島崎 紗都子

よろしくお願いします

島崎 紗都子

よろしくお願いします

マガジン

  • 伊月一空の心霊奇話 ―いわく付きの品、浄化します―

    霊が視えることが悩みの静森紗紀は わけあって 一軒の骨董屋を訪れる。店の名は『縁』。その店は店主である伊月一空の霊能力で 店に並ぶ品たちの過去の縁を絶ち さらに新たな縁を結ぶという不思議な店であった。だが一空は 霊が視えない霊能者で──。 霊が視えない凄腕霊能者 と 視たくないのに霊が視えてしまう女子大生が怪異を解く。

  • 怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁

    いまだ余所者を受け入れない風習が根強く残る孤月村。その孤月村の名家である 利蔵家に町から嫁いできた雪子は 利蔵家に因縁のある曽根多佳子という女の存在に脅かされる。多佳子のことを調べていくうち 雪子は二十五年前 孤月村で起きた凄絶な事件を知る。

記事一覧

固定された記事

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第1話

第1章 村祭りの夜のできごと1 村の嫌われ者  その日は、孤月村でおこなわれる、夏祭りの夜であった。  祭りといっても、出店が並び、花火を打ちあげるといった派手な…

島崎 紗都子
1か月前
32

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第31話

◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡9 棲みついた生霊  本当にひどい有様であった。  恭子が家に来られるのを嫌がっていたのも納得だ。  二人の様子を見た恭子は…

島崎 紗都子
13時間前
4

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第37話

◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男9 雪子の動揺   翌日、鈴子を見舞いに病院に行くと、思いのほか元気そうで安心した。  熱も下がり、検査の結果も異常…

島崎 紗都子
19時間前
2

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第30話

◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡8 霊を引き寄せる部屋  そして、カフェを出た三人は、恭子のアパートに向かった。  紗紀は一空の元に近づき、小声で訊ねる。 …

3

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第36話

◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男8 病んだ村  それから高木とともに実家に戻った雪子は、母から父の詳しい容態を聞く。  父が倒れたのはもう一ヶ月も前…

7

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第29話

◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡7 霊視開始 「本題に入る前に一つ気になることがある。ずっとうつむいていて相手の顔が分からないが、三十代くらいのメガネをか…

1

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第35話

◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男7 届かなかった手紙  病院の待合室の長椅子に座り、雪子は祈るように手を組み、そこにひたいをのせた。  診察室とかか…

6

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第34話

◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男6 鈴子の危機  いつものように、鈴子が学校から帰宅する頃を見計らい、神社に訪れた雪子だったが、珍しく家に鈴子の姿は…

4

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第28話

◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡6 うさんくさい霊能者  それから恭子が住んでいる町の最寄り駅にあるカフェまで向かい、待ち合わせをすることになった。  カフ…

2

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第33話

◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男5 因縁  たかこ──。  曽根多佳子という人物は、もうこの世に存在しなかった。  彼女は二十年以上も前に亡くなって…

2

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第27話

◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡5 再び『縁』へ  紗紀は骨董屋『縁』の前で立ち尽くした。  まさか、再びここに来ることになろうとは思いもしなかった。  つ…

6

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第26話

◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡4 鏡から這い出てきた女  祐一と過ごす筈だったその日の夜は、当然のことながら眠れず、恭子は何度も寝返りを打った。  これま…

9

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第32話

◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男4 見てはいけない それはよくないもの  思っていたよりも高木の家に長居をした。  すでに日も落ち、屋敷についた頃に…

3

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第25話

◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡3 彼と過ごす夜だったのに 「家まで送ってくれてありがとう。今日は楽しかった」  恭子はふと、辺りを見渡した。  アパートの…

9

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第31話

◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男3 再び高木の家へ  約束した通り、翌日の夕方、雪子は高木の家を訪れた。  もちろん鈴子ちゃんに会うためだ。  高木は…

13

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第24話

◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡2 あるいは事故物件  その日の夜、ギシギシと家鳴りの音に気づき、恭子は目を覚ました。  目を開けるとその音は聞こえなくなる…

3
『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第1話

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第1話

第1章 村祭りの夜のできごと1 村の嫌われ者

 その日は、孤月村でおこなわれる、夏祭りの夜であった。
 祭りといっても、出店が並び、花火を打ちあげるといった派手なものではなく、村の空き地に櫓を組み、集まった村人が好き勝手に飲み食いをしながら、歌をうたい踊るというお祭りである。

