサイドに張り起点をつくります。
特徴的なのは、ここに2トップの一角であるデュークが流れ、大宮のCB(5)浦上仁騎を引き出しているのです。更にSH(7)荒木駿太が大宮(7)小島幹敏を引き連れながら縦へ走ります。
これらの動きにより大宮ボックス前にぽっかりとスペースが生まれ、(22)翁長はドリブルで進出、最終的に逆サイドまで持ち運び先制ゴールを決めました。

サイドで起点をつくり、2トップが流れることでスペースを作り、ゴールを生み出す。町田の攻撃の特徴的なパターンのひとつであると思います。

奇しくも岡山の次の相手は大宮です。この崩しは参考になりますね。

おそらく町田も、これまで岡山が狙われていた(16)河野諒祐の右サイドに起点をつくってくる。

話は長くなってしまいましたが、Twitterで上げました注目点②「右サイドの攻防を制せされるのか」はこのような考えによるものです。

(2)絶好の勝機

これまで述べてきました内容から、町田に先制を許さずに逆に町田から先制した、しかも早い時間帯に先制に成功したというのは、今シーズンのJ2リーグ全体において非常に大きなムーブメントであったのです。

先制に成功できた理由、それは単純で(7)チアゴが前向きにボールを受けられたからです。前向きに持てた理由もシンプルですが、(18)櫻川ソロモンとしっかり縦関係を作れたからだと思います。この点は秋田戦からの反省が活かされていたと思います。前半は町田に押し込まれながらも、(18)櫻川をターゲットと見せかけて(7)チアゴに直接当てるなど、前に当てるにしましてもこれまでと異なる工夫はみられていたと思います。

右SB(16)河野の頑張りも見逃せません。町田(27)平河に入れ替わられるシーンもありましたが、流れてくる(15)デュークも含めて粘り強く対応できていたと思います。

そして、面白かったのが前半(43)鈴木喜丈が自ら持ち上がることで岡山のライン全体を上げていたことです。この動きに不思議と町田がプレスにいかないのです。(43)鈴木に食いつくことで裏に出されるのを嫌がっていたのか、そもそも町田側が想定していなかった動きであったのか分かりませんが、最終ラインから持ち上がれる選手がいるというのは、味方の時間も作れますし、武器になりますね。

押し込まれてはいましたが、岡山は絶好の勝機を迎えていたのです。

後半皮肉にも(43)鈴木のスローインミスから失点してしまった訳ですが、相手のちょっとした綻びを見逃さないのが今の町田の強みです。
町田としては(27)平河を左に配置した策が当たったといえます。

(43)鈴木がSBを続ける上では(偽であったとしても)スローインは避けられません。修正してくれるとは思いますが、投げ手と受け手でしっかりコミュニケーションを取ってほしいです。

後半の試合運びについて、筆者はこのミスよりも気になったことがありました。

(3)町田のアンカー脇

J2第14節 町田vs岡山 後半開始時のメンバー

押し込まれていたとはいえ、町田をリードするという有利な試合展開になっていました。この優位性を活かせなかった点が悔やまれます。

前半でリードされた町田は、後半開始から早速切り札(7)荒木を投入するのですが、両SHとの交代ではなく、ダブルボランチの一角(8)高江麗央と交代し(7)荒木をトップ下に据える4-1-3-2のようなシステムに変更してきました。

これまで堅い試合運びをみせていた町田が1点ビハインドという状況で、割とあっさりとリスクを掛けてきたといえます。その一方で最終ラインは高い位置を取ってきませんでした。
これは前半の岡山が町田最終ラインの裏を狙っていたからだと思います。

そうなりますと、町田のアンカー(18)下田の両脇にスペースが出来るのです。(7)荒木が戻ってフラットな4-4-2でセットしたり、(10)高橋が(18)下田の右スペースを埋める場面もあったのですが、やはりそこには戻る作業が生じるので、隙は出来ていたように見えました。

アンカーの両脇を攻めるというのは攻撃の定石ともいえます。
思い起こせば、昨シーズン序盤、岡山は他チームからアンカー本山遥の両脇をよく狙われていました。

後半の岡山の試合運びとして残念と感じましたのは、この(18)下田の両脇のスペースを十分に突けれていなかったことです。
(18)下田は攻撃の局面で光る選手です。昨シーズンは大分でアンカーをやっていた時期もありましたが、攻撃のタクトを存分に奮える一方で、守備の強度は不足していた印象でした。
また、左利きの選手ですので、彼の右足側、岡山側からみて左脇のスペースは守備面での弱点となります。

このスペースへ(14)田中や(44)仙波が侵入する、特に(44)仙波は山形戦同様に最終ラインから受けて前線に持ち運ぼうとしていただけにこのスペースを突くチャンスはあったように思いますが、中盤からサイドへのボール運びに関しては、サイドへ簡単にはたくシーンが多かったように思います。
(18)櫻川や(7)チアゴにももっとこのスペースに下りる動きが必要であったと思います。

sporteriaさん提供の「エリア間パス図」です。
岡山のパス図を見ましても、中盤にボールがよく入っていることは分かりますが、そこから前線への展開が同じ高さの両サイドに偏っていることがわかります。陣形全体が引いていた時間帯も長かったですし、前半も含めてのデータなので一概にはいえませんが、やはりこの図をみましても町田のアンカー脇を突くパスは少なかったのかなと思われます。

