闘骨

戦闘小説を書きます。

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最近の記事

「ERROR“A”」第3話

天使Χはニコニコ笑い、心底嬉しそうに話した。 「久しぶりですね、Η。本当に久しぶり」 Χは胸の前で手を合わせて首を傾げた。 「ところで、あのホモ・サピエンスは誰ですか?幼母ではないようですが」 「……」 「大事な物ですか?」 「別に」 毬空はかぶりを振り、答えた。 「でも、私とよく似てる」 「そうですか」 Χは紡季のマンションに水平2連ショットガンを向けた。 「じゃあ、壊しても構いませんね?」 毬空がノイズからリボルバーを抜き、Χを撃った。 Χは身を仰け反らせてH形鋼を躱しな

    • 「ERROR“A”」第2話

      「うん。呼ばれたらいつでも。また何かわかったら連絡して。じゃあ」 古洞紡季は電話を切り、リビングに戻った。毬空こと天使Ηはソファでテレビを観ていた。 「どうかしたの?」 何かを察したらしく、毬空はすぐ尋ねた。 「……そうだね、一応言っとくか」 紡季はソファの肘掛けに座った。 「カイルが乗ってた飛行機が、墜落したって。私たちと別れてすぐ後の便」 「!」 「ニュース観て、まさかと思ってたけど」 「カイル、死んだの?」 「遺体は捜索中だけど、たぶん。海に墜ちたから見つかんないかも」

      • 「ERROR“A”」第1話

        あらすじ 謹慎中の傭兵、古洞紡季は上司の指示で謎の少女毬空と暮らすことになる。 独特な雰囲気を醸す毬空との先行きに不安を覚える紡季だったが、同居を始めた矢先に発覚したその正体は、天使Ηなる超常生命体だった。 聖母の素質を持つ人間を捜し出し、聖告者=大天使への昇格を目指す24名の天使たち。毬空はその1人だった。 大天使の席が残り1つになったことで、昇格の儀は血みどろの蹴落とし合いと化していた。疲弊した毬空は逃げるように日本へ来たのだ。 しかし、運命は毬空を逃がさない。 毬空は再

        • 「冒涜のピエタ」第3話

          その女神は比較的小さく、元の全長は精々3m程だろう。 今は手足をもがれ、全ての椎骨を杭で固定され、身動きを完全に封じられていた。包帯でぐるぐる巻きにしているのは、視界を奪うためだ。 シャルロット・フォールは淡々と話した。 「この子はD級。流石にC級以上は捕まえるどころじゃなくってね。ここまで大人しくさせるのにも、かなり手こずったのよ」 ピエタは素直な感想を口にした。 「凄いね。州警でも生け捕りなんてしない。あまりにリスクが大き過ぎる。いつからこの状態なの?」 「もう半年になる

        「ERROR“A”」第3話

          「冒涜のピエタ」第2話

          それは一見すると犬だった。 ただし体長は6mもある。 深夜。巨大な犬が家々の屋根を駆けて行く。 投光器を向けると犬は途端に姿を消し、別の屋根に現れた。犬は持ち前の身軽さとテレポートを駆使して包囲網を抜けて行く。 『おや?』 路上に降りた犬が足を止める。誰かがこちらへ歩いて来る。 雲の隙間から月光が差し、対峙した両者を明瞭にした。 ペストマスクを被った警官。左肩にペリースを提げている。 犬の方も、やはりただの犬ではない。首に乗っているのは、ベールを被った端正な女の顔だった。所謂

          「冒涜のピエタ」第2話

          「冒涜のピエタ」第1話

          あらすじ 遥か未来。全ての陸地が海に沈み、人類は人工大陸“島”に居を移した。 国を撤廃し複数の市からなる州を築いた人々の平和な暮らしは、謎の生命体“女神”により脅かされている。 車椅子の少女ピエタは、クラスメイトのランカとの友人関係に悩んでいた。共感性に欠けるピエタは打算の無い人付き合いが理解できず、ランカの純粋な好意を信じることができずにいたのだ。 しかしある日、放課後の学校を女神が襲撃し多くの生徒とともにランカが命を落とす。 初めて感じる喪失感に、ピエタは戸惑う。仇である

          「冒涜のピエタ」第1話

          「プリズンガードORCA」第3話

          移送車が大陸間トンネルを亜音速で走る。 「猫小ちゃんは初めてだよね?別の監獄」 「はい」 「まぁどこも変わらないけどねー」 「どこもああなんだ」 第4監獄(旧南アメリカ大陸) 管理棟 「移送対象は紅・グァン。詐欺罪の懲役が終わったから、うちに移って暴行罪の懲役を始めるの」 「こっちは窃盗犯が多いんでしたっけ」 「そうそう」 「いいなぁ。うちは凶悪なのばっかだし」 「隣の大陸は青いってやつ?」 「スケールでか」 鯱が看守長室をノックする。 「失礼しまーす」 机でモニターを眺

          「プリズンガードORCA」第3話

          「プリズンガードORCA」第2話

          第3監獄 エリア24 朝。 猫小はモニターの前にいる看守に話しかけた。 「おはようございますロズさん」 「あ、猫小さん。おはよー」 彼はロズ・ボーン。 ご多分に漏れず死んだ目をし、体じゅうに湿布を貼っている。 「夜勤お疲れ様です」 「やっと交代か~。よっこいせ」 腰を庇いながら立ち上がる。 「はぁ~イテテ」 「大丈夫ですか?」 「いやぁ~深夜に囚人とやり合ってさぁ」 「警報鳴ってましたもんね」 「同時に四カ所で脱獄だよ。ほん~と疲れたわ」 「え、全部1人で対応したんですか?

