島崎 紗都子

よろしくお願いします

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  • 怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁

    いまだ余所者を受け入れない風習が根強く残る孤月村。その孤月村の名家である 利蔵家に町から嫁いできた雪子は 利蔵家に因縁のある曽根多佳子という女の存在に脅かされる。多佳子のことを調べていくうち 雪子は二十五年前 孤月村で起きた凄絶な事件を知る。

  • 伊月一空の心霊奇話 ―いわく付きの品、浄化します―

    霊が視えることが悩みの静森紗紀は わけあって 一軒の骨董屋を訪れる。店の名は『縁』。その店は店主である伊月一空の霊能力で 店に並ぶ品たちの過去の縁を絶ち さらに新たな縁を結ぶという不思議な店であった。だが一空は 霊が視えない霊能者で──。 霊が視えない凄腕霊能者 と 視たくないのに霊が視えてしまう女子大生が怪異を解く。

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『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第1話

第1章 村祭りの夜のできごと1 村の嫌われ者  その日は、孤月村でおこなわれる、夏祭りの夜であった。  祭りといっても、出店が並び、花火を打ちあげるといった派手なものではなく、村の空き地に櫓を組み、集まった村人が好き勝手に飲み食いをしながら、歌をうたい踊るというお祭りである。  赤い提灯が揺れ並ぶ櫓の下でめかし込んだ村娘が、一人の若者を囲んではしゃいでいる。  その華やかな集団を、曽根多佳子は祭りの会場から離れた木の陰にぽつりと立ち、食い入るように見つめていた。  彼女の

    • 『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第33話

      ◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男5 因縁  たかこ──。  曽根多佳子という人物は、もうこの世に存在しなかった。  彼女は二十年以上も前に亡くなっていた。  隆史に多佳子という愛人がいるかもしれないと一瞬でも思った自分に、思わず笑った。  一方、雪子が多佳子のことを強引に村の者から聞き出したということは、またたく間に村全体に知れ渡った。  以来、たんなる余所者を見る目つきだった村人の視線に、さらに、雪子に対する恐れを抱くような感情まで加わった。  そのこ

      • 伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第27話

        ◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡5 再び『縁』へ  紗紀は骨董屋『縁』の前で立ち尽くした。  まさか、再びここに来ることになろうとは思いもしなかった。  つい先日、店主である伊月一空に、この店で働かないかと誘われたことを思い出す。  単純に骨董屋で働かせてもらえるのかと喜んだら、霊能者として自分の弟子になれと、とんでもないことを言い出したのだ。  無理です、と言い切って店を飛び出し、二度とここへは来るつもりはなかった。  確かに霊感があり、普通の人にはみえない

        • 伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第26話

          ◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡4 鏡から這い出てきた女  祐一と過ごす筈だったその日の夜は、当然のことながら眠れず、恭子は何度も寝返りを打った。  これまでいい感じに付き合ってきたと思っていた彼氏がおかしなことを言いだし、部屋から去っていった。  それも、自分を蹴り飛ばして。  恭子は鼻の頭を手で撫でた。  祐一の肘が当たったところがまだ痛い。  蹴られた顔面も。  けれど、もっと痛いのは心であった。  信じられない。  あいつとは別れてやる。  絶対に許さ

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        『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第1話

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        • 怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁
          33本
        • 伊月一空の心霊奇話 ―いわく付きの品、浄化します―
          27本

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          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第32話

          ◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男4 見てはいけない それはよくないもの  思っていたよりも高木の家に長居をした。  すでに日も落ち、屋敷についた頃には辺りには宵闇がせまろうとしている。  駆け込むように屋敷に戻った雪子を待ちかまえていたのは、案の定、世津子のお小言だった。  さも帰宅した雪子と玄関先でばったりと会ったという素振りをみせる世津子であったが、おそらく雪子が戻るのをずっと待ち続けていたのだ。  こんな遅くまで、いったいどこに行っていたのだと問い詰

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第32話

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第25話

          ◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡3 彼と過ごす夜だったのに 「家まで送ってくれてありがとう。今日は楽しかった」  恭子はふと、辺りを見渡した。  アパートの前についた途端、誰かに見られているような強い視線を感じたからだ。 「どうしたの?」 「ううん。なんでもない」 「そっか、じゃあ、また……」  と言って去って行こうとする彼、祐一の腕を咄嗟に恭子は掴んで引き止めた。 「恭子?」 「……部屋、寄ってく?」  頬を赤く染め、恭子は視線を斜めにそらして小声で言う。

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第25話

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第31話

          ◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男3 再び高木の家へ  約束した通り、翌日の夕方、雪子は高木の家を訪れた。  もちろん鈴子ちゃんに会うためだ。  高木はもうここへは来るなと言ったが、一方的にそんなことを言われて、はい分かりました、と素直に従う雪子ではない。  だいいち、高木に会いに行くのではなく鈴子に会いに行くのだから別にかまわないではないか。と、自分に言い聞かせた。 「鈴子ちゃん、こんにちは」 「雪子お姉さん!」  家を訪ねると、奥から鈴子のはずんだ声が聞

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第31話

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第24話

          ◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡2 あるいは事故物件  その日の夜、ギシギシと家鳴りの音に気づき、恭子は目を覚ました。  目を開けるとその音は聞こえなくなるのだが、再び眠りに落ちかけようとすると、床を踏みしめるような音が鳴り、目を覚ます。  隣の人がまだ起きているのか。  静かにしてよ。  眠れないじゃない。  掛け布団を頭までかぶり、壁に向かって寝返りをうつ恭子の目には、その姿を確認することはなかった。  アパートの前の道路を一台の車が通り過ぎていく。  一

