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【ファジサポ日誌】43.プレッシャーさえも楽しめ!~第8節vs藤枝MYFC

2-2のドローに終わってしまいましたが、ファジアーノ岡山にとっては非常にポジティブな材料に満ちた一戦であったと思います。
もちろん勝ち切れないという結果については悔しいですし、チームの実力不足も感じるところです。

昨シーズンと大きく違い、今シーズンは他クラブからのマークがきつくなっていると感じます。今までであれば見逃されていた岡山の弱点も、今年は執拗に攻められてしまう。そんな印象を持っている今シーズン序盤です。前年3位クラブの難しさ、これも岡山が初めて経験している領域です。

土曜日夜、DAZNでの観戦となりましたが、この試合を担当された成岡翔さんの解説は、筆者の観戦目線やレベルには内容的にちょうど良く、実況の伊藤薫平アナの丁寧な下調べの跡が窺えるデータ等の情報提供と併せて、とてもわかりやすく、今回のレビューの大きな助けとなりました。

岡山としては、今シーズン当初からねらっていた戦い方をもう一度取り戻そうとしていた一戦であったと思います。

1.試合結果&スタートメンバー

J2第8節 藤枝vs岡山 時間帯別攻勢守勢分布図(筆者の見解)

今回は試合結果と併せて「時間帯別攻勢守勢分布図」を示します。
ご覧いただいていますとおり、岡山は先制以降も攻勢の時間が長かったのですが、追加点を奪えないままゲーム終盤を迎えてしまった点が悔やまれます。

そして75分、77分と藤枝に連続ゴールを与え、逆転されるという最悪な経過を辿るのですが、そこからもう一度最終盤にかけて再攻勢をかけ、ATに同点に追いついたという試合でした。

今回は岡山が攻勢の時間を長く持てた要因、そして藤枝逆転の背景に触れながら、最後に個人的に述べたい話で締めくくりたいと思います。

J2第8節 藤枝vs岡山 スタートメンバー

岡山は出場予定でした(43)鈴木喜丈のコンディションにトラブルが発生した模様です。試合開始直前でメンバー外となり、LSBには(2)高木友也が入りました。藤枝と中盤での激しい攻防も予想されていましたので、中盤で組み立てに参加できる(43)鈴木の離脱の影響が懸念されます。

前節いわき戦はダブルボランチ採用の3-4-2-1でしたが、再び中盤ダイヤモンド型の4-4-2に戻してきました。
(48)坂本一彩の離脱を除けば、開幕戦のメンバーに近い形です。

藤枝はお馴染みの3-4-2-1です。
攻撃時にはRCB(5)小笠原圭祐が右ウィングに近い位置まで上がり、RWB(24)久保藤次郎を前に押し出す、または中盤にスライドさせ、最終ラインは2CBとなります。藤枝がエンターテイメントサッカーとして打ち出している両ウィングが高い位置を取り、最前線にまで顔を出す攻撃サッカーをいつもどおり展開するものと予想されました。

2.レビュー

(1)原点回帰~建て直した岡山の攻守~

結論から述べますと、最近数試合の中ではデキは最も良かったと思います。
開幕戦に近い形にフォーメーションを戻したことで、チームが標榜する相手コートでの戦いを表現していた時間は長かったと思います。

スコアにバラつきはありますが、J2昇格以降もその攻撃的なスタイルが評価されていた藤枝相手に主導権を握るサッカーを展開できた点は素直に評価したいです。

最近数試合の岡山の大きな課題のひとつはパスの受け手と出し手の意思が一致しないことでした。その点が改善されていたと思えるシーンがありましたので振り返ります。11分~12分にかけてのシーンです。

J2第8節 藤枝vs岡山 11分 岡山の決定機

藤枝陣内での岡山のスローインからパスが繋がり(18)櫻川ソロモンの決定機に繋がったシーンです。
DAZNをご覧いただいた方はお気づきかもしれませんが、スローインの直前に(18)櫻川が(9)ハン・イグォンや(8)ステファン・ムーク、(14)田中雄大に自分の近くに寄るよう指示を出しています。
(18)櫻川からは必ず自分が落とすから全員でゴールへ向かってくれ、そんな気持ちが伝わってきます。

スローインを受けた(6)輪笠祐士は、すぐに前に蹴るのではなく、ボールを横に動かしながら藤枝の選手を引きつけます。
そして(8)ムークが中間ポジションに入り、これも藤枝の選手を引きつけたタイミングで若干下りてきた(18)櫻川に楔を入れます。