 赤い提灯が揺れ並ぶ櫓の下でめかし込んだ村娘が、一人の若者を囲んではしゃいでいる。
 その華やかな集団を、曽根多佳子は

もっとみる
伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第31話

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第31話

◆第1話はこちら

第2章 死を記憶した鏡9 棲みついた生霊

 本当にひどい有様であった。
 恭子が家に来られるのを嫌がっていたのも納得だ。
 二人の様子を見た恭子は、不安そうな顔をする。

「ちょ、何? やっぱりこの部屋に何かいるのね」
「恭子……」
「ねえ、はっきり言って。何が視えるの!」
「汚い部屋」
 ぽつりと言う紗紀に同意して、一空も頷く。

「え?」
「何か変な臭いもするんだけど」

もっとみる
『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第37話

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第37話

◆第1話はこちら

第4章 村はずれの社に住む男9 雪子の動揺 

 翌日、鈴子を見舞いに病院に行くと、思いのほか元気そうで安心した。
 熱も下がり、検査の結果も異常ないとのことでほっと胸をなでおろす。
「雪子お姉さん、ありがとう」
 雪子は笑って鈴子の頭をなでた。
「早くよくなるといいね」
「うん」
「元気になったらまた遊びましょうね。はい、これ鈴子ちゃんに」
 鈴子が寂しくないようにと、雪子は

もっとみる
伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第30話

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第30話

◆第1話はこちら

第2章 死を記憶した鏡8 霊を引き寄せる部屋

 そして、カフェを出た三人は、恭子のアパートに向かった。
 紗紀は一空の元に近づき、小声で訊ねる。
「三十代の小太りメガネの男って、姿が視えたんですか?」
 一空は霊が視えない霊能者。なのに、なぜそんな具体的なことを言ったのだろうと不思議に思って聞いてみたのだ。

「ああ、視えたのではなく、頭に浮かんだ」
 やはりそうだったのか。

もっとみる
『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第36話

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第36話

◆第1話はこちら

第4章 村はずれの社に住む男8 病んだ村

 それから高木とともに実家に戻った雪子は、母から父の詳しい容態を聞く。
 父が倒れたのはもう一ヶ月も前のことだった。
「あんたに知らせるべきかどうか、しばらく迷っていたんだけどね」
 雪子の嫁ぎ先に遠慮をしていた母であったが、やはり、さすがに娘に知らせないわけにはいかないと、思い切って手紙を出したというわけである。

 倒れた原因は胃

もっとみる
伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第29話

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第29話

◆第1話はこちら

第2章 死を記憶した鏡7 霊視開始

「本題に入る前に一つ気になることがある。ずっとうつむいていて相手の顔が分からないが、三十代くらいのメガネをかけた、小太りの男に心当たりはないか?」
 恭子をじっと見ていたのは、霊視をしていたのだ。

 後で一空から聞いた話ではあるが、霊視とは、対象者に集中することで、その人自身のことや、その人の背後に関係する人たちのあれこれが脳裏に映像とし

もっとみる
『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第35話

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第35話

◆第1話はこちら

第4章 村はずれの社に住む男7 届かなかった手紙

 病院の待合室の長椅子に座り、雪子は祈るように手を組み、そこにひたいをのせた。
 診察室とかかれた扉の向こうでは、鈴子が現在治療を受けている。

 私のせいだわ……。

 身体を震わせる雪子の肩にそっと手が置かれた。
 顔をあげると隣に座る高木が気遣う顔でこちらを見ている。
 いつもの厳しい顔つきではなく、心の底から雪子をいた

もっとみる
『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第34話

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第34話

◆第1話はこちら

第4章 村はずれの社に住む男6 鈴子の危機

 いつものように、鈴子が学校から帰宅する頃を見計らい、神社に訪れた雪子だったが、珍しく家に鈴子の姿はなかった。
 今日は帰りが遅いのか。
 どこかで時間を潰してまた来てみようと引き返したその時、境内の掃除をしていた高木が、竹ぼうきを手に戻ってきた。
 相変わらず、竹ぼうきが似合わない。