リードしている展開での優位性、それは相手がリスクを掛けてくる、そのリスクを突けることにあります。町田がリスクを掛けるという大きな変化(ヒント)を与えてくれたにも関わらず、岡山は後半も前半と同じような戦い方になってしまった。この点は非常にもったいないと筆者は感じるのです。

(4)ルカオの伸びしろ

Twitterでもつぶやきましたが、(99)ルカオに期待していました。
秋田戦で彼のプレーを生で観た印象が強かった影響もありますが、間違いなくコンディションは上がってきたと思います。そして、観戦していて彼のプレーから徐々に意図を感じるようになってきました。山形戦は温存であったことも踏まえまして、この町田戦での活躍に期待していました。

この試合は62分からの出場でしたが、そうですね…。もっとできたんじゃないかな?というのが正直な感想です。筆者が勝手に買い被ってただけかもしれません。
と言いますのは、FWとしてボックス内での精度がなかなか上がってこない点が厳しいと感じるのです。
おそらく彼の中ではイメージしているプレーがあるのだろうとは思うのですが、やはりシュートを枠内に飛ばしてほしいです。ちょっとずつ上昇はしているのですが、彼の上昇速度がチームが必要としているスピードには追いついていないという印象です。

秋田戦のルカオ
そろそろゴール前で決定的な仕事をしたい

こんな時に(48)坂本一彩がいれば…。
先ほどから述べていますアンカー脇のスペースに下りてきてボールを受けて前進というシーンを思い浮かべるのです。

そうそう、ロングカウンターもできるのですよ。

と、この辺りまでは昨日(5/7)の段階で書き終わっておりました。
個人的には故障明けになりそうな(48)坂本はU-20日本代表には選出されないのではないか?と予想しており、今後の坂本の岡山でのプレーへの期待などを綴っておりました。

ところが、本日(5/8)…

いや、嬉しいのですよ!
ファジアーノ岡山所属の選手が2人も世界の舞台でプレーする!
主力が代表に抜かれることによる戦力低下を心配しなくてはならない。
こんな贅沢な悩みを経験できるというのも、嬉しいことです。
とにかく2人ともケガなく良いコンディションでプレーできることを願っています。

まだホームでは一度しか観ていないが、
期待を十分に持たせてくれた坂本

その一方で本日は残念なニュースも入ってきました。

痛い、痛すぎる。普段、ゲームの写真を撮っていましても、ものすごい姿勢でボールを追う姿がファインダーに飛び込んできます。専門的なことはわかりませんが、負担が蓄積されていたのかなと推し量っています。
焦らず、じっくり治して戻ってきてほしいです。
(22)佐野航大の代表選出、(19)木村太哉の故障離脱による左SHについては(2)高木友也や(42)高橋諒の力に期待します。

アグレッシブに戦う分、負荷も大きいのだろうか?
木村の離脱はチームにとって痛手

3.まとめ

悪天候下、連戦の最後ということもあり選手はよく戦ったと思いますが、岡山としては首位町田を敗る条件は整いつつあっただけに、その機会を逃してしまった一戦といわざるを得ません。
しかし、その機会を失った原因を選手のミスや決定力不足に求めるだけではなく、後半の戦い方全体にあったことを見出してほしいとチームに期待します。筆者の感想としては(48)坂本の力が必要と感じた一戦でしたが、彼や(22)佐野が不在となる間をどのように戦うのか?
ベンチメンバーや、政田で汗を流すメンバーからニューヒーローが出てくることを切に願っています。

今回もお読みいただきありがとうございました。
5/13ホーム大宮戦は仕事の都合のため残念ながらいけません。
スタジアムに向かわれる皆さま、熱き応援をよろしくお願いいたします!

高木を始め、レフティ陣の奮起に期待したい

※敬称略

【自己紹介】
麓一茂(ふもとかずしげ)
地元のサッカー好き社会保険労務士
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ
ゆるやかなサポーターが、いつからか火傷しそうなぐらい熱量アップ。
ということで、サッカー経験者でもないのに昨シーズンから無謀にもレビューに挑戦。
持論を述べる以上、自信があること以外は述べたくないとの考えから本名でレビューする。
レビューやTwitterを始めてから、岡山サポには優秀なレビュアー、戦術家が多いことに今さらながら気づきおののくも、選手だけではなく、サポーターへの戦術浸透度はひょっとしたら日本屈指ではないかと妙な自信が芽生える。

応援、写真、フーズ、レビューとあらゆる角度からサッカーを楽しむ。
すべてが中途半端なのかもしれないと思いつつも、何でもほどよく出来る便利屋もひとつの個性と前向きに捉えている。

岡山出身ではないので、岡山との繋がりをファジアーノ岡山という「装置」を媒介して求めているフシがある。

一方で鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派でもある。
アウェイ乗り鉄は至福のひととき。多分、ずっとおこさまのまま。

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