          「プリズンガードORCA」第2話

          「プリズンガードORCA」第1話

          あらすじ 人類が他の惑星やスペースコロニーに移住して久しい、西暦3050年。 環境が劣悪化した地球は丸ごと惑星監獄『ブループリズン』として運用され、宇宙じゅうの極悪人が集められていた。 第3監獄(旧北アメリカ大陸)の看守として働く美女、鯱・ヒライは今日も大忙し。当然のように囚人が脱獄し、懲罰を与えては牢屋にブチ込む日々。凶暴な囚人から常に命を狙われる地獄のような生活だが、鯱は楽しげ。初めはビビっていた新米看守ちゃんも、段々とこの血生臭い生活に慣れていく。 囚人とバトル、新入

          「プリズンガードORCA」第1話

          「HAZIN」第3話

          (喉渇いたな) 壁に掛けた虚慟丸を見る。 あの夜に聞いた会話がフラッシュバックした。 ――百年間一度たりとも眠ってなどいなかった。 ――鈍ったか!? 「……」 灯李はベッドを降りた。 (自販機、すぐそこだし) 廊下は無人だった。灯李は駆け足した。 (水でいいや) ペットボトルを取って立ち上がると、すぐ隣に誰かが立っていた。 「うぇっ?」 ビクッとし、灯李は財布を落とした。小銭が散乱する。 「あっ」 「大丈夫~?」 ピンクのパーカーにギターケース。同い年くらいの少女だった。一緒

          「HAZIN」第3話

          「HAZIN」第2話

          葬儀は気づくと終わっていた。 灯李は葬儀場の休憩室にいた。 隣のソファには最低限の荷物。着替え、携帯、充電器、それから刀。 刀。 「なんでいるの?」 ぼそりと尋ねる。刀は答えた。 「お前を守るためだ」 (答えるんかい。フツーに喋るし……) 灯李は膝を抱えた。 「……夢じゃなかったんだ」 「ああ」 「お母さんとお父さん、お祖母ちゃんも……死んだんだ」 「すまない。守れなかった」 「……なんか、現実味無いな」 「……」 「あんまり悲しくないな。おかしいよね」 「追いついていないだ

          「HAZIN」第2話

          「HAZIN」第1話

          あらすじ 柄人と呼ばれる契約者に憑依し、妖を退治していた妖刀。その一部が人の体を乗っ取った新たな種刃人を名乗り、刃人軍を組織する。 刃人に家族を殺された赤木灯李は、蔵に眠っていた妖刀虚慟丸に命を救われる。虚慟丸はかつて灯李の先祖とともに戦い、百年前に役目を終えた妖刀だった。 仲間だったはずの妖刀が人類に反旗を翻したと知った虚慟丸は、灯李を守るため刃人軍の打倒を決意。灯李を柄人として憑依し、現代の妖斃師と協力して刃人軍の反乱へ立ち向かう。 しかしその先で灯李と虚慟丸を待ってい

          「HAZIN」第1話

          「リアル・セカンズ」第3話

          錦広次は、上司の天堂仁に語りかける。 「俺を殺して下さい」 「落ち着け、錦」 「主任にしか頼めない」 「……できない」 「主任ならできます。早く俺を殺さないと、大変なことに」 「……クソッ」 逡巡の末、仁は拳銃を撃った。 広次は恐ろしく俊敏な動きで銃弾を躱した。いや、射線を読んで撃つ前に躱したのだ。仁が教えたテクニックだった。 仁の手首を捻じ折り、拳銃を奪う。広次は仁に拳銃を向けた。 「主任、逃げて!」 「待っ――」 広次は弾が尽きるまで仁を撃った。 「またねナギちゃん!」

          「リアル・セカンズ」第3話

          「リアル・セカンズ」第2話

          蛇々島傀蔵。58歳。 蛇々島流合気拳術道場は、傀蔵が創設した一般向けの護身術教室である。 傀蔵が真に受け継いだのは、『蛇々島流拳殺術』。純然たる殺人術であった。 凪凪が間合いに入ったその時、傀蔵は袖に手を入れ、隠していた短刀を抜いた。峰を下に、刃を上に向けて握る。 「ふっ」 小さく息を吐く。 一歩踏み出し、短刀を突いた。 傍から見ればたったそれだけの動作だった。しかしこの時――傀蔵の体内では、凄まじい力の奔流が起きていた。 息を吐くとともに張った臍下丹田が、体幹に一本の芯を

          「リアル・セカンズ」第2話

          「リアル・セカンズ」第1話

          あらすじ 命を懸けた実戦は数秒で決着がつく。その秒殺の世界で生きる者をセカンズと呼ぶ。 セカンズの襲撃により選手生命を絶たれた元総合格闘技選手南見秋人は、刑事の紹介で少女のような容姿の猫尾凪凪を頼る。 初めは凪凪を訝しむ秋人だったが、彼女もまた実戦能力を持つセカンズだった。 凪凪は襲撃犯を突き止め、秋人とともに乗り込む。そこで秋人は、セカンズ同士の僅か1.9秒の死闘を目の当たりにする。 秋人は人助けのために力を使う凪凪の生き様に、失いかけていた生きる意味を見出す。今の自分に

          「リアル・セカンズ」第1話