そして瞬間的に周囲の岡山の選手は互いの至近距離を保ったまま、縦へ動きます。(18)櫻川の落としを受けた(8)ムークは縦に走る(9)ハンの前方のスペースへパスを出しますが、それを受けたのは(9)ハンではなく、外から回ってきた(14)田中でした。

(14)田中のクロスを左前方に走り込んだ(18)櫻川がヘディングで当てますが、残念ながらシュートは枠外に逸れました。

(6)輪笠のパスから出し手、受け手のタイミングに澱みがなく、かつ岡山の選手が互いに至近距離で動く分、藤枝DFも守備の的を絞りにくく、十分プレッシャーをかけられませんでした。これは今シーズン岡山が取り組んでいたひとつの形であったと思います。狭い局面を複数人で崩していく。
いい攻撃でした。

このシーンに至る自陣からのボールの運び方にも岡山の工夫がみられました。(1)堀田大暉から右サイドの(16)河野諒祐に浮き球のパス、(16)河野は下りてきた(6)輪笠に戻すのですが、ここでビルドアップに時間をかけずに藤枝陣内右サイドの(9)ハンにフィード、スローインを獲得したという流れでした。

岡山は最近数試合、特に右サイドを相手から狙われているという事もあり、ここでの細かいビルドアップは諦め、前線の(9)ハンのキープ力を使ってボールを運ぶ、チームとして前進するという戦法を取っていたように見えました。

細かく数えてはいませんが、この試合で(9)ハンが獲得したスローイン、CKを獲得する場面は目立っていたと思います。
その球離れの悪さから、チャンスを潰したり、相手カウンターの起点になってしまったりと、ここまでチームにフィットしていない感もあった(9)ハンですが、この日の起用法は彼の特性を活かせるもので良かったと思います。

先ほどの(18)櫻川の味方選手への指示を含めて、この試合では岡山が味方同士が声を掛け合う、要求しあうシーンを多く見ることができました。
24分のゴール前に飛び出した(8)ムークが(18)櫻川に激しく動きの面を要求したシーンは代表的でした。
これは最近、パスを出せない、受けられない試合が多かったことを踏まえてこの週の練習前に実施した長時間ミーティングの効果といえるのではないでしょうか?

ほんとに選手は何とかしようとしていたと思いますし、一定の成果も出ていたと思います。

そして守りの部分で述べますと、前からプレスをかける高い位置で奪うことがよく出来ていました。これは藤枝が最終ラインから繋ぐスタイルに特化しているが故に奪いやすかったということはありますが、強度が高く、速いプレスを実行したことで、取り切れなくても藤枝は前に蹴らざるを得ないという流れを作れていました。

藤枝GK(41)北村海チディのミスキックを誘い、それを拾った(6)輪笠のクロス、(18)櫻川の落としから(8)ムークのフィニッシュに至った25分のシーンが代表的です。ここを決めれなかったのが後々響く訳ですが…。

もう一点、守備面について述べますと、この試合では藤枝の幅を使った動き、サイドチェンジに対して岡山の守備がよくスライド出来ていたと思います。藤枝の強みは両WBですので、彼らから攻撃を作っていくシーンが多いのですが、右の(24)久保藤次郎が詰まったら左の(27)榎本啓吾へと大きくサイドを変えるシーンも見られました。
この動きには(6)輪笠がよく頑張ってスライド、プレッシャーをかけ相手の攻撃を遅らせていました。

これだけ書いていますと、100点のようにも思えるのです。2点目を取れなかったこと以外は…。前半は追い風でしたからね。

(2)悪夢の連続失点

ほんとに悪夢を見ているかのような75分~77分でした。
岡山の選手はここまで述べてきましたように、運動量豊富に戦っていました。それは後半も続いていまして、60~69分の時間帯は追加点を奪える可能性もあったと思います。
藤枝の同点シーンの前ぐらいから岡山の陣形が間延びし始めるのです。これは運動量の低下ではないかと思います。藤枝の(10)横山暁之や(15)杉田真彦など中盤の選手が楽にボールを持てるようになっていましたね。

75分の藤枝の同点ゴールは(16)河野が藤枝(27)榎本のクロスを許したことから生まれましたが、伏線はその1分前にあったと思います。
(27)榎本と1対1になった(16)河野は(27)榎本の左前方への突破を右足を出すだけで対応しようとしてしまい、完全に(27)榎本の突破を許してしまいました。おそらく脳裏にこのシーンが残っているであろう1分後に再び1対1に素人目線では体の動き自体が硬かったように見えました。(27)榎本へのパスを出した(15)杉田に(14)田中がプレッシャーをかけに出てしまった為、(16)河野と(27)榎本が再び1対1になってしまったというのも痛かったです。

