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おすすめ短編集

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#純文学

【短編】そんなことのせいでキスをした

【短編】そんなことのせいでキスをした

今年で20歳になるというのに、きゅうたは人並みの恋愛をしたことがなかった。というのも、彼がした事のある恋愛といったら、他の人が普通経験しないだろうと思うようなものばかりで、そもそもあまり人から好かれることもなく、誰かを好きになることもめずらしいという彼の特質からくる要因が大きかった。だけど、きゅうたは愛情深い人間だった。友達が倒れた時は30分も走って看病しに行き、バスでは妊婦に席を譲って、その人の

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【短編】将来について語るときに

【短編】将来について語るときに

熱海にあるヴィラには、テラスがあって、海が一望できる。そこには外付けの小さなバスタブとシャワーがあったが、部屋の中から丸見えだった。女子が好きそうな場所に思えたけど、四人とも使わなかった。使ったのは五人の男子のうちのふたりで、カーテンを完全に閉めて使った。同期九人、もう一ヶ月後には社会人となる歳だったが、ひとりだけ院進ということで他のみんなとの話題についていけなかった。私だけは、文学をやりたいと親

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【短編】ありがとうって、あのこに言ってくるよ

【短編】ありがとうって、あのこに言ってくるよ

あるいは運が良ければ、こんなふうにふたりで歩くことはなかったのかもしれない。
ふたりにとって、この二週間というものは悲惨というと大袈裟だが、少なくとも穏やかではなかった。ふたりには大仕事が待っていたのだ。それは人生の中で大きな意味を持つものだった。これまでの人生は、このゴールに向かって一直線に伸びているようにさえ思えた。

店を構えて、一緒に働き始めるということ。新しいそれぞれの生活を始めるという

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【短編】飲むようになる頃には

【短編】飲むようになる頃には

ドーナツ屋に入ると、すぐにその子供は僕を見つけた。母親の膝の上に立って僕の方を見て、笑いかけてくる。思わず何度かウインクして、レジに向かった。

コーヒーとドーナツを受け取ってから席に着くと、ちょうど隣にその子がいた。母親は、友人とおしゃべり中で反対の方を向いていたので、僕とその子は、お互い睨めっこするみたいに見合っていた。
母親が気がついて、嬉しそうにしながらもその子を向こう側に向けて座らせた。

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【短編】アンティークになったら

【短編】アンティークになったら

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そのカフェがとにかく好きになったのは、飲んだ事もないほどの深煎りのコーヒーと、オーナーさんや店員の気さくさが、僕の居心地を良くさせたからだ。
本当に毎日のように通っては、そこでコーヒーを飲み読書をしていた。このお店を知った当時は、とにかく観光客で溢れ、何度も来店を諦めたものだが、今はその観光客は消え、比較的入りやすくなっている。しかし、そのためか、本当に美味しいコーヒーを求めて、あるいは素敵

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