「鈴子はまだ帰ってきてないぞ」
「そのようで

もっとみる
伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第28話

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第28話

◆第1話はこちら

第2章 死を記憶した鏡6 うさんくさい霊能者

 それから恭子が住んでいる町の最寄り駅にあるカフェまで向かい、待ち合わせをすることになった。
 カフェに到着したのは紗紀たちが先であった。
 待ち合わせの時間三十分は遅れて、友人の恭子が現れる。

「ごめーん、遅くなっちゃった。急だったから支度にいろいろかかって」
 支度ねえ、と紗紀は苦笑いを浮かべる。
 というのも、恭子の格好が

もっとみる
『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第33話

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第33話

◆第1話はこちら

第4章 村はずれの社に住む男5 因縁

 たかこ──。

 曽根多佳子という人物は、もうこの世に存在しなかった。
 彼女は二十年以上も前に亡くなっていた。
 隆史に多佳子という愛人がいるかもしれないと一瞬でも思った自分に、思わず笑った。

 一方、雪子が多佳子のことを強引に村の者から聞き出したということは、またたく間に村全体に知れ渡った。
 以来、たんなる余所者を見る目つきだっ

もっとみる
伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第27話

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第27話

◆第1話はこちら

第2章 死を記憶した鏡5 再び『縁』へ

 紗紀は骨董屋『縁』の前で立ち尽くした。
 まさか、再びここに来ることになろうとは思いもしなかった。
 つい先日、店主である伊月一空に、この店で働かないかと誘われたことを思い出す。

 単純に骨董屋で働かせてもらえるのかと喜んだら、霊能者として自分の弟子になれと、とんでもないことを言い出したのだ。
 無理です、と言い切って店を飛び出し、

もっとみる
伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第26話

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第26話

◆第1話はこちら

第2章 死を記憶した鏡4 鏡から這い出てきた女

 祐一と過ごす筈だったその日の夜は、当然のことながら眠れず、恭子は何度も寝返りを打った。
 これまでいい感じに付き合ってきたと思っていた彼氏がおかしなことを言いだし、部屋から去っていった。
 それも、自分を蹴り飛ばして。

 恭子は鼻の頭を手で撫でた。
 祐一の肘が当たったところがまだ痛い。
 蹴られた顔面も。
 けれど、もっと

もっとみる
『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第32話

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第32話

◆第1話はこちら

第4章 村はずれの社に住む男4 見てはいけない それはよくないもの

 思っていたよりも高木の家に長居をした。
 すでに日も落ち、屋敷についた頃には辺りには宵闇がせまろうとしている。
 駆け込むように屋敷に戻った雪子を待ちかまえていたのは、案の定、世津子のお小言だった。

 さも帰宅した雪子と玄関先でばったりと会ったという素振りをみせる世津子であったが、おそらく雪子が戻るのをず

もっとみる
伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第25話

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第25話

◆第1話はこちら

第2章 死を記憶した鏡3 彼と過ごす夜だったのに

「家まで送ってくれてありがとう。今日は楽しかった」
 恭子はふと、辺りを見渡した。
 アパートの前についた途端、誰かに見られているような強い視線を感じたからだ。

「どうしたの?」
「ううん。なんでもない」
「そっか、じゃあ、また……」
 と言って去って行こうとする彼、祐一の腕を咄嗟に恭子は掴んで引き止めた。

「恭子?」

もっとみる
『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第31話

『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第31話

◆第1話はこちら

第4章 村はずれの社に住む男3 再び高木の家へ

 約束した通り、翌日の夕方、雪子は高木の家を訪れた。
 もちろん鈴子ちゃんに会うためだ。
 高木はもうここへは来るなと言ったが、一方的にそんなことを言われて、はい分かりました、と素直に従う雪子ではない。
 だいいち、高木に会いに行くのではなく鈴子に会いに行くのだから別にかまわないではないか。と、自分に言い聞かせた。

「鈴子ちゃ

もっとみる
伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第24話

伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第24話

◆第1話はこちら

第2章 死を記憶した鏡2 あるいは事故物件

 その日の夜、ギシギシと家鳴りの音に気づき、恭子は目を覚ました。
 目を開けるとその音は聞こえなくなるのだが、再び眠りに落ちかけようとすると、床を踏みしめるような音が鳴り、目を覚ます。
 隣の人がまだ起きているのか。

 静かにしてよ。
 眠れないじゃない。

 掛け布団を頭までかぶり、壁に向かって寝返りをうつ恭子の目には、その姿を

もっとみる