逆転ゴールについては藤枝が確信したかのように(16)河野の所を崩していますよね。(16)河野もまるで別人のように淡白になってしまったと言いますか…、改めて対人守備が苦手なのだなと思いました。

先に述べましたが、この辺りの攻められ方が昨シーズンと異なっているのです。容赦なく岡山の弱点を突いてくる。

ベンチも各選手の運動量の低下には気づいていました。交代の用意も行っていましたが、結果的に遅れてしまいました。この点は木山監督も悔やんでいましたね。

普段でしたら(15)本山遥と交代する時間帯でもありますが、前節いわき戦で出場しなかった(16)河野はこの試合ではフル出場を見込まれていたのだと思います。この試合では(15)本山はベンチ外。ここは連戦の影響が悪い方に出てしまいましたね。

(3)セットプレーにスランプなし

岡山としてはよくこの衝撃的な流れからドローに持ち込んだなと思います。
ある意味岡山らしさですよね、「我々はファジアーノ岡山だから絶対に諦めない」。まさに(23)ヨルディ・バイスが体現した同点ゴールでした。
結局、岡山の得点は共にセットプレーからでした。得点を決めたのも両CBという、非常に岡山らしいともいえる得点経過です。
現状の岡山において、相手の対策を完全に上回っている要素は、変な言い方をするなら相手から解放されて自由になれる場はセットプレーのみなのです。
野球ではよく「足にスランプなし」と言われますが、岡山の場合、セットプレーに「スランプ」はないのだなと思います。
(7)チアゴ・アウベスがそろそろ戻ってきそうですが、しばらくはセットプレーに頼るというのも現実的な戦術です。
そのためにはいかにCKを獲得するのか、そこは極めていきたいですね。
そういう意味では(9)ハンの起用は効果的であると筆者は思います。
そして、その間に(18)櫻川の決定力向上を待ちたいと思います。

まとめ

この流れでまとめに入りますが、守備に関してはよく批判されます(16)河野にしても(5)柳にしても、明確な強みと弱みを併せ持つ選手なので、弱みを突かれての失点というのはこれからも覚悟しなくてはならないと思います。

以前のレビューでも書きましたが、今シーズンのチームがフォーカスすべきは相手より多く得点を奪うことであると思います。

近年の岡山には井上黎生人のような足が速く、機動力が高いCBがいましたし、長年堅守寄りのチームも多かったせいか、守りには非常に厳しい目を持つサポーターが多いと筆者は感じています。

昨シーズンも1試合平均1失点と守備は堅かったと思うのですが、それはシーズン途中から、ある程度割り切って、引いて守った影響もあったと思います。
今シーズンは攻撃にエネルギーを割く戦術を用いている分、多くのリスクを抱えています。そこは割り引かなくてはならないと思います。

最後に、藤枝の須藤監督がいいことを言ってました。
「相手のプレッシャーを、それすらを楽しむ」
蹴球都市藤枝のチームを率いる監督らしい言葉です。
今の河野や柳にも、プレッシャーを楽しんでほしいです。
楽しめる空気をサポーターとして創ってあげたいです。
これだけ書いて、最終的に最も言いたいことは「楽しめ!」でした。

※敬称略

【自己紹介】
麓一茂(ふもとかずしげ)
地元のサッカー好き社会保険労務士
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ
ゆるやかなサポーターが、いつからか火傷しそうなぐらい熱量アップ。
ということで、サッカー経験者でもないのに昨シーズンから無謀にもレビューに挑戦。
持論を述べる以上、自信があること以外は述べたくないとの考えから本名でレビューする。
レビューやTwitterを始めてから、岡山サポには優秀なレビュアー、戦術家が多いことに今さらながら気づきおののくも、選手だけではなく、サポーターへの戦術浸透度はひょっとしたら日本屈指ではないかと妙な自信が芽生える。

応援、写真、フーズ、レビューとあらゆる角度からサッカーを楽しむ。
すべてが中途半端なのかもしれないと思いつつも、何でもほどよく出来る便利屋もひとつの個性と前向きに捉えている。

岡山出身ではないので、岡山との繋がりをファジアーノ岡山という「装置」を媒介して求めているフシがある。

一方で鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派でもある。
アウェイ乗り鉄は至福のひととき。多分、ずっとおこさまのまま。



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