【向日葵は枯れていない!】25.ギラヴァンツ北九州 マッチレビュー ~第25節 vs 奈良クラブ ~
ギラフェス成功の余韻を残しながらの1週間、チームはアウェイ奈良戦を迎えました。プレーオフ圏内突入後の最初の試合ということで、チームの好調、順位のキープがテーマの一戦でしたが、酷暑を諸ともせず危なげない勝利を飾れたと思います。
チームの目標や課題は、シーズンを通して変化していくものと筆者は考えていますが、少しずつ目標をクリアしてきた今シーズンのギラヴァンツは、早くも次のレベルアップが求められる段階に到達したと感じた一戦でした。
振り返ります。
1.試合結果&メンバー
酷暑の中での一戦となりましたが、試合前の雷雲、降雨の影響で気温そのものは30℃まで下がった中で開催されましたが、やはり湿度が高い様子が画面越しからも伝わってきました。
前回の対戦時と比較しましても、奈良の調子はかなり悪かったと感じました。原因はわかりませんが、北九州と比べると明らかに各選手動きが鈍かったように思えます。
序盤から北九州が主導権を握り続け14分に先制、その後も追加点を奪うチャンスがありましたが、前半は1点リードで終了。奈良のシュートは0とほぼチャンスを与えませんでした。
後半は奈良も決定機をつくりますが、モノにすることが出来ず、逆に北九州はPKを決め2点差にします。その後奈良の更なる反撃も受けますが、最後をやらさず、また早めの選手交代により手堅く逃げ切りました。
順位は5位と前節と変わりませんが、自動昇格圏2位とは勝点差4をキープ、7位とは勝点差6、つまり2勝差をつけました。
プレーオフ圏内の安定期に入ってきたようにも思えますが、この点についても後ほど触れてみたいと思います。
メンバーです。
北九州のスタメンは前節から変更がありませんでした。
現状、このイレブンがベストメンバーという理解で良いかと思います。
一方、サブでは前節「地元デビュー」を飾った期待のFW(16)大森真吾がメンバー外となりました。理由はもちろん不明ですが、今節はFW(9)平山駿が入りました。(16)大森の登場でCF(10)永井龍の後に続くCFの競争も激しくなりました。(9)平山のアピールも期待されました。
奈良はお馴染み4-1-2-3のフォーメーションですが、前節鳥取戦からメンバーに変更がありました。CBの(8)堀内颯人が一列前のアンカーに入ります。また、LIHも(20)國武勇斗からベテラン(10)山本宗太郎に変更、センターラインの人選にかなり気を遣っている様子が窺えました。RWGには(43)田村亮介を起用、前節鳥取戦で精度の高いクロスを上げていた選手です。
2.レビュー
(1)「スイッチ」藤原
前節もそうでしたが、今節は更にCH(6)藤原健介の存在感が際立ってきたと思います。「藤原のチーム」というのは、それを意図してつくっている面がないとは言えないのですが、何となく自然に形づくられてきたとの印象も持っています。そして、周囲の選手が(6)藤原の意図をよく理解して動けていると感じました。そのような要素が満載の14分の先制点からみてみます。
弧を描きながら鋭く落ちる(6)藤原のクロスの質、その球速、角度をよく理解したLSH(21)牛之濱拓のジャンプのタイミング、(10)永井のおとりの動き、満点の先制点であったと思います。
(21)牛之濱は今シーズン2得点目、これまでの決定機を迎える場面は毎試合あったと思いますが、アシストに回ることも多く自身の得点は伸びていない状況でした。しかし、昨シーズン鳥取で9得点を決めただけのことはあり、ゴールへの意欲は高い選手であったと思います。
本人の気分も乗るでしょうし、チームとしても(10)永井以外でも得点できることを示した意義ある得点であったと思います。
実は筆者はここまでのレビューで(21)牛之濱について触れることがあまり無かったのですが、彼に関してはちゃんとしているので、良い意味であまり語ることがなかったのです。今節、触れることが出来て個人的にも良かったです。
この場面、もう少し前から見てみたいと思います。
この得点も最終ラインに(6)藤原が下りたビルドアップが起点になっています。つまりこの形になった時が北九州の攻撃の「スイッチ」になっている訳です。
ここから北九州は(6)藤原が再び前線に上がる時間をつくりながら攻撃を組み立てていく訳ですが、最近よくみられていたRSH(29)高昇辰への縦パスに対しては、さすがに奈良も(8)堀内とLWG(31)岡田優希の2人をつけて警戒しています。
そこでCB(50)杉山耕二は自身で持ち上がり、ラインブレイクを狙った(10)永井へとフィードします。この際の北九州の前線(29)高昇辰、OMF(17)岡野凛平、(21)牛之濱、RSB(22)山脇樺織の前線への上がりが非常に速かったと思います。
