パサレラ

日本の美の宝庫である美術作品や古民家や社寺仏閣の観て歩きの感じたままを、能の鑑賞や稽古…

パサレラ

日本の美の宝庫である美術作品や古民家や社寺仏閣の観て歩きの感じたままを、能の鑑賞や稽古の感想を、少々真面目な漫才のように、登場する二人の掛け合いで語ります、良かったら読んでください!

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  • 美術

    美術作品を自分なりの視点で妄想。

  • 能はこんな易面白い

    能の初心者が能を妄想する。

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嫁が君

━京の都から南へ一里ほど下った山里に石峰寺という黄檗宗の寺がある。 京に近いだけあって、山里とはいえ雅さが漂っている、その風情が気にいったのか、このころ伊藤若冲は門前の庵に隠棲していた。 “鶏も書き尽くした   ”と若冲は思案気の様子。 “絵は心を解き放つのが何より  正月でもあるし、ちょっとおどけてみようか  フフッ  ” 何やら面白い考えが浮かんだようだ、いそいそと準備に取り掛かる若冲。   ━静岡市美術館はざわついていた。 「琳派と若冲、ときめきの日本美術」と

    • 俵屋宗達の描く水墨画は売れ筋

      ━そろそろ、かからねばならんな……     元和■年の壱月、下京の○○薬師▲▲小路 ◆◆神社の隣にある俵屋工房の屋敷 夜明けと共に目覚めた宗達。 昨年から依頼のあった水墨画をそろそろ仕上げねばならない。 だが、宗達は浮かない顔だ。 絵の工夫ならいつも心を尽くしてきた、ところが、水墨画は形式ばっていて、闊達さや不自由さを感じており、どうにも筆が進まない。 “人のまねなど面白くないが ……  たらし込みか!  ” “俺なら金銀泥絵の表現力を活かした画法で、町衆も喜

      • 歌を忘れたカナリヤ

        歌を忘れたカナリヤ  レナード・コーエン、バーナード・ルドルフスキー、アレックス・カー、ドナルド・キーンといった面々をご存じだろうか。  彼らは、日本文化の洗練と深淵さに魅せられて日本のファンとなってしまったが故に、日本の美について語れない日本人に嘆き、悲しみ、叱咤し、愛の鞭を振るうアメリカ人達である。  彼らは、特に「侘び・寂び・幽玄」を説明できる日本人にお目にかかたことがないと口をそろえる。  レナード・コーエンに至っては”日本人から「侘び・寂び・幽玄」の理解できる人物が

        • 崋山と松風の邂逅

          無言で「冨峰驟雨図(ふほうしゅううず)」(渡辺崋山作(*1)を見入る二人。 ここは静岡市美術館 「東海道の美・駿河への旅」の展示室。  ヨシコはいたく感動したようだ、「冨峰驟雨図」の少々物悲しい風情が侘びなる美的な感情を発露させたのかもしれない。 落款に「冨峰驟雨図 画為松風老人 時天保甲午龍潜月 崋山外史登」とあり、松風老人なる者の依頼で描いたと読み取れる。 ヨシコ “松風老人って誰?” クニオも初めて聞く名だった。 “これは探ってみる価値がありそうだね”

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          2本

        記事

          月に傾(かぶ)く

          古来、風流はしばしば風流過差と呼ばれた、松岡正剛氏によれば、過差とは過剰のこと、そして過剰な意図を「傾(かぶ)く」と呼び、その担い手を「かぶきもの」或いは「パサラ」と呼んだそうだ、いわゆる「傾く」のことである。 面白いことに、この過差=物狂いは人々の関心と好奇心を煽るには、もってこいのものだった、歌舞伎は「傾く」を起源としていることからもそれがわかる。 いや、しかし …… “日本人は昔からいろんなモノやコトに傾いてきたな”とつぶやくクニオ ヨシコは、我が意を得たりとばかり

          月に傾(かぶ)く

          鬼卵・夢路

          “頼もう   ” 店先から声をかける! 店は掛川城からほど近く、今では面影もないが、かつては掛川藩城下の一角にあたる場所だ。 “頼もう   ” クニオは再度、店の奥に声をかける。  店主 “どちら様でしょう ” 中年の目鼻立ちのすっきりした温容の顔立ちの店主奥から顔を出した。 店主 “書画、軸をご所望で   ” クニオ “いや、こちらに鬼卵の書画があると聞き及んだので ……   ” 店主 “さようでございますか ……  ” 思案顔の店主 ……  少々、間をおいて “ではど

          鬼卵・夢路

          能はこんなに面白い その二

          能「石橋」(宝生流) 後場 突如として赤と黒の獅子が出現し、紅白の牡丹に戯れ激しく乱舞する連獅子の振る舞いが後場の見どころだ。 ヨシコ “連獅子の乱舞に もうー 釘付け!” クニオ “舞台を圧倒してたね” 連獅子の威風堂々とした舞に心をわしづかみにされた二人。 ヨシコ “獅子って霊獣(*1)でしょ” クニオ “文殊菩薩の乗り物だよね” 日本の釈迦三尊では、左脇侍に獅子に乗った文殊菩薩、右脇侍に白像に乗った普賢菩薩を配する例が多いと聞く。 ヨシコ “文殊菩薩の使者で

