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美術

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美術作品を自分なりの視点で妄想。
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月に傾(かぶ)く

月に傾(かぶ)く

古来、風流はしばしば風流過差と呼ばれた、松岡正剛氏によれば、過差とは過剰のこと、そして過剰な意図を「傾(かぶ)く」と呼び、その担い手を「かぶきもの」或いは「パサラ」と呼んだそうだ、いわゆる「傾く」のことである。
面白いことに、この過差=物狂いは人々の関心と好奇心を煽るには、もってこいのものだった、歌舞伎は「傾く」を起源としていることからもそれがわかる。

いや、しかし ……
“日本人は昔からいろ

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文字(書)は絵の恋人 

文字(書)は絵の恋人 

森は海の恋人」というフレーズを聞いたことがあるだろう、海と森は食物連鎖や自然環境の面で密接な関係にある事から命名されたと聞く。
日本美術にも絵画の構成要素が互いに密接な関係をもって絆を深めたジャンルがある、文字絵(*1)というジャンルだ。
 
文字絵は文字(書)と絵それぞれが絡み合い、響き合って絵画の魅了をさらに高めることができる、まさに「文字(書)は絵の恋人」である。
特に、やまと絵の世界で、葦

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富士山・座神香聞     2024 1/1

富士山・座神香聞     2024 1/1

富士山・座神香聞     2024 1/1

クニオ
“スゲー富士だったね!”
ヨシコ
“どの富士山のこと? 今日は沢山の富士山を観たからお腹一杯、どの絵にも感動したけど”
クニオ
“「霽るる」(*1)だよ、観た瞬間、頭をガツンと揺さぶられちゃた”


東京・山種美術館に「富士と桜」展・副題に「北斎の富士から土牛の桜まで」とある。
北斎や広重、横山大観、奥村土牛等々の神々しい富士。
渡辺省亭、

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平安の雅:やまと絵

平安の雅:やまと絵

平安時代の絵画で思い浮かぶといえば絵巻物ではないだろうか。その中でも源氏物語を題材にした「源氏物語絵巻」は絵巻物の精華と言っていいだろう。

 晩秋の東京国立博物館にて特別展「やまと絵」(*1)が開催され、平安期の四代絵巻が展示されると聞き、二人は早速出かけることと相成った。


ワイワイがやがや …… ゾロゾロもぞもぞ …… ワクワクいらいら   
閉展を二日後に控えた祝日の博物館は人で溢れ

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王朝の色に挑む

王朝の色に挑む

クニオ
“鮮やかにして冴えざえ!”
ヨシコ
“気高くして優美な美しさ!”
そのまばゆい色彩に魅了され二人は、いつになく上気した気分に包まれている。


「王朝の色に挑む」は「染司よしおか」が、すでに失われてしまった自然の染料による伝統の色の再現に挑み、あくなき探求心と情熱によりよみがえらせ、(*1)ここ岡崎市立美術博物館にて開催された。

清少納言や紫式部が登場した王朝文化の華やかな平安中期(

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無著・世親

無著・世親

………興福寺の北円堂に安置されている無著像と世親像が公開されると聞き、
10月の最終土曜日、クニオとヨシコは北円堂へ旅立つ

………すでに、五重塔の周辺は人混みができていた、五重塔の手前を左折し、2017年に再建された中金堂を横目に北円堂を目指す。

クニオ
“いやー 中金堂は「青丹よし 奈良の都は 咲く花の〜  」だね    ”
ヨシコ
“ほんと  青(緑)や丹(赤)に彩られた姿で再建されてる

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