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第24話

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第30話

          ◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男2 無愛想な男  若い男だった。  おそらく、二十五歳前後。長身で細身の体つき。いかにも女性が好みそうな男前な顔立ちであったが、不機嫌そうな表情がよくない。  そのしかめっつらを解けば、なかなかの好青年だ。さらに、言うならば熊手を持つ姿があまりにも似合わない。そして、この男が少女の父親だということに気づく。  面立ちが似ていた。  男は獣のような鋭い目つきで雪子を一瞥し、次に少女を見る。 「どうした鈴子」 「お父さん、このお

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第30話

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第23話

          ◆第1話はこちら 第2章 死を記憶した鏡1 念願の一人暮らし  姿見の前で持っている服をあて、何度も着ては脱ぐを繰り返しながら、デートに着ていく服を選んでいた。 「やっぱり、こっちの白い花柄のワンピの方がいいかな。でも、これだと気合い入れすぎのような。だったら、デニムのパンツ? いやいや、確かレストランを予約してくれたって言ってたから、いくら何でもラフすぎるか。普通に紺のスカートにブラウス。ちょっと堅苦しいかな。うーん、何着ていけばいいのかしら、どうしよう悩むわ」  うー

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第23話

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第29話

          ◆第1話はこちら 第4章 村はずれの社に住む男1 不生女  突然意識が飛び、気を失って倒れてから半月ほどが経った。  あれ以来、どんなに身体を休めてもすっきりとしない毎日が続き雪子を悩ませた。  身体中にまとわりつくような倦怠感が抜けず、微熱状態が続いた。  村医師の八坂先生からお薬を処方してもらい飲んでも、身体の調子はいっこうによくならず、常に気怠そうに振る舞う雪子を見とがめた世津子から、気が緩んでいるせいだと顔を見合わせる度に嫌味を言われた。  世津子のお小言すら右

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第29話

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第22話

          ◆第1話はこちら 第1章 約束の簪21 因縁の相手 「弁護士!」  チャラ男はニコリと微笑む。 「そういえば、自己紹介がまだだったね。僕は鴻巣迅矢。この通り弁護士だよ」 「ええっ!」  自分でも驚くくらい、素っ頓狂な声が出てしまった。 「そんなに驚くほどのこと?」  カウンターに寄りかかった一空は、腕を組み肩を震わせながら笑っている。 「おおかた、おまえのことをホストか何かと思っていたのだろう?」 「う……」  図星すぎて言葉がでない。  チャラ男はあはは、と頭を掻いて

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第22話

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第28話

          ◆第1話はこちら 第3章 多佳子の逆襲11 跡継ぎを得るため 「いったい、この屋敷はどうなっているの……呪われているのだわ!」  頭を抱える世津子に、利蔵はある提案を持ちかける。 「祈禱師を呼んでみたらどうでしょうか」 「祈禱師ですって!」  世津子の顔がみるみる歪んでいく。 「そんな胡散臭い者を呼ぶなど考えられません!」 「あくまでも気休めですよ。たまたま悪い気が家に入り込んだだけなのでしょう。お祓いをしてもらえば、ここで働く者たちも少しは安心するのではないでしょうか

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第28話

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第21話

          ◆第1話はこちら 第1章 約束の簪20 チャラ男の正体 「やあ、いっくう! もしかしたら旅行から帰ってきているかな、と思って寄ってみたんだ。やっぱり帰ってきてたんだね。僕のお土産ある?」  馴れ馴れしい態度で、先日のチャラ男がやあ、と片手をあげ店に入ってきた。 「旅行に行っていたわけではないが、土産はそこにある。好きなだけ持って行け」  そこ、と言って一空はカウンター横のテーブルを指さした。  テーブルには大きな紙袋が置いてある。  チャラ男は袋の中を覗き込む。 「わあ

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第21話

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第27話

          ◆第1話はこちら 第3章 多佳子の逆襲10 消えた多佳子と新たな嫁  妻の死は心不全だった。  あまりにも唐突すぎる死だ。  村の共同墓地に掘られた穴に桶を、降ろされ土がかぶされていく。  埋葬されていく妻の遺体がおさめられた桶を利蔵は虚ろな目で見下ろしていた。側では妻の両親が声をあげ泣き崩れていた。  相次ぐ村人の死。さらに利蔵家に嫁いだ娘までもが亡くなったとなれば、回りの者も穏やかではいられない様子だ。 「そういえば」  いつもは気にもとめないが、ことがことだけにさ

          『怨霊が棲む屋敷 呪われた旧家に嫁いだ花嫁』 第27話

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第20話

          ◆第1話はこちら 第1章 約束の簪19 やっぱり嫌な奴!  紗紀が再び骨董店『縁』を訪れたのは、田舎から帰ってきてから、さらに三日後であった。  その短い間に目まぐるしく、いろいろなことが起きた。  それも、良いことばかり。  胃がんの可能性が大きいと医師から診断された父だが、さらに、精密検査を受けたら、まったく問題がないという結果が出たのだ。  今は仕事に復帰し、元気に働いている。  今回のこともあってか、自分の身体のことに無頓着であった父は、健康に気を遣うようになっ

          伊月一空の心霊奇話 ーそのいわく付きの品、浄化しますー 第20話