パサレラ

パサレラと言います。美術館で巡り合った絵画の印象を紹介します。ただ絵画の知識は豊富では…

パサレラ

パサレラと言います。美術館で巡り合った絵画の印象を紹介します。ただ絵画の知識は豊富ではないので、少々真面目な漫才のような、登場する二人の掛け合いで語ります、良かったら読んでね!

最近の記事

鬼卵・夢路

“頼もう   ” 店先から声をかける! 店は掛川城からほど近く、今では面影もないが、かつては掛川藩城下の一角にあたる場所だ。 “頼もう   ” クニオは再度、店の奥に声をかける。  店主 “どちら様でしょう ” 中年の目鼻立ちのすっきりした温容の顔立ちの店主奥から顔を出した。 店主 “書画、軸をご所望で   ” クニオ “いや、こちらに鬼卵の書画があると聞き及んだので ……   ” 店主 “さようでございますか ……  ” 思案顔の店主 ……  少々、間をおいて “ではど

    • 能はこんなに面白い その二

      能「石橋」(宝生流) 後場 突如として赤と黒の獅子が出現し、紅白の牡丹に戯れ激しく乱舞する連獅子の振る舞いが後場の見どころだ。 ヨシコ “連獅子の乱舞に もうー 釘付け!” クニオ “舞台を圧倒してたね” 連獅子の威風堂々とした舞に心をわしづかみにされた二人。 ヨシコ “獅子って霊獣(*1)でしょ” クニオ “文殊菩薩の乗り物だよね” 日本の釈迦三尊では、左脇侍に獅子に乗った文殊菩薩、右脇侍に白像に乗った普賢菩薩を配する例が多いと聞く。 ヨシコ “文殊菩薩の使者で

      • 「能はこんなに面白い」 その一

        「石橋(シャッキョウ)」はドラマチックな能と言われている、古代中国は唐土清涼山の石橋を舞台に、前場と後場が劇的に変わる演出は見ものだ。 グランシップ静岡能(*1)で披露された「石橋」は小書(*2)により新たな演出を取り入れた意欲作だ。 能「石橋」(宝生流) 前場 「出家して寂昭法師と名乗る大江定基は、清涼山(唐)の文殊浄土に係る石橋の麓に着く、そこに現れた樵童(しょうどう)は、石橋を渡ろうとする寂昭法師を止め、渡る事の困難さを示し暫くここで待てと告げて去っていく」

        • 文字(書)は絵の恋人 

          森は海の恋人」というフレーズを聞いたことがあるだろう、海と森は食物連鎖や自然環境の面で密接な関係にある事から命名されたと聞く。 日本美術にも絵画の構成要素が互いに密接な関係をもって絆を深めたジャンルがある、文字絵(*1)というジャンルだ。   文字絵は文字(書)と絵それぞれが絡み合い、響き合って絵画の魅了をさらに高めることができる、まさに「文字(書)は絵の恋人」である。 特に、やまと絵の世界で、葦手(あしで)という手法がちりばめられた作品は日本固有の絵画(絵画に限らないが)と

        鬼卵・夢路

          富士山・座神香聞     2024 1/1

          富士山・座神香聞     2024 1/1 クニオ “スゲー富士だったね!” ヨシコ “どの富士山のこと? 今日は沢山の富士山を観たからお腹一杯、どの絵にも感動したけど” クニオ “「霽るる」(*1)だよ、観た瞬間、頭をガツンと揺さぶられちゃた” 東京・山種美術館に「富士と桜」展・副題に「北斎の富士から土牛の桜まで」とある。 北斎や広重、横山大観、奥村土牛等々の神々しい富士。 渡辺省亭、上村松園、速水御水、千住博等々の絢爛たる桜の競演。 ヨシコ “「霽るる」ね 

          富士山・座神香聞     2024 1/1

          平安の雅:やまと絵

          平安時代の絵画で思い浮かぶといえば絵巻物ではないだろうか。その中でも源氏物語を題材にした「源氏物語絵巻」は絵巻物の精華と言っていいだろう。  晩秋の東京国立博物館にて特別展「やまと絵」(*1)が開催され、平安期の四代絵巻が展示されると聞き、二人は早速出かけることと相成った。 ワイワイがやがや …… ゾロゾロもぞもぞ …… ワクワクいらいら    閉展を二日後に控えた祝日の博物館は人で溢れかえっていた。 クニオ “鑑賞ベルトコンベヤーに乗るしかないね!” 鑑賞ベ

          平安の雅:やまと絵

          王朝の色に挑む

          クニオ “鮮やかにして冴えざえ!” ヨシコ “気高くして優美な美しさ!” そのまばゆい色彩に魅了され二人は、いつになく上気した気分に包まれている。 「王朝の色に挑む」は「染司よしおか」が、すでに失われてしまった自然の染料による伝統の色の再現に挑み、あくなき探求心と情熱によりよみがえらせ、(*1)ここ岡崎市立美術博物館にて開催された。 清少納言や紫式部が登場した王朝文化の華やかな平安中期(10世紀〜11世紀)頃に、女房の装束のいわゆる「十二単」(*2)が誕生したと言わ

          王朝の色に挑む

          魅惑の館

          青葉の上を吹き渡ってくる緑風が心地よい、東京にいることを忘れさせる。  東京に降り立った目的の魅惑の館は、広々とした庭園の先にあった、魅惑の館とはアール・デコの粋を集めた建築と評される旧朝香宮邸(*1)のことだ。   ヨシコ “アール・デコの館にしては、装飾性に乏しく、シンプルな表現ね!” クニオ “でも、列柱が古典を、縦長の窓が新しい時代=インターナショナルスタイルを暗示しているとおもわない?”  確かに外観はシンプルな印象を与える、これは全体の設計監理を宮内

          無著・世親

          ………興福寺の北円堂に安置されている無著像と世親像が公開されると聞き、 10月の最終土曜日、クニオとヨシコは北円堂へ旅立つ ………すでに、五重塔の周辺は人混みができていた、五重塔の手前を左折し、2017年に再建された中金堂を横目に北円堂を目指す。 クニオ “いやー 中金堂は「青丹よし 奈良の都は 咲く花の〜  」だね    ” ヨシコ “ほんと  青(緑)や丹(赤)に彩られた姿で再建されてるね!” ………北円堂(*1)の扉は開けられている、二人は、はやる気持ちを抑え

          無著・世親