更に特筆すべきは(10)永井からいったん右の(22)山脇にパスし、時間をつくっている間にCH(34)高吉正真までもが攻撃に参加しているのです。
奈良は4枚の最終ライン自体は揃っていたのですが、(34)高吉までもが攻撃に参加したことで、若干目線を引きつけられてしまった点はあったかもしれません。結果、後からゆっくり(でもないかもしれませんが)上がっていった(6)藤原が楽にクロスを上げることが出来たのです。
何と言いますか、(6)藤原に決定的な仕事をさせるためにチーム全体でお膳立てをしているようにも見えなくはないのですが、この場面では攻撃参加した(34)高吉も前線への配球を試みており、決して(6)藤原頼みとも言えない点もまたチームの成長として良いことであると感じました。
この試合での(34)高吉は積極的なパス、クロスを試みていましたね。精度はまだまだですが、レベルアップを図った良いチャレンジであったと思います。そして、そのチャレンジを可能にしているのが、上述の得点シーンも含めてのトランジションの速さです。
トランジションに自信があるので、攻撃に人数を割けるのです。
逆に奈良は試合全体でトランジションで後手を踏んでいたように見えました。北九州のクロスやシュートの場面でも選手がボールウォッチャーになっている様子も散見されたと思います。
この北九州の得点の起点となったビルドアップの場面では、北九州のホルダーに対して前からプレスするのか、プレスバックするのか、コースを消しにいくのかなど、前線(に残った)の選手の判断、選択が曖昧に見えました。
北九州が容易に前進できた一因であったと思います。
先に後半の追加点の話をしてしまいますと、PKを決めた(10)永井に非常に余裕がありましたね。おそらくデータでは左下隅のコースを狙うことが多いと思うのですが、奈良GK(96)マルクヴィトの読みを外して右上にしっかり決めました。最低目標の二桁を達成した余裕が成せる今シーズン11得点目であったと思います。
(2)あえて課題を考える
最初に盤石な試合であったと述べましたとおり、試合内容そのものには満足、納得しているのですが、今の北九州は更なるレベルアップを図っていく時期、段階に差し掛かったと思います。
まずは、追加点を奪うタイミングについてです。
2-0できっちり勝利出来た点は良かったと思っているのですが、客観的に見てこの日の奈良の状態であれば、前半のうちに試合を決めることも出来たのかなとも思います。先制点後の北九州の決定機はおそらく4つ、これだけあれば一つは決めなくてはならなかったと思います。
これらの決定機を決められなかったが故に、55分奈良(96)マルクヴィトからのロングフィードから一気に(31)岡田優希のシュートに繋がった被決定機を迎えてしまいます。GK(27)田中悠也のファインセーブで難を逃れましたが、これが決まっていれば試合は分からなくなっていたと思います。また終盤は奈良の途中出場CF(15)パトリックグスタフソンに北九州両CBの間に入られ、決定的なシュートを許します。
次節以降、北九州は福島、今治、大宮との対戦を控えています。
福島は今、プレーオフ圏からは外れてしまいましたが、今シーズンは良いサッカーをしていますし、今治、大宮は言うまでもなく上位です。
例えば、仮想大宮と考えた時にこの試合での被決定機を彼らは確実に決めてきます。また、前半のワーストゲームと(考えている)なった空中戦の長野との対戦もまだ控えています。
決めるべき時を決めるという点はまだまだ改善の余地がありますし、2CBの間に落とされるボールに対しても、いかに出所を抑えるのか(50)杉山や(13)工藤孝汰の更なるレベルアップも図りながら考えていかなくてはなりません。
3.まとめ
以上、今節は簡単でしたが奈良戦を振り返りました。
非常によく戦えていましたので、簡単な内容になったということです。
(6)藤原中心のチームになっているのですが、後半の飲水タイム以降に(6)藤原を休ませることが出来た点も含めて、(6)藤原依存のチームでもないと言える一戦であったという感想です。
そして、次節以降の3連戦が最初の山場になりそうな気がしています。
今から楽しみです。
今回もお読みいただきありがとうございました!
※敬称略
【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。
2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。
北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。
鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。
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