          能はこんなに面白い その二

          「能はこんなに面白い」 その一

          「石橋(シャッキョウ)」はドラマチックな能と言われている、古代中国は唐土清涼山の石橋を舞台に、前場と後場が劇的に変わる演出は見ものだ。 グランシップ静岡能(*1)で披露された「石橋」は小書(*2)により新たな演出を取り入れた意欲作だ。 能「石橋」(宝生流) 前場 「出家して寂昭法師と名乗る大江定基は、清涼山(唐)の文殊浄土に係る石橋の麓に着く、そこに現れた樵童(しょうどう)は、石橋を渡ろうとする寂昭法師を止め、渡る事の困難さを示し暫くここで待てと告げて去っていく」

          「能はこんなに面白い」 その一

          文字(書)は絵の恋人 

          森は海の恋人」というフレーズを聞いたことがあるだろう、海と森は食物連鎖や自然環境の面で密接な関係にある事から命名されたと聞く。 日本美術にも絵画の構成要素が互いに密接な関係をもって絆を深めたジャンルがある、文字絵(*1)というジャンルだ。   文字絵は文字(書)と絵それぞれが絡み合い、響き合って絵画の魅了をさらに高めることができる、まさに「文字(書)は絵の恋人」である。 特に、やまと絵の世界で、葦手(あしで)という手法がちりばめられた作品は日本固有の絵画(絵画に限らないが)と

          文字(書)は絵の恋人 

          富士山・座神香聞     2024 1/1

          富士山・座神香聞     2024 1/1 クニオ “スゲー富士だったね!” ヨシコ “どの富士山のこと? 今日は沢山の富士山を観たからお腹一杯、どの絵にも感動したけど” クニオ “「霽るる」(*1)だよ、観た瞬間、頭をガツンと揺さぶられちゃた” 東京・山種美術館に「富士と桜」展・副題に「北斎の富士から土牛の桜まで」とある。 北斎や広重、横山大観、奥村土牛等々の神々しい富士。 渡辺省亭、上村松園、速水御水、千住博等々の絢爛たる桜の競演。 ヨシコ “「霽るる」ね 

          富士山・座神香聞     2024 1/1

          平安の雅:やまと絵

          平安時代の絵画で思い浮かぶといえば絵巻物ではないだろうか。その中でも源氏物語を題材にした「源氏物語絵巻」は絵巻物の精華と言っていいだろう。  晩秋の東京国立博物館にて特別展「やまと絵」(*1)が開催され、平安期の四代絵巻が展示されると聞き、二人は早速出かけることと相成った。 ワイワイがやがや …… ゾロゾロもぞもぞ …… ワクワクいらいら    閉展を二日後に控えた祝日の博物館は人で溢れかえっていた。 クニオ “鑑賞ベルトコンベヤーに乗るしかないね!” 鑑賞ベ

          平安の雅:やまと絵

          王朝の色に挑む

          クニオ “鮮やかにして冴えざえ!” ヨシコ “気高くして優美な美しさ!” そのまばゆい色彩に魅了され二人は、いつになく上気した気分に包まれている。 「王朝の色に挑む」は「染司よしおか」が、すでに失われてしまった自然の染料による伝統の色の再現に挑み、あくなき探求心と情熱によりよみがえらせ、(*1)ここ岡崎市立美術博物館にて開催された。 清少納言や紫式部が登場した王朝文化の華やかな平安中期(10世紀〜11世紀)頃に、女房の装束のいわゆる「十二単」(*2)が誕生したと言わ

          王朝の色に挑む

          魅惑の館

          青葉の上を吹き渡ってくる緑風が心地よい、東京にいることを忘れさせる。  東京に降り立った目的の魅惑の館は、広々とした庭園の先にあった、魅惑の館とはアール・デコの粋を集めた建築と評される旧朝香宮邸(*1)のことだ。   ヨシコ “アール・デコの館にしては、装飾性に乏しく、シンプルな表現ね!” クニオ “でも、列柱が古典を、縦長の窓が新しい時代=インターナショナルスタイルを暗示しているとおもわない?”  確かに外観はシンプルな印象を与える、これは全体の設計監理を宮内

          無著・世親

          ………興福寺の北円堂に安置されている無著像と世親像が公開されると聞き、 10月の最終土曜日、クニオとヨシコは北円堂へ旅立つ ………すでに、五重塔の周辺は人混みができていた、五重塔の手前を左折し、2017年に再建された中金堂を横目に北円堂を目指す。 クニオ “いやー 中金堂は「青丹よし 奈良の都は 咲く花の〜  」だね    ” ヨシコ “ほんと  青(緑)や丹(赤)に彩られた姿で再建されてるね!” ………北円堂(*1)の扉は開けられている、二人は、はやる気持ちを抑え